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「理解したなら帰るよ。今の攻撃は目瞑ってあげるから」
真底面倒くさそうに対応する彼に、少女はニヤリとし、「寂しい事言わず、も少し構ってくれ! よ!」 その姿を『消しました』。
どこに? わたくしは辺りを見回し……見つけました。
『増えて』いました。
「わお、五人に増えた。分身の術ってやつ? くノ一コスは伊達じゃないね。最近『非現実的』なモノをよく目にするなぁ」
「アサシンと呼んどくれ」「それに」「非現実的と言うなら」「坊やの存在が」「まさにそれじゃないか」
「話し方も分けて凝ってるねぇ、でも面倒いから次は一人が話して。——で、因みに。ソレがお嬢ちゃんの『一番強い技』かい?」
「ああ、あたしが出せる最高の技さ。それがどうした?」
「【パパン】や【お婆ちゃん】に言われててね。『強者たるもの相手が力を出し尽くした後に手を出すのが礼儀』って。君が本気を出さなきゃ僕は反撃出来ないんだよ」
「言ってくれるじゃないのさ。その余裕——後悔しないようにね!」
五人の少女が一斉に動き出します。
目まぐるしい速さ。わたくしの目には当然追えません。
一人でも風の如くな速さなのに、それが五人。
あの方には見えているのでしょうか? もし、このまま同時に刃を振るわれたら……あの方でも流石にいなせないでしょう。
ただ見ているだけでいいのか? 護られるだけか? 勇敢な竹取の血は飾りか? 竹取天女!
ここは……わたくしが飛び込んで少しでも隙を作る!
「うーん、もういいよね」
ズンッッ! 「ガッ……ハァッ……!?」
唐突に。
五人の少女が、その場に『倒れ』ました。
まるで、上から重いモノでも落ちて来たような苦しみ方。
まるで、『王の前』に居るようなひれ伏し方。
ビリビリビリ と、空気が震えています。
その中心は——彼。
「こ、この重圧……威圧感は……! 坊や……一体……その瞳の輝き……まさか【魔眼】……!?」
「魔眼とかファンタジーな事言われてもよく分かんないや。あ、こっちが攻撃受ける前に不意打ちしてごめんね、でもこれでおあいこだし、君の技も僕には『ノーダメ』だって雰囲気で分かっちゃったし」
悪びれる様子も無く少女を見下す彼。
こちらからは背中しか見えませんが、わたくしも、その瞳を覗けば少女と同じ様なザマになるという確信があります。
「ふ、ふっ……本当に……勝負にならなかった……手すら出して貰えず……しかし……上には上が居ると知られて……まんぞ……」
ガクリ、少女は気を失いました。同時に、空気の震えも収まります。
「さ、帰るよ天女ちゃん」
「え? あ、はぁ」
何事も無かったように数分前と同じ遣り取りをするわたくし達。
今度こそ落ち着いた、でいいんですよね?
彼が、わたくしの手の拘束をブチリと引き千切り、腰を抜かしてるのも見抜いて立たせてくれます。
「えいっ(パンッパンッ)」
「キャ! 急にヒトのお尻を叩いて何をっ……ああ、埃を払って下さったのですね」
「いや、急にお尻をスパンキングしたくなって」
「なんでですのっ!? はぁ……そ、それで……今更ですが、どうしてここが分かって?」
「んー? 君の【お姉ちゃん】に教えて貰ったんだよ」
「お、お姉様が……? 何故、あの方にわたくしの居場所が?」
「んー、まぁそこはお姉ちゃんパワーって事で。後でお礼言っときなよ。『何でもするから妹を助けて』って懇願されたんだから」
「な、何でも……本当にその通り受け取らない、ですよね?」
「どエロい事するつもりだけど?」
「欲望に忠実過ぎますわ!」
ま、まぁ、本当にはヤらないでしょう。
「……お姉様は、貴方がお強い事を知っていたのですか? それほど知った仲だと?」
「いやぁ? 話したのは昨日が初めてかな。ま、あの子には『色々と見えてる』んだろうね。てか、姉ちゃんの話はいいからさっさと歩くっ」
「は、はぁ……」