9.『森のくまさん』の物語を本格的に冒険する
本日は2話投稿してます。
一話目は設定紹介です。
気になる方は戻って読んでみてください。
ではでは(=゜ω゜)ノ
「セイ居る?」
私は再び『森のくまさん』の世界へ訪れて最初に確認したのはセイの存在だった。何故なら現実世界ではセイに呼びかけても返事はなく、存在自体が無くなったかの様で不安だったのだ。
(こっちの世界にセイが居なかったらどうしよう)
そんな不安を抱えていたため、直ぐにセイに呼びかけたのだった。
「明さん、ちゃんと居ますよ」
とセイは私の周りを妖精の姿で飛び回る。その姿を確認して漸く私はホッと胸を撫で下ろした。私は心配事が無くなったので周囲の状況を確認する。私が再び訪れたのはさっきまで苺を食べていた場所だった。服装はこちらの世界を離れていた時と同じ装備に戻っている。とても便利だ。周囲と自分の状態の確認が終わると、私が居なかった時の事が気になり始めた。
「ねぇセイ。私が居ない間、何かあった?」
「明さん、物語を確認してみてください。そうすると分かりますよ」
とセイが言うので、私は【ガイドブック】を開いて読み始めた。
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―――略
「美味しい」
と旅人は口にします。妖精も嬉しそうに飛び回りました。
旅人たちが立ち去った家の方へ向かっている影がありました。それは森のくまさんです。
「あれ? 知らない匂いがするぞ」
くまさんが自分の家の扉の前で鼻をひくひくさせながら呟きました。くまさんは自分以外の人の匂いがするのは初めてなので不思議に思いました。
(誰か僕の家に遊びに来てくれたのかな?)
そう思うとくまさんは嬉しくなりました。嬉しくなったくまさんは匂いを辿ってみることにしました。
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私は【ガイドブック】の物語を読み終わるとかなり焦った。
「セイ! この状況ちょいヤバくない? 今、森のくまさんがこっちに向かってきてるってことじゃよな。どうしょう」
焦ってワタワタしている私と違ってセイは落ち着いていた。
「大丈夫です。森のくまさんとはいずれ出会うことになっていました。それが今になっただけです」
「そんなこと言っても、初めて出会う人じゃよ。あ、人じゃないけど……。とにかく何か緊張するんよ」
「大丈夫ですよ、明さん。くまさんはどんな人物でしたか? 彼の為人が分かれば怖くはないはずです。読み返してみましょう」
「そうじゃな。うん。ちょっと読み返してみる」
私は少し落ち着きを取り戻して物語を読み返してみた。
(森のくまさんの性格は……。あ、寂しがり屋か。人に危害を加えることはなさそうじゃな。ふう。良かった)
「くまさんとは仲良くなれそうな気がするよ」
と私がにこっとして言うと
「それは良かったです」
とセイもニコニコしながら言った。森のくまさんが此方に向かってきているのは分かっているので暫くセイとのんびり待つことにした。暫く待っていると、本当に森のくまさんが現れた。
「こ、こんにちは」
森のくまさんは恐る恐る挨拶してくる。
「こんにちは」
にっこり微笑みながら私が挨拶を返すとくまさんはとても嬉しそうに笑みをこぼした。私は内心くまさんと会話できることに驚いていたが、顔に笑みを張り付けておくびにも出さなかった。
「あ、あなたが僕の家に来た人ですか?」
くまさんはおどおどしながら言う。
「そうです。留守の様だったので通り過ぎましたけど」
私は余所行き仕様で答える。
(たぶん、私の地が出ると話がややこしくなるよなぁ。方言は分かり難いし。できるだけ標準語で話そう。でも、うっかり地が出ちゃったらそん時はしゃあなしじゃ)※訳:その時はしょうがない
と心の中でこっそり決める。
「あの、遊びに来てくれたのですか?」
くまさんはこちらの様子を窺いつつ聞いて来る。
「うーん。まあ、そうですね。実は誰があの家に住んで居るのか知りたかっただけなんです」
私は少し答えに困りつつ、正直に返事を返した。
「え? 僕を訪ねてきたわけではないのですか?」
くまさんは驚きつつしょんぼりしている。
「はい。私は旅人なので色々な場所に立ち寄っているのです」
私は自分の役割を話しつつ適当な設定を作って話した。
「あの、旅人さん。僕の家に遊びに来てくれませんか?」
「良いですよ。私は旅人の明と言います。よろしくね。森のくまさん」
くまさんが一生懸命に私を誘ってくれたので、私は快く誘いを受ける。そして私はくまさんの家に一緒に行くことになった。勿論セイも一緒だ。のんびりとくまさんの家に向かいつつ会話をする。
「こっちは妖精のセイです」
とくまさんにセイを紹介すると
「初めまして、森のくまさん。私は妖精のセイです。よろしくお願いいたします」
と丁寧にセイも自己紹介していた。
「あ、僕は森のくまです。よろしくお願いします」
とくまさんもぺこりと頭を下げていた。くまさんの可愛らしい様子に私は笑みを深くする。
「くまさん、可愛いですね」
と私がそのまま口にするとくまさんは驚いて目を丸くした。びっくりして立ち止まっている。
「僕、そんなこと言われたのは初めてです」
「びっくりしたくまさんも可愛いですよ」
と私がニコニコすると、くまさんは目を丸くしたままほっぺに朱が差してもじもじした。
「あ、ありがとうございます」
大きなくまさんがとても小さな声でお礼を言うのが可笑しくて私は吹き出してしまった。
「何で笑うんですか!」
と真っ赤になっているくまさんを見ると余計に笑いが止まらない。私の笑い声が森の中に響く。セイは私とくまさんの様子を見ながら楽しそうに浮かんでいる。
「もう」
と不満を口に出しつつ満更でもないくまさん。くまさんとの距離が近くなった気がして私の心は温かくなった。
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