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あの子との出会いは封が何歳の頃だったか。

確か……三歳くらいだったかな。



瓏さんと篭ちゃんの一歩後ろを歩いていたその子を、封は何故か気になった。


源家は過去におじいちゃんがグラヴィ様に助けられたとかの理由で、妃家に仕えるようになったらしくって。

だからその日は、将来、封が仕えるであろう未来の妃家当主との初顔合わせだった。

そりゃあ、初めて見た篭ちゃんにはドキリとしたものだ。子供時代は容姿も存在感も才能も揃ってて……ああ、『持ってる子』は違うなと圧倒された。

同時に、『何でも持ってるボンボンは辛い事無くて良いな』とか『なんで昔の繋がりだかを関係無い封が継がなきゃ?』とか内心じゃグチグチ。


一方……もう一人の子には『何も無い』と言う話で。才能も力も無く、でも、流石に容姿は『親が親だから』篭ちゃんの並に整っていた。


あと、一つだけなら篭ちゃんにも『勝てる素質』を持っていて。

それは――持たざる者だからこそ、『失った者』だからこそ持てた『色気』。

何でも持ってる子と、一つしか持ってない子。封は……後者に惹かれた。



「ふぅ……」


控室にて。封は椅子に座り、色々な思いを巡らせながら深呼吸をする。

あの子は素直にここに来てくれるかな。小さい頃の可愛くて素直だった時と違って、今は捻くれてるからなぁ。

控室の外は賑やかだ。『会場』の熱は今がピークと言っても良い。

封が事前に『あの子が来る』と観客に伝えていたから。来なかったら凄いブーイングをくらうけど。


ワアアアアアァァァ……


と。

急に外が静かになって。


ゴゴゴゴゴ…… 地響きのような『圧』で、部屋がカタカタ揺れる。


「『全身を巨大な手で握り潰されるような』存在感の『質』……グラヴィ様もここに?」

「呼んだか?」

「え」


いつもの事だが、重力魔法で発生させたゲートで音も無く現れる【王】の登場に、慣れていたつもりだが、久しぶりに驚いた。

ビックリ、という意味で無く、困惑的な意味で。


「あ、え? グラヴィ様がここに居るのに、もう一つ、同じような質の存在感が……あ、ああ、瓏さんも来てるんですか?」

「あの馬鹿が普段霞が如く抑えておるのは知っとるじゃろ。ククッ、封、貴様内心では【出処の主】に気付いておろう?」

「……嬉しそうですね、グラヴィ様」


気付かないわけがない。少し前にあった『広範囲ドラゴンスタンプ』の時点で、あの子の『成長』はパークの皆が把握した事だろう。いや、正確には成長じゃなく『調整』。

歪んでいたモノを、徐々に、『本来』の自分へと戻し始めている。


「ほら、はよ行かんか。奴を待たせるな」

「……今回だけは何をしても『見逃して』下さいね」

「奴から『逃れられる』と思っておるのか?」



ドワアアアアアア!!!


入場すると、三六〇度、一気に浴びせられる注目と歓声の洪水。

けれど、これは封に対する期待の声じゃない。『さっきまで』は封がここを独占していたのに、皆の今の目当ては【あの子】。


別に不満は無い。当然の結果。なんてったって、あの子はこのテーマパークの『プリンス』だから。


そんな件の彼は二階観客席で会場名物の【闘魂ソフトクリーム(闘神が作るスイーツで口にするとハッスル)】を舐めながら……


「ここは、どういう場所ですの?」「名前の通り闘技場だよ。勝者を予想してG稼ぎも出来る血湧き肉躍る聖域サンクチュアリさ」「す、凄い熱気でソフトが溶けそうです……」


ぐぬぬっ、女連れでいい御身分だな!

今からその綺麗な顔、吹っ飛ばしてやる!

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