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――鏡を潜った先は、『僕の部屋』。


もう寝るつもりだったが、その前に、部屋から出て階段を降り、キッチンに。

少し熱っぽい頭を冷やす為にアイスでも食べようと思っていた僕は、


『ピンポーン』


こんな夜更けのインターホンにイラッとなる。

迷惑な客だ。このまま居留守を使ってやってもいいが……それでこの前【おばぁ】に怒られたんだよなぁ……面倒くさいけど、応対してやるか。

これが漫画なら、僕にこの力を与えた【謎の美少女】が説明をしに来たりするんだろうなぁ。

ま、そんな『非現実』あるわけないか。

玄関の扉を開ける。


【悪魔】がいた。


長い二つのツノ、羊の頭、三メートル近い巨体、黒いスーツ。


「お? カー坊か。こんな夜にスマン。【王】、おるか?」

「多分いないよ。どしたん」

「ちょっとなぁ、『アトラクション』やら『新商品』やらを決める大事な会議から逃げてもうて……困った人やで。んー、ほな行くわ。またな」


悪魔はヒラヒラと手を振りながら帰って行った。


「……、アイスアイス」

「――行ったか?」


不意に。どこからか、そう問い掛ける声が。

周りには誰も居ない。

と思いきや、宙空にバランスボール大の【黒い球体】が音も無く現れ、中から「よっ」と、【その人】はぬるりと這い出て来た。

あらゆる場所へと飛べる便利な空間魔法。


「おばぁ。また逃げてきたの?」

「ふん、会議など退屈じゃからな。今まで通り、我が口を出さずとも運営に問題はなかったし、小難しい話は奴らが決めれば良い」

「いつか寝首かかれても知らないからね。じゃ、僕はアイス食べる仕事あるから」

「……待て、篭。貴様……何かあったか?」

「どうして?」

「いや、それは……しかし現にこうして……まさか――」

「ん?」

「……なんでもない」

「意味深やめろ」


どいつもこいつも含みを持たせやがる。

――その後、ばあちゃんは何も言わないでジーッとこちらを見るだけだったから、むず痒くなった僕はさっさとアイス(サクレ)を手にし、階段をのぼる。


『カー君っ』


……ん?

キョロキョロ。

……誰か僕の事呼んだ?

おばぁとも封とも違う女の子の声。

『どこかで聞いた気がする』声。

幻聴?


この辺りにあるのは『空き部屋』だけだし。


……ま、気のせいだな。

僕は部屋に戻り、ベッドに飛び込み、アイスをシャクシャク。

はぁ……なんか今日一日、妙に疲れたな。

僕ってば『普通』の男の子だから、物語の主人公みたく突然の『非日常』には対応しきれないよ。

人の履歴が覗ける、過ぎた力。

有効活用出来る人も居るんだろうが、僕がこの能力を持っても大した事出来無さそうだし、朝起きた時に消えてても困らないだろう。

人には相応の限度ってものがある。

僕みたいな『凡人』には、やはり今まで通りの緩い日常が……、……


――ソレを思い付いたキッカケは分からない。


気付いてたのに無意識に避けていたのかもしれない。

確信しているのは、ソレを試したら、もう戻れないという事。

前述の気持ちの通りなら、試すのはやめるべきで……けれど。

日常を愛する僕と同じくらい、『特別になりたい』僕もどこかに居たみたいで。

だから、つい、勢いと若気の至りで、ソレを実行する。


僕は、【僕のメニュー】を覗くため、(意識しつつ)自身の胸に触れた。


フッ――特に滞りなく、現れるメニュー。

同時に ティロン と実積達成の効果音。


「なになに? 『ウェルカムようこそ』?」


実績名の横に書いてある達成条件は、初めて自身のメニューを覗く、か。

……ん? 見れば、もう一つの実積も達成済みになっていて。


『覗き魔レベル1』――二人のメニューを覗く、か。


確かに、今日は二人の女の子のを見させて貰った。

この二つの実積達成が、僕の一日の成果。

だからなんだと、何かを得たのかという話だが……む?

下の方のまだ達成してない『覗き魔レベル2』の実績名の横に、『宝箱のアイコン』?

まるで、これを達成すれば何かを得られると言わんばかりな印。

……とりあえず、確認だけでもしてみるか。


少しでも長く、この『非現実的』な世界に浸ってられるように。

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