【四章】23
■ 幕間 ■
プルルルル!!!
「はぁい、もしもしぃ」
「オラクソボケが! てめぇウチの宝もんに何してくれてんだ殺すぞボケェ!」
「あーん? なんだい藪からスティックに。数年ぶりに電話して来たと思ったらさぁ」
「トボけんなクソ! 『テメェのクソガキ』がウチの娘二人に手ェ出しやがったんだよ! 節操ねぇテメェとそっくりに育てんなや!」
「ほぅ」
「ほぅじゃねぇぞ! 大体どういうこった! テメェのガキは色々と『テメェが』封じた筈じゃねぇのか!?」
「の筈なんだけどねぇ、ふーん。――今、そんな事になってたんだ」
「黒幕ぶった意味深な雰囲気だしてんじゃねぇぞボケ! クソガキにもうウチに関わるなって釘刺しとけよ! テメェじゃ親の威厳も説得力もねぇがな!」
ガチャン!!
「おっと、乱暴だなぁ。うーん、しかし今の話の通りなら、娘さん達に悪い事したなぁ……仕方ない。お詫びとして『招待』するか」
4【進行中の実績】余計なお世話レベル2+α
『おばぁ、このたおれてるひとたち、どんなひとたちだっけ?』
『む? 待て篭。今、我が『視て』やる。……ふぅむ。どうやら、この世界の魔法騎士学園? という場所で優秀な成績を収めた若者達らしい。しかし魔王軍が予想以上に強く一方的にやられたらしいな』
『ふーん。それで、こっちでたおれてるひとたちは?』
『ああ。それは今、我が蹂躙した【魔王軍】だな。口程にもなさすぎる連中だった』
『ふーん。それで、ぼくはきょう、なにをするの?』
『簡単な話よ。今からこの魔王軍を『復活』させるから、篭も戦ってみるのだ』
『ぼくにできるかなぁ?』
『難しく考えるな。お前は我やお前の父の才を十二分に受け継ぎ、我らを超える素質がある。思ったように動いてみよ』
『……■■ちゃんは? ここにいっしょによばないの?』
『何度も言ったじゃろう? 奴には『才』がない。時間の無駄じゃ』
ZZZZZZZZZZZ
その日も夢を見た。
昔の記憶。おばぁに修行に連れて行かれた夢。
何か重要なキーワードが出た気がするけど……肝心な部分は朧げで。
頑張ったところで、思い出せない感覚しかない。
だから、身入りのない夢の話は置いといて……
「てなわけで、これ【チケット】ね」
「「……え??」」
「篭ちゃん!?」
学園にて、お昼。
姉妹を屋上に呼び出した僕は、取り敢えず目的のブツを渡した。
「これは何ですの……?」「て、【テーマパークのチケット】、ですか?」
「篭ちゃんどういう事!? 『あそこ』はホイホイ一般人連れてっちゃダメな場所って解ってるでしょ!」
「うっさいなぁ封。君は『ウチのパパン』からこれを『指定した相手に届けて』と頼まれて、断れるかい?」
「ろ、瓏さんの頼みを? む、無理……てか、あの人がこの二人に渡してって頼んだの……?」
「この二人のパパンと知り合いなんだってさ。『心当たりが無い』けど二人にお詫びだのなんだのって。異論は無いだろ?」
「ぐぬぬ……」
「あの、話が見えないんですが?」「で、でもこのテーマパークの名前、どこかで……」
「あー、一度で良いから行ってみたいよねー【プランテーション】」
「『異世界』 テーマパークだっけ?」
「そーそー。漫画とかで見るような非現実が広がってるらしいよー」
「【食べると若返るフルーツ】とか【どんな病気や怪我も治す万能薬】とか【嗅がせた相手を虜にする香水】なんかもあるってね!」
「でもまずチケット手に入れるのが難関らしくてねー、手に出来るのは【選ばれた人】だけで、大物政治家やどこぞの王族の権力も、大金持ちがいくらお金積んでも、テーマパーク側は忖度してくれないんだってー」
「「「行きたいなぁ……」」」
お? まるでサクラのようにこのタイミングでテーマパークの魅力を話してくれた女子生徒らが偶然近くに。
説明が省けて助かった、お礼に今度家のポストに【チケット】を入れとくよう『上に』言っておこう。
「……本当に、このチケットが今の話の、なんですの?」「あ、あわわ……そんな貴重な物を頂いて宜しいんですか?」
「むー、良い訳がないのに。何だって瓏さんは、この最悪のタイミングで事態を掻き乱すような真似を……いや、それを愉しむ人だったね……」
「ま、そんな訳で、明日からの土日は『そこ』においでよ。【お泊まりセット】持参でねっ。言っとくけど……この差出人の好意には素直に『従った方が』いいと、マジに言っとくよ。あとが怖いから」
珍しく真面目な顔の僕に、二人はぶるりと震えた。