【二章】6
2 【進行中の実績】覗き魔レベル2 達成ボーナス『ドラゴンプレス』
夢を見ていた。
これは、前夜に見たのと同じ世界観の夢だ。
目覚めた時には忘れていた内容の夢で。
そういえば、昨日この夢を見てから、相手のメニューが見えるようになったんだった。
夢の中の僕は、『僕を』見ていた。
俯瞰的な神様視点。
子供の時の僕が、別の子供と遊んでいるシーン。
幼馴染の封じゃない。
封じゃないのに、僕は、その子と楽しそうに鬼ごっこしていた。
その子の顔は……『僕そっくり』だった。
ZZZZZZZZZZZ
「——んぁ?」
……、……朝か。なんか夢見てた気がするけど、どんなに内容だったっけ。
ムニュ。
あん? 腕を動かした拍子に、ヒジに柔らかな感触。
——タンクトップ、ノーブラ、白い肌、ウサギ耳。
「んっ……むにゃむにゃ……篭ちゃああん……」
封が僕の隣で寝ていた。『よくある事』だ。
「てい」
「(ゴロンッ)……ぐえっ」
ベッドから落ちる封。
「んー……? あー、おはよー篭ちゃん。落ちる夢でも見ちゃったかなー」
「おは。もう何度も言って諦めてるけど、気軽に鏡通ってヒトの部屋来るなよ」
「無理ー。よいしょ」
懲りずにベッドによじ登り、封は僕に抱き着いてきて、
「この抱き枕を知ったらもう一人じゃ寝られないよー」
「ていっ」
「(ゴロンッ)ぐえっ」
「暑苦しいっ。着替えるから離れてろ」
僕はパジャマを脱ぎ、上半身裸になって、
「んー伸び伸び(コキコキ)……はぁ。朝日が眩し……ぅん? 何見てんだよ、見せもんじゃねぇぞ」
「(ゴクリ)……キラキラと宝石のように光を纏う銀髪……きめ細かいシルクのような肌……人形のように整った小さな顔……何度も見ているのに封は釘付けになる」
「なんだその地の文みたいなポエムは」
「なんか篭ちゃん、エッチだっ(ンフーンフー)」
「朝から発情すん、なっ(枕投げ)」
「グエッ……(ボソッ)やっぱおかしい……まさか本当に魅力が徐々に『戻って』……? でもそうでないと説明が……」
「まーた一人でブツブツ言ってら。ほら、封も早く着替えな」
「う、うんっ」
封は立ち上がり、ヒトの部屋の衣装棚を開け、【下着類】を選び始めた。
「なーんで当たり前のようにお前の私物一式が僕の部屋にあるのか」
「えー今更じゃない? あーしの部屋にも篭ちゃんのパンツやらあるぢゃん」
「移動させた覚えないのに何故かいつも都合良く封の部屋にあるんだよなぁ」
「篭ちゃーん、今日は何色がいーと思うー?」
「白いシャツ越しでも透ける程のどエロいピンクの」
「おーけー」
封はタンクトップを脱いでパンイチになり、リクエスト通りのブラを慣れた手つきで装着。
もう慣れ過ぎた光景で麻痺してるが、これ、学園の男子からすれば僕の幼馴染ポジションは垂涎ものだろう。普通幼馴染でもここまでオープンじゃないと思うけど。
「化粧も軽くしちゃうから待っててねー」
「んどクセェなぁ……」
仕方ない、漫画でも読んで時間を……ん?
「あれっ!? 僕の【姉コレクション】は!?」
「姉コレクションー? 何言ってんの篭ちゃん、そこの棚やらは昔から『幼馴染コレクション』で埋まってたでしょー」
「んな負けヒロイングッズ集めるか!」
ひ、酷い……僕が厳選して集めた有名どころからマイナーな作品の『実姉キャラ』漫画小説フィギュア類が面白みもねぇ幼馴染キャラアイテムに塗り替えられてる……誰がこんな酷い事を
「ってお前やっ」
「ああん! おしり強めにギリギリしないでっ……!」
「しまった悦ばせるだけだった!」
へなへなと崩れる僕。
「なんて残酷な事を……」
「そこまで崩れるなんて……今までだって冗談で何度も入れ替えてるのに、なんで今日はそこまで『反応』してるの? ってか、『姉キャラ』の何がいいの?」
「むっ?」
そういえば、深く考えた事など無かった……何となく、『姉という存在に惹かれ』て……。
「そんなに歳上がいいなら私でいいぢゃん? 私篭ちゃんより産まれるのひと月早いお姉さんだよっ? しかも幼馴染のハイブリッドだよっ?」
「ええい『お姉さんキャラ』なんぞに興味はない! 血の繋がりという背徳感がええんぢゃい!」
「アヴノーマルだよ!」
「お前が鏡通って部屋から僕のベッドに行き来できる方がっ……アレ? 冷静に考えたら何かおかしくない?」
「え!? な、なに急に! おかしくないよっ。さ! 朝ごはん食べよ!」
そうかなぁ……不意に、突然に、僕は自分の生活環境に違和感を持ち始めたのだった。