17.くまさん家のお茶会
ストックが切れるまで毎日更新の予定です。頑張ります('◇')ゞ
「これおいしい!」
私が家に入ると既にお茶会は始まっていた。女の子は嬉しそうにお菓子を頬張っている。
「旅人さんもこちらへどうぞ」
とくまさんが椅子を引いてくれた。セイサイズの小さなカップも用意されている。
「セイの為に小さなカップまで。ありがとうございます」
「いえいえ。前回は間に合いませんでしたが、また来てくれると思ったので用意しました。喜んでくれてよかったです」
「ありがとうございます」
セイも嬉しそうにお礼を言う。和やかな雰囲気でお茶会はあっという間に時間が過ぎて行った。
「おっと、外が暗くなってきていますね」
セイが言うので窓から外を見回すと、辺りは夕暮れ時で薄暗くなってきていた。
「やばい、忘れてた。お母さんが心配してるよ。早く帰らないと」
私が慌てて帰る支度を始めると女の子は俯いた。
「まだかえりたくない」
「でも、外が暗くなっちゃうよ。森でまた迷子になるよ」
「それはいや」
「なら一緒に帰ろう」
くまさんは私たちの様子を少し寂しそうに見守っていた。
「くまさん、またきてもいい?」
女の子の言葉にくまさんはパッと表情を明るくする。
「勿論です。またいつでも遊びに来てください!」
「わかった。じゃあ、きょうはかえるね。また明日、くまさん」
「はい。また」
「んじゃあ、帰るか。くまさんまた来るね」
私も挨拶を交わしてくまさんの家を出た。薄暗いとはいえまだ明るい。私たちは村への道を歩いて帰った。
「お母さん、まだおこってるかな」
女の子は私の手をぎゅっと握って不安そうに言う。それに合わせて歩みも遅くなる。
「大丈夫だよ。お母さんは君のことが心配なだけ」
「そうかな」
「そうだよ」
私たちはぽつぽつと言葉を交わしつつ歩く。無事に村へ着く頃には辺りはすっかり暗くなってしまっていた。裏門の前にぽつんと立つ一人の人影が見える。それは女の子の母親だった。
「あ、お母さん!」
女の子は母親を見つけると駆けて行った。怒られるかもしれないと怖がっていたことも忘れて。
「心配したのよ」
と母親は女の子を抱きしめて言う。
「遅くなって済みません」
「いえ。見つけて、下さり、ありがとう、ごさいました」
そう言って母親は深く頭を下げた。
「お母さん。やっぱりくまさんいいくまさんだよ。おともだちになったの。おちゃとおかしをくれたの。おいしかったよ」
「まあ! 心配したのに、あなたは……」
「済みません。私が案内しました」
私は二人の会話に割って入って謝罪した。
「あら、そう、でしたか。それでも、ゴホゴホ」
母親は何か言いたそうだったが、咳が出て話が続けられなかった。
「外は冷えます。家に向かいましょう。そちらまで送りますよ」
「ゴホゴホ。ありが、とう、ございます。ゴホ」
「お母さん、ごめんなさい」
女の子はしょんぼりしながら母親に謝った。
「もう、いいのよ。ゴホ。さあ、帰りま、しょう」
女の子は母親と手を繋いで歩く。私はその後ろをゆっくりと歩いてついて行った。セイは私たちの周りを飛んでいた。鱗粉が月明かりに照らされてキラキラと輝いて幻想的だった。
「ようせいさん、きれい!」
「ありがとうございます」
女の子がはしゃいで言うとセイは嬉しそうに女の子の周りを飛んだ。女の子はキャッキャと笑い声をあげる。とても微笑ましい光景だった。
「家まで、送って、くださり、感謝、します」
「いえいえ。ではまた」
無事に家まで送り届け、挨拶を交わす。
「めいおねえちゃん、ようせいさん、またね」
「はい、さようなら」
セイも挨拶を交わし、彼らと別れた。
「――物語が追加されました――」
「はは。やっぱり増えたね」
「はい。増えました」
「んじゃあ、確認するかぁ」
それから私は座れる場所を探してから【ガイドブック】を開いた。
「あ、暗くても読めるんじゃなぁ」
なんと【ガイドブック】は周りが暗くても読める仕様になっていた。本が少し発光していて灯りが無くても読める状態になっていたのだ。
「えっと、続きはっと」
「こちらですよ」
「ありがと、セイ」
「いえいえ」
私は前回の話を思い出しながら【ガイドブック】の物語を読み進めた。