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――と、こんな平原地帯の駐車場に留まっていたからだろう。
「なっ、いつの間に!?」
「い、色んな子達が集まって来ましたっ」
ツノの生えたウサギ、まんまるとした緑のコウモリ、ネコ並にデカイピンクのカエル、子供ほどもある金色ミツ蜂……およそ表の世界では見られないようなモンスター達が取り囲んでいて。
その距離は徐々に縮まったいき……一気に飛び付いて来た!
僕一人に。
「わははー、こやつらめー、重いし鬱陶しいから離れろっ。ぶほっ! ぶほほっ(顔に引っ付くな!)」
「キーキー!」「ケケケ!」「ゲーゲー!」「スピピー!」
「か、歓迎されてるんですよね……?」「襲われてるようにしか見えませんわ……この子達は人懐っこいんですの?」
「ぶはっ。ふぅ。基本、一般客には近づきもしないよ。僕はホラ、子供の時からここの『常連』だから。この子らの親とも繋がりあるしね」
「じょ、常連でも普通ここまで打ち解けられるとは……」「子供の頃から、ですか。分かってはいましたが、貴方は『一般客』ではないのですね……」
「っと、こんな所でグダグダしてらんねぇなっ。先行くぞ先っ、【アレ】に乗ってっ」
「「アレ?」」
駐車場に鎮座するアレ……
体長約5メートルはある、宝石のような銀鱗の【ドラゴン】。
――ドラゴンは僕らを背中に乗せ、空を飛ぶ。銀の龍の背に乗って。
「「キャ――!!」」
数秒で、島を一望出来るほどの高さまで羽ばたいた。
掛かるG? このドラゴンにしたらそんな加護魔法チョチョイのチョイよ。
「んー……(コキコキ)はぁ。やっぱり空は気持ちいいね。ほら、二人とも僕の両腕にしがみついてないでこの絶景を眺めなよ」
「む、無理です……」「と、飛ぶなら飛ぶと始めにおっしゃってください!」
「わがままシスターだなぁ。ほら、僕もこのドラゴンも絶対に落とさないから安心して」
おっかなびっくり、二人は同時に瞼を開けて――言葉を失った。
ここ【白玉島】は三.一四平方キロメートルの、車で簡単に一周出来る小さな島だ。
『表向き』には。
境界である鳥居を潜れば、世界は一変。
空から見れば、こうして果てが見えない広大な土地が眼下に広がってるのが分かる。
「あそこがアトラクションエリア、あそこが宿泊エリア、あそこがショッピングエリア、あそこが展示エリア……テーマパークの広さは、まぁ『東京都くらい』。それ以外は全部草原や岩場、火山地帯等々の、魔物達が住みやすい環境の自然で……一万平方キロメートルの面積、だったかな」
「あ、『相変わらず』壮観な景色です……」「カナダほどの広さがあるのですね……」
虹色に輝く川、空に浮かぶ要塞、何よりも大きく雲を突き抜ける程壮大な世界樹――この世界はファンタジーだらけだ。
「ぅん? 君ら、この風景よりこのドラゴンの方が気になる?」
「え? そ、そうですわね……とても目を惹く美しいフォルムですわ」「か、堅く逞しい背中がかっこいいですっ」
「ベタ褒めすると調子に乗るから程々にね。さ、そろそろ空に慣れてきたようだから、二人とも。『あそこ』見てみて」
「「えっ??」」
僕が指差した先――植物園や『怪物園』等がある展示エリアには、明らかに目立つ巨大な『檻』が一つある。
皆が注目した瞬間 ――ゾクリ
足先から頭のてっぺんまで電流が駆け抜け、反射的にブルリと震える。
「あ、あわわ……」「な、何がいるんですのっ、あそこにっ」
「別に、ただのこのテーマパークで一番『偉そうな魔物』だよ。自分より上から見下されるのが嫌いなんだ」
「な、なら下に行きましょう!」「この威圧感は寿命を縮めますわ!」
「でも僕とこのドラゴンはその魔物を上から見下ろすのが好きなんだ」
「「性格が悪い! (ですわ!)」」
「じゃ、空の旅はもういいか。パ……ドラゴンさん、【城下町】の入り口まで飛ばして」
「「え……キャアアアア!!!!」」
ほぼ落下と変わらぬ速度で滑空し、数秒で、ドラゴンは目的地に降り立った。