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――時間は飛んで、放課後。


やはりというか、校内でもチラチラという視線攻撃は止まず、疲れる一日だった。

しかし、朝よりは僕の存在が認識されてるようにも感じた。幽霊卒業。卒業条件はよく分からない。

それはそれとして、現在、僕はひと気の無い校舎裏にいた。


「……来ましたわよ」


どこか怯えた表情で現れたのは、天女ちゃん。


「ホントに来るなんて真面目だね。こんな誘い、他の男子からのはいつも突っぱねてるでしょや」

「ええ。ですが、貴方からのを無視すれば、後が怖いと思って……」

「そんな鬼畜野郎じゃないってのに」

「そ、それより、どこにメモを入れてるんですの! あの時ですわね! 校門でわたくしのむ、胸を触った時、わたくしの胸のた、『谷間』にメモを挟んだのは! どんな早業ですの! ワイシャツのボタンはきちんと締めてましたのに!」

「封に良くしてるから慣れたものさ」

「い、いかがわしい……(キョロキョロ)その封さんは居ないんですの? いつも行動を共にしてるでしょうに」

「色々と頑張ってうまく撒いたから大丈夫。さ、行くよ」

「い、行くって、どちらに?」

「デート」


天女ちゃんの顔がより一層赤くなった。



――場所は移って、市内。


東北イコール田舎ではあるが、ここは政令指定都市になってるだけあって劣化東京と呼べる程度には発展している。近くにはコストコもあるんやぞ。

まぁ、そんな市内の駅に降りた僕達は、駅構内をブラブラ。

時間も時間だからか、同校や他校の制服を着た若者達もチラホラ。


「ど、どこか目的地がおありで?」

「無いよー。強いて言うなら小腹が空いたかなー」


クゥゥ……鳴ったお腹の出所は、僕じゃ無い。


「い、今のは……!」

「恥ずかしがらなくてもいいのに。若者なんだから沢山食べなきゃ」

「貴方は誰目線ですの……じゃなくって! わたくしではありません!」

「じゃあ若干ブームは過ぎたけどタピるかー。あ、チーズティでも良いよ。お店まで少し歩くけど」

「……貴方が飲みたいのであれば」

「やっぱ今はタピる気分じゃねぇなぁ。回転寿司行こうぜっ」

「やりたい放題ですわね……」


――駅から出て、アーケードを歩き、適当な回転寿司屋へ。

店員さんから案内され、隣同士の席に。


「あわわわ……ホントに回ってますわ……生臭いですわ……」

「今時こんな漫画みたいな反応するお嬢様居るんやなぁ……キョロキョロしない、田舎者だと思われるよ。田舎だけど」

「おや、この蛇口みたいなモノは……?」

「手洗う場所だよ。あとついでに(ジャバー)お茶も淹れられるよ」

「熱湯ですわ!?」

「それより、好きなの取るか注文するかしな。けどお高いお皿はおススメしないよ」

「何故? 当然食事代は自分で出しますわよ」

「舌が肥えてるお嬢様に庶民向けのウニとかトロはね……敢えてここは安いお皿で攻めよう、面白いネタも多いし。(ヒョイ)ほら、アボカドサーモン寿司とか初めてでしょ」

「は、はい……(パクッ)……もぐ!? もぐもぐ!!」

「くく、気に入ったみたいだな」


――その後もポイポイと皿を取り注文をしで……三〇皿め辺りで漸く落ち着く天女ちゃん。


「(ズズッ)ふぅ……素晴らしいですわねここは……らーめん、すいーつ、かれー……何でもござれですわ。普段行く回らないお寿司屋さんには無い自由さです……」

「寿司って本来高級料理じゃなくファストフードだからこっちが本来の形なんだけどね。てか、普通一気にここまで食えないよ。なんだ天女ちゃん、その豊満なバディの秘密は食いしん坊にあったんだね」

「じょ、女性に対して失礼ですわっ。わたくしが風紀委員という事をお忘れでっ?」

「いやらしぃ意味なんて無くただの感想だよ。へっ、風紀違反なドスケベ巨乳なんて普段から見慣れてるぜっ」

「比較しないで下さいましっ。ま、全く……わたくしは貴方に無理矢理連れて来られたのですから、封さんにはわたくしに糾弾が流れないようにして下さいね」

「封は僕の彼女でもねーのにそこまで言い訳する必要無いっしょ」

「え……そうなのです? アレだけの距離感で?」

「昔からの仲だからね、あの子は――」


どうしてか、『慰み者ポジション』をかって出るような変人だけど。


「それならばそれで不健全ですが……学園でいかがわしい真似をしなければ、わたくしも何も言いませんよ」

「もう放課後なんだから今の君は学生じゃなく普通の女の子でしょー。ゆるくいきなよゆるくー」

「そういうわけには参りませんわ。わたくしは竹取家の者として……学園長の孫として、偉大な父の子として、いついかなる時でも模範となる者でなければならないのです」

「男は君の顔とおっぱいしか見てないし、それだけの皿を重ねてる姿は見られていいのか……」

「こ、これはっ。あ、貴方の前に置かせて頂きますねっ」スススー

「女側が0枚で男側が数十枚とかどんな関係性のカップルかと思われるぜ」

「か、カップ……!」


あ、ここタピオカミルクティもあるんだ。ブームに真っ先に食らいつくスタイルは嫌いじゃない。回転寿司はそこんとこ身軽よね。まぁもうブーム去りかけてるけど。……タピるか。


「ま、全く……不思議な感じですわ。存在は認知していたのに、今日初めて話すような殿方とこうしてお食事する事になるなんて。ど、同世代の殿方と外に出るのも初めてですのに」

「(ちゅるちゅる)他の初めても僕が貰おうか?」

「隙あらばセクハラはやめて下さいましっ」

「ん? セクハラって? 何を想像したの? ん?」

「ぐ、ぐぬぬ……分かっているくせに性格の悪い……」

「君もタピって落ち着きなよ。はい」

「はぁ……(ちゅるちゅる)……不思議な食感ですわね、葛餅のような……って! こ、こ、こ、これ! あああ貴方が口を付けた!?」

「くくく、君の初めての(同世代間接)キスは僕という事でよろしいかな?」

「わ、わたくしがこうも殿方に手玉に取られるだなんて……」

「それほど悔しそうには見えないけど?」

「あ、貴方の目が節穴なだけですっ。……うん?」


と。天女ちゃんはポケットに手を入れ、スマホを取り出し、画面を見て、少し顔をしかめて。


「わたくし、門限があるんです。迎えの者が駅の方に既に居るらしくって」

「そ。街に来てる事は連絡済みだったんだ。デートって用事も?」

「い、言える筈がありませんわ! 言えば問答無用で貴方の家に刺客が送られます!」

「デートなのは認めるんだね」

「っ〜……! もう行きますわよ!」

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