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その11 場外乱闘

 辺りに流れる重厚な音楽。


 G・K・D! G・K・D! G・K・D!


 そして謎の観客からのG・K・Dコール。


 バーン!


 爆発音と共に立つのは身長2mの美丈夫、グレートキングデビルである。


「「おおおおっ! G・K・D! G・K・D!」」


 今日もやっぱり大興奮のハルトとハヤテ。パートナーの女性達はもはや諦めムードである。

 そんなハルト達を見ながら苦笑するカイ。


「とうっ!」


 グレートキングデビルは駆け出すと地面でもがくゴーレムの頭を抱え込む。


「おおっ! ドラゴンスリーパー!」


 ゴーレムの頭が大きすぎて技のかかり(・・・)が甘いが、それは確かにドラゴンスリーパーだった。


「むんっ!」


 グレートキングデビルの鍛え上げられたマッスルが膨張すると、ゴーレムの頭がメキメキと軋み音を上げる。

 慌てたゴーレムが残った腕でグレートキングデビルを攻撃しようとする。

 その巨大な腕にかかればグレートキングデビルとはいえひとたまりもないと思われた。


「グレートキングデビル危ない!」


 ハルトは咄嗟に駆け出すとゴーレムの胴体を駆け上がりジャンプ。

 落下の勢いを乗せて、大きく反らされた喉にナタを叩き込む。


 ビキッ!


 ゴーレムの喉に大きな亀裂が入った。


「ぬおおおっ!」


 グレートキングデビルがさらに力を込めると、バキバキと音を立てて亀裂が広がって行きーー


 バキャン!


 ついにゴーレムの首がへし折れる。

 グレートキングデビルはゴーレムの首を持ち上げると、そいや! とばかりに投げ捨てる。

 首は神経の束のようなモノを胴体からズルズルと引きずり出しながら飛び、血吸い蔦の上に落ちて蔦を押しつぶした。


 今度こそ完全に動かなくなったゴーレムに満足そうなグレートキングデビル。


「流石これだけのデカブツだ、二つも階位(レベル)が上がったな。あ、いや、済まない。確かったよ、グレートキングデビルさん。」

「ふむ、いいだろう。あの蔦も目障りだったことだしな。ぶっ潰してやる。」


 急激に変化した体の感覚を確認しながら礼を言うハルト。

 相変わらず会話が通じているのかそうでないのか微妙なグレートキングデビル。

 ともかく、どうやら彼らの間に共闘が成立した様子だ。


「おおっ! グレートキングデビルさんが一緒に戦ってくれるなら百人力だぜ!」

「そうだ。1+1は2じゃないぞ。オレ達は1+1で200だ。10倍だぞ10倍。」


 プロレス界では有名な”テン〇ジの定理”である。

 1+1で200は「そのくらいスゴイんだ!」で理解出来るが、2と200を比べた時に10倍という意味が分からない。

 つまり、そのくらいプロレスラーというのはスゴイのである。分かれ。


「うおおおっ!」


 ゴーレムの首から伸びた神経束を掴み、振り回すグレートキングデビル。

 ビュウビュウと風切り音を上げながら旋回する首に薙ぎ払われた血吸い蔦は、根元から引きちぎられ、吹き飛ばされていく。

 地面に転がり、虫の息でもがく血吸い蔦に止めを刺していくハルト達。


「やっぱりグレートキングデビルはスゴイぜ!」

「お前のそんなまっすぐな目を見ると、日頃のお前の目はどれだけヒネていたか分かるな。」

「・・・。」


 キラキラとした少年の目をするハルトに、呆れ顔のティルシア。

 そんな二人に苦笑するカイ。

 しかし、昨夜ハルトと話したことで何かが吹っ切れたのか、ティルシアの様子に昨日のような暗いモノは感じられない。

 その事に少し安心するカイだった。




「「G・K・D! G・K・D! G・K・D!」」


 二人の鳴りやまないコールに、利き腕を天に突き上げるいつものポーズで応えるグレートキングデビル。

 さっきまで一緒に戦っていたハルトと、いつの間にか地上に降りてかぶりつきで観戦していたハヤテはその姿に大興奮である。


「付き合いきれませんわ。」

「そうだな。」

「でも、彼の「「グレートキングデビル」」・・・グレートキングデビルのおかげで僕達が助かったことは事実だよ。」


 すかさず突っ込むハルト達にやり辛そうにしながら、カイは少女達に告げる。


「まあ、確かにそうだな。」

「ハヤテも今回のような敵は苦手のようですし。」


 どうやら少女達もグレートキングデビルの事を認める気になったようだ。


「でもあの恰好は無いな。」

「・・・ほとんど裸ですものね。あんな恰好で人前に出て恥ずかしくないのかしら。」


 さっきからティトゥの目が泳いでいるのは、どうやら目のやり場に困っているためのようだ。

 鍛え上げられた肉体美を晒すグレートキングデビルは、やはり貴族のご令嬢には刺激が強過ぎたようである。


「ふむ。」


 少女達の言葉がグレートキングデビルがサービス精神に火を付けたようだ。

 彼はおもむろに半身になると、いわゆるサイドチェストというポーズを取り、逞しい大胸筋を小刻みに震わせる。


「~~~!!」

「筋肉をピクピク動かすな!」


 真っ赤になって目を反らすティトゥと、頬を朱に染めて怒鳴るティルシア。


「ああは言っているけど、あの子結構筋肉好きっぽいんじゃない?」

「ウサギ獣人は戦士だからな。そうかもしれん。」


 少女達の反応を冷静にハヤテ達が分析する。

 羞恥のあまりやり場のない怒りを覚える少女達。

 しかし、いつまでもこうしているわけにはいかない。

 カイは強引に話を切り替える事にする。


「それより、もう午後もだいぶ過ぎたよ。エタンを呼んで、今日のキャンプ地を決めよう。」

「いいだろう。ペリヤ村カモン!」

「! 何だって?!」


 グレートキングデビルは手を突き出すと叫ぶ。

 すると彼の声に応えてグレートキングデビルのチートスキル「環境魔法」が発動。

 地面から村の家々がせり上がるようにしながら姿を現した。


「これは、昨日泊まった無人の村?!」

「ペリヤ村・・・確かエタンの住んでいる村の名前だったはず。どうしてその村のことを?」

「それってどういうことですの? 二人は知り合いなんですの?」


 混乱する仲間達。グレートキングデビルは満足そうに頷くとーー


「では、さらば!」「ちょっと待て、ムキムキ男! 説明して行け!」「貴方一体何がしたいんですの?!」


 少女達の制止の声を背に颯爽と走り去るのだった。


「どういう早さだ! 階位(レベル)5の私が追えなかったぞ!」


 グレートキングデビルの身体能力に驚くティルシア。


「そんなことよりも村で休もう。」

「そうだな、結局今朝も飯の支度を手伝えなかったからな。おい、カイ。今日はハヤテが食材を提供してくれるそうだぞ。楽しみだな。」


 そしてグレートキングデビルに関してはとことんポンコツなハヤテとハルトである。

 流石グレートキングデビルだ、ありがたいなあ。くらいにしか思っていないようである。


「・・・昨夜納得したばかりで何だが、早くも心が折れそうだ。」

「私もですわ・・・ハヤテ、貴方という人は。」


 そんな男達をジト目で睨む少女達であった。




「・・・これが最後の着替えだから。もし次があったら今度は自分で調達してね。」

「すみません! 本当にすみません!」


 コメツキバッタのようにペコペコと頭を下げるエタン。

 そんな彼の前に着替えを突き出すのはカイ。

 いつもの笑み・・・のように見えてこめかみの辺りがヒクついているのが見える。

 どうやらかなりご立腹の様子である。


 それもそのはず。エタンは昨日の家で昨日のように全裸で気絶してるところを仲間に見付けられたのである。


「何で毎回裸なんだ?」

「そもそもこの村はさっきムキムキ男が作った村だぞ。どうやったらその村の中で気絶出来るんだ?」


 ハルト達はペコペコと頭を下げ続けるエタンを不思議そうに見る。

 昨日と同じく村の広場に着陸したハヤテからティトゥが下りてくる。


「あら、あの子見つかりましたの・・・って何でまた服を着ていないのかしら?」


 グレートキングデビルの肉体美には真っ赤になったティトゥだが、エタンの丸出しには特に感じるモノは無いようだ。

 むしろ無遠慮に少年の全裸を眺めるのだった。

次回「マナ」

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