表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/147

46

コリをほぐし数分で全快させるエレキクラゲの電気風呂、

身体の悪い部分は不治の病ですら食べてくれるサンドフィッシュの砂風呂、

入った時間の分だけ寿命が伸びる火の鳥血の池風呂、

飲めば折れた骨が繋がり失った歯も生えて来て浴びれば抜けた髪をも取り戻せる逆流滝風呂、

精神的なトラウマを消す癒しの香りを放つ天界の華風呂などなど……


様々な風呂の種類(当然良い効果の風呂にはそれなりのGが必要)がある場所だけれどここはやはり『一番景色の良い場所』にしよう、という事で。


「ふ、ふむ。ドラゴンの背中で見た景色とはまた違った趣がありますわね(プルプル)」

「あ、あわわ……高い……怖いです……」


ここは城の一番上。そんな特別な場所には当然、特別なお風呂が用意されていて……。


「ふむ。もう少し湯の温度をあげても良いぞ【ゼリー】」


僕の脚の間にスッポリ収まってるおばぁがそう『命じる』と、風呂全体が『プルンッ』と揺れた。

今、僕らが入ってる温泉? は、【スケルトンゼリースライム風呂】。

名前の通り、景色に同化出来るほどの透明感がある魔物で、そいつらを十匹近く集めてくっつけ、空に浮かぶ露天風呂として働いて貰っている。


「時たまポコポコと気泡が出るので存在は認知出来ますが……初めは何も無いと思いますわよ」

「ひっ、し、下見ちゃったっ。こ、これ、立ち湯のようなスタイルですけど、もし底から落ちたら……」

「勿論下に落下よ」

「「ヒェッッ」」

「そんな事故は今まで無かった(と思う)から安心して湯を楽しんで。ローション風呂みたいでヌルヌル気持ちいーでしょ。本来、この子達は獲物を透明状態で待ち伏せて、存在に気付かなかった獲物を取り込み、熱で茹でて栄養を摂るという食事スタイルなんだ」

「これ捕食行動ですの!?」

「な、長湯したら消化されるんですっ?」

「そんな事故は今まで無かった(と思う)から安心して。ほら、それより、夕焼けが綺麗だ」

「……まぁ」

「そ、そうですね……」


すぐにウットリした顔になる姉妹。パパンの背中にいた時より低い場所とはいえ、ここからでもそれなりにパークが一望出来て……夜にライトアップされたパークも絶景だが、陽に染まってキラキラ光る湖やアトラクションも素敵だ。

因みにあれは魔王軍四天王の一人が作った【擬似太陽】。


「って、貴方わたくし達が目を逸らしてる隙に身体を見ないで下さいましっ」

「わわっ……み、見ちゃいました?」

「んだよー、今更だろー減るもんじゃなしー」

「と、というか、本当に今更ですが、これ、下にいる人達から丸見えじゃ……」

「油断してましたわ!?」

「大丈夫だってー、外からは僕らも景色に『同化』してるように見えてるから。ま、僕はもうバッチリ見て満足したからー、ゼリー、『濁り湯』にしてー」

「(プルルンッ)」

「「出来るんなら初めからそうして下さい(まし)っ」」


するわけないぢゃん。おばぁの時と同じく僕の言う通りにゼリーは応答し、湯の色は白濁色に(仕組みは分からない)。因みに一般客のリクエストには一切応えない。


ふぅむ。湯に浮かぶ濡れた二つの豊満乳房……陽の照り返しか火照りか色っぽい桜色肌……僕の視線に気付きサッと隠す二人の恥じらい……

見えないってのも良いもんだ。


「全く……今日は疲れましたわね。途中から脳が理解を諦めました」

「で、でも楽しかったですよっ」

「なら良かった。僕も友達連れて来るなんて初めてだったからこれで良かったのか心配だったよ」

「確かに。今まで見た事が無い舞い上がりぶりじゃったわい」

「もー、おばぁそういうのいいからー(赤面)」

「普通ならば可愛らしいリアクションと取るのですが……ワザとらしいというか」

「あ、アレはちゃんと素だと思うよっ」


失礼な姉妹だ。


「おぅ、【竜殺し】じゃ。(ポンッ)ふむ、早いな。褒めてつかわす」


気分が良いのか、おばぁはゲートをパークの居酒屋だかに繋げ、お盆にのった酒を渡させた。凄い魔法なのに碌な使い方しねぇな。


「(クイッ)うぃー。ほれ、お前も付き合わんか」

「えー。僕日本酒はそこまで好きじゃウグゥ! (グイッ)ぷはぁ。もぅ、無理やり飲ませて……日本の敷地ならアウトだよぉ?」

「だ、大丈夫ですの?」

「め、目がトロンとしていますが」

「大丈夫だよぉ、竜殺しは凄く度数高くて竜には猛毒に近いってくらいだよぉ。……えいえい」

「……ッ!? ……クッ(ぎろり)」

「え、えっ? なんで天女ちゃん赤い顔で妃さん睨んでるの? 微かに震えてるの? お湯の中で何が起きてるの? 手は見えてるから足だよね? 足で何されてるの? 天女ちゃんも何で抵抗しないのっ?」

「仙女ちゃんうるさいよぉー。そんな口わぁ、こうだっ」

「むぐぅ!?」

「お姉様!? ああ! 満更でもないお顔! ひっ! な、何故次はわたくしに狙いを定めたような目付きで……いやああああ!!」

「篭は飲むと口淫キス魔になるからのぅ。それより篭、我は久方ぶりにイフリートサウナに行きたくなったぞー」

「ぷはっ。おばぁちゃーん、そこは昨日も行ったでしょー」


このボケ老人はすぐに癇癪を起こすので、渋々次のお風呂へ向かう事に。酔いはすぐにさめた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ