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【終章】48

エピローグ 【進行中の実績】……お久しブリーフ 達成ボーナス『ドラゴンスキン』


僕には分身がいた。

顔付きも性格も似てない僕の分身。

僕達は姉弟だった。

同じ偉大な父を持つ『異母姉弟』。

『僕は』その父や祖母の力を順当に受け継げたが、彼女にはその欠片も……


そんな僕らを、周りの大人達はどうも仲が悪いと思っていたらしい。


まぁ、周りの立場になって考えればそれは当然で。

僕らは、まず会話をしなかった。お互い目も合わせず、認識すらし合ってないような立ち振る舞い。

全てを持った弟に、姉は『劣等感』を抱き、仲違いしているのだと。


――まぁ、実際の僕らはその『真逆』だったのだが。


両親らの前だったり二人きりの時は、そりゃあ普通の姉弟のようにベタベタとくっついていて。

そして彼女は力になぞ全く興味が無く、僕に対して劣等感のれの字も感じなくって。

何故、皆も前では無視し合うのかと訊ねても、


『そっちのほうが、つごう、いいでしょ?』


と、今も理解出来ない解答。

そういった性格は……ああ、そうだ……パパンっぽいのは性格だけじゃなく、彼女は一つだけ、パパンから受け継いだ物があった。

その年齢に見合わない『色気』は、周りの大人達すら身震いさせるもので。

僕には、自身が受け継いだ多くの物より、その一つだけの個性が余程恐ろしく見えた。



「……ぅん……んー?」


目を覚ますと、見慣れた天井。寝慣れたベッド。

ここは、自分の部屋? さっきまでテーマパークの風呂に居た筈なのに。


ゴトッ 「おや」


隣の部屋から物音。隣はずっと空き部屋で……いや。


『違った』。


ベッドから身体を起こし、部屋を出て、その扉の前に立つ。



コンコンッ 『はーい』 中から返事がかえってきた。扉を開ける。


「――やぁ、おはよー篭くん。この部屋には『十年振り』かしら」


部屋の中に居たのは……「つるぎさん?」と、彼女の側のベッドに眠る少女。


「デート中、急に気を失ったらしいじゃない。大丈夫ー?」

「あー、大丈夫。(夢の中で整理ついて)頭はハッキリしてるし」

「ならよかったー」


ニッコリ笑う鋏さんに僕は苦笑いで返す。

ミルクティー色のふわふわした髪とのほほん系と一目でわかる柔和な顔立ち。

昔から僕はこの人苦手だ。おばぁの千里眼以上の『全てを見透す目』とか特に。


「そういえば鋏さん、ちょくちょく居なくなるなーと思ってたけど、ここに来てたんだ。今の今まで疑問すら感じなかった」

「そだよー、愛する【我が子】だもの。ほらーいとちゃん、大好きな篭くんが来てくれたわよー。篭くん篭くんっ、こっちー」


何故この人は、僕にそんな態度で居られるのだろう。僕はこの人に『恨まれてないと』おかしいのに。


「ほらー、篭くん、手ー」

「アッハイ」


断るなど出来る筈もなく、鋏さんの隣に行き、ベッドに寝る『イーちゃん』の剥き出しの手を握った。ほのかに温かい。


僕の姉こと糸の見た目は、記憶に残る姿とは違い、僕と『同年代くらいまで成長』していて。

母親である鋏さんと並べば、姉妹かと思うだろう。

記憶に残るままに、眠ったままでもその『妖艶さ』は衰えていなかった。


ぎゅ―― 「あれ? イーちゃん、起きてんすか?」 僕の手を握り返す彼女。


「んー? いやぁ? 寝てるままでしょ。篭くんだって解ってるんだよー、その子も」

母親が母親なら娘も娘だ。こうして十年以上、眠ったままにした原因は『僕なのに』。


十年前、僕は姉の『時を止めた』。

キッカケも動機も未だ思い出せない。

裏では仲の良かった姉弟。

なのに、僕はある日唐突に姉の時間を止め、そして暴走し……その後は、僕を止めようとした大人達を蹴散らした。

当時の僕はショタながら皆が認める歴代最強の竜。

時魔法を駆使し『将来覚える予定』だった魔法を使いこなすなど朝飯前で。

中でも、『触れた者の存在した痕跡ごと消す』時魔法は凶悪で、半分以上の魔王軍を消し去った。

おばぁやパパン、封ママやナヨさん達が協力して僕を止めなかったら『世界』すら消していた勢い。

因みに、僕が消した魔王軍達も皆の力で復活出来た。

『将来有望ですなぁ』と誰一人僕を恨んで無いようだ。


これが僕が思い出せた……というよりは『見て』思い出した過去(真実)。

溢れた記憶の一部に、明らかに僕視点じゃない親族か魔王軍の誰かの映像が混線していたから色々と理解出来たのだが……それは(時魔法を使える我ら王族なら他人の記憶を見るなど容易なので)大した問題では無く……。

根本的な話、何故今、僕が『イーちゃんの事を思い出せた』のか? という事。


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