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本の旅人、物語を渡り歩く  作者: 三木香
一章:本の旅人の誕生
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2.物語は始まらない!? いざ本の中へ

 私は女子寮へと急いで帰った。早く本が読みたい。早く冒険してみたい。そんなはやる気持ちが足に出ていた。女子寮の玄関を開けて靴を脱ぎ、自分の部屋へと急ぐ。2階の自分の部屋へと駆けあがった。私の部屋は6畳半の畳の部屋。半のスペースにはキッチンが付いており、ベッドが部屋を大きく占領している。簡易テーブルと椅子、小さな冷蔵庫に小さな本立て。洗濯物は窓の外に干していた。トイレとお風呂は共用で部屋とは別である。そんな女子寮に私は住んでいた。自分の部屋の鍵を開けて中に入る。荷物の中から早速例の本を取り出した。


「どれどれ」


 私は椅子に腰かけて『世界の扉』の本を開いた。


「ん? んん?」


 適当なページを開いた私は疑問の声を上げた。開いたページには何も書かれておらず白紙だったのだ。めくってもめくっても、白紙が目に飛び込んでくる。私は混乱していた。


(あれ? 何で? 冒険は? 本の世界に入れるんじゃなかったん? どういう事?)


 私の心は疑問で埋め尽くされていた。本の中身が白紙であることに衝撃を受け、本を閉じた。そして、本を持ったままフラフラとベッドに倒れた。衝撃から抜け出せず、暫くベッドでぼんやりしていたが、本屋のおじさんの言葉を思い出して、飛び起きた。


(そうだ。確か前書きがあるって言ってた。そこを読めば何か分かるんじゃあ……)


 私はそう思い、今度は表紙からめくっていった。すると思った通り、きちんと前書きが書かれていた。


『―前書き―

○ 注意事項

この本は特殊な本です。扱いには十分注意してください。本の世界に入った後の怪我・事故・その他の不慮の出来事に対して一切保証はありません。覚悟を持って使用してください。また、他人に本書を譲渡した場合、所有権は他人に移ります。譲渡後はきちんと所有者登録を行ってください。所有者登録を行わなければ何も起こりません。使い方の手順に従って登録を行ってください。


○ 使い方

1.所有者登録をする:表紙裏の署名欄に所有者の名前を署名する。(直筆以外無効)署名を行う事により、所有者登録が完了する。

※他人に譲渡した場合、署名欄に記されている既存の署名は消失する。

2.本の世界に入る:物語のページを開き、「開け胡麻」と唱える。

※直ぐに本の世界へ移動するので、必要な準備を怠らない事。


○ 機能

※本書を使用する毎に増えて行く』


「うわぁー。結構危険なんだな」


 そんな感想が口らか漏れる。前書きを読み終わり、しばし考えてから表紙裏を開く。署名欄は白紙になっていた。そこをじっと見つめて考える。


(ここに署名すると私のものになる。そうするとこの本が使えるようになるんじゃけど、色々とリスクがあるなぁ。んーでも、冒険を諦めたくない。よし! 署名しよう。)


 そう思い、私は署名欄に署名した。すると、本がわずかに光、何らかの状態変化が起こったことが分かった。私は早速ページを捲っていった。そうすると、今まで表示されていなかった物語のタイトルが表示されていた。タイトルは『森のくまさん』だ。物語の序盤だけ記されていて続きは途切れている。内容はこんな感じだ。



-----------------


タイトル:『森のくまさん』


 小さな小さな田舎町に、大きな森がありました。大きな森には沢山の木の実や食べられる植物が()っていました。村人は大きな森で木の実や植物を拾い、家計の足しにしていました。しかし、その森にはルールがありました。森の奥には行かない様に、と言うことです。何故なら深い森の中にはくまさんが住んでいるからです。村人とくまさんは仲が悪いわけではありませんでしたが、村人はくまさんを恐れていました。くまさんを恐れた村人は森の奥には行かない、くまさんとは関わらないとルールを作っていました。そんな訳で、森のくまさんは森の奥深くに一人で住んでいました。くまさんは寂しがり屋でした。一人ぼっちは寂しいのです。いつからここに住んでいるのか知りませんでしたが、いつの間にか一人でした。親くまは居ません。友達も居ません。くまさんは森の奥でたった一人で住んでいたのです。


「誰か遊びに来ないかなぁ」


 とくまさんは言いました。しかし、答える者はいませんでした。


「僕は人とも仲良くできると思うのに…」


 ポツリと呟くくまさんはとても寂しそうでした。



-----------------


 とここから先は白紙で続きは書かれていなかった。


「ふむふむ。物語のタイトルは『森のくまさん』か。んー。途中で物語が止まってるな。この先が気になるんじゃけど…。まあでも、『開け胡麻』で本の世界に入れるなんてなぁ」


 ふふふと笑いながら私が言うと、いきなり本が光りだした。驚いて見ていると、緑色の蔦に覆われた扉が出て来た。そして、扉が開かれて私は吸い込まれたのだった。





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最後まで読んでくださりありがとうございました。

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