終わった。
さて、今日はいい加減、城壁内に進もう。今日は剣を持って挑む。素手もいいけど剣を持った立ち回りも大事だし、いつも通り大勢でくるが余裕があるので数えてみた。ちょうど100体で城壁外は打ち止めのようだ。城門は開いたままなので歩いて入ると城壁から矢や炎がかなりの数がきたが慣れたもので上手くいなせる。魔法が使えたらこっちから攻撃したいけど仕方ないので城壁を登ってみた。足を差し込んで飛ぶ感じだ。かなりのジャンプ力。すぐに城壁の上に行けたので一掃しておいた。もうゴブリンソルジャーは余裕だな。このままこの砦もクリアできるかな?
砦内を奥に進むといかにもって扉がある。ここまでのゴブリンは全て倒したのでやばくなったら逃げれるだろう。
さー。ボスかな?ゴブリンキング的な何かがいるのかな?ゆっくり扉を開けると矢が飛んできた!自分に当たるであろう軌道の矢だけ手と剣で叩き落とす。慣れたもので余裕だ。
重装備のゴブリン、ゴブリンナイトがいっぱい。
ん?奥に前に逃した豪勢なゴブリンナイトがいる。こちらを指差してギャーギャー喚き立てている。お偉いさんだったのかな?ボコボコにしたはずの鎧も綺麗になっている。回復したのか新しいのにしたのかはわからないけど。
さー戦おう。一斉に槍で突いてくるので避けたり剣でいなしたりしながら一匹、一匹切っていく。慣れたもので流れるような作業になる。どんどん来い!しばらく楽しんでいるとゴブリンは周りから引いていった。
おぉー、一回り大きなゴブリンが出てきた。周りのゴブリンナイトも豪勢なゴブリンナイトも避けるように道を開く。強そうだな。大きな剣を片手に持ち、身長は2mくらいだろう。胸に紋様みたいなものもある。格好いい…というかこれはもうオーガとかでは?
体格で負けるのが初めてなので少し焦るが落ち着こう。いざとなったら逃げよう!そう思い一歩前に踏み出した。
ふっと息を吐きながら大剣を振り下ろしてきた。受ける気にはなれず避ける。地面が割れて石が飛んでくる。大雑把な攻撃にみえるが早い。怖い。受けたら剣が折れそう。
かなりの速度で剣が振られ避けるの精一杯だ。隙がない。嫌な汗が流れる。余裕がない。剣を避けた瞬間に拳が飛んできて気がついたら吹っ飛んでいて脇腹が痛いから脇腹を殴られたのだろう。いきなり強くなりすぎて無いだろうか?余裕を持ってレベルアップしてたはずなのに。
どうしよう。逃げようかと扉を見れば豪勢なゴブリンナイトが扉を塞ぎながらこちらを見て笑った。いい顔して笑いますね。くそ!
大剣ゴブリンが近づいてくる。
豪勢ゴブリンはこちらを見てニヤニヤしてる。ムカつくな。腰からずっと使わなかった短剣を引き抜いて投げつけてやる。投げるのは上手くなったもので凄い勢いで向かう。魔力覆えてるのかな?
豪勢ゴブリンは慌てて逃げようとするがこける。よし!当たる!そう思った時に大剣ゴブリンに短剣を叩き落とされた。くそ。
もう一度投げてやろうと短剣を用意すると豪勢ゴブリンと僕の射線に大剣ゴブリンが割り込む。ん?豪勢ゴブリンを守ってる?やっぱり偉いんだ。それに気づいた時きっと僕は悪い顔をして笑っていたのだろう。僕の顔を見て大剣ゴブリンは嫌な顔をしたように思えた。
大剣ゴブリンがまた近づいてきて剣を振り下ろす。それを避けて魔力のこもった左手で短剣を投げるそぶりをすると大剣ゴブリンが豪勢ゴブリンをかばう仕草を見せる。その隙に大剣ゴブリンを切りつける。我ながら卑怯だ。でもそうしないと勝てる気がしない。力も技術もある相手なので楽しみたいけど万が一でも死にたくはないので逃げ道確保を先にしたい。
何度かそれを行いながら大剣ゴブリンを削っている隙に豪勢ゴブリンが奥に隠れていった。この手はもう使えない。でもいくらかダメージを与えられたのだろう。大剣ゴブリンを動きが鈍くなってきた。速度も衰えてきたので剣で流すように捌いてみる。なんとかいける。大剣を流して切りつける。やはりかなり強い。あんな大剣を振ってるのに早い。最初に削られてるのにこのスピードと力はすごい。躱し、いなし、かなり練習をさせてもらう。幾度となくそれを行い、たまに隙があれば切りつける。腕を中心に切ったので大剣をついに手から落とした。
勝った!でも満足感はない。我ながら卑怯だったし、この大剣ゴブリンからはまだまだ学べる。今倒せば次に復活しなさそうだったのでここはトドメを刺さずに今日は戻ろう。大剣ゴブリンはなんとも言えない顔をしていたが僕が納得したいので仕方ない。明日は一からやり直させてもらおう。なんとなく意図を察してくれたようで帰り道は誰も邪魔をしなかった。ゴブリンナイトも道を開けてくれる。砦から回復の泉まで帰還していつものように回復して柔軟と魔力移動の練習をしてから眠りについた。
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さー再戦だ。砦の前に立つ。いつものように矢や炎はない。扉も開いている。ん?回復しなかったの?いつも時間をあければ倒したゴブリンも復活してるのに。恐る恐る中に入っていくが砦門の上にはゴブリンはいる。
なるほど。昨日の再戦をやらしてもらえるわけだ。それともゴブリンを倒させてレベルアップさせるのが嫌なのかな?どちらにしても楽だからいいか。
昨日来たそれらしい扉をあけると大剣ゴブリンが待ち構えていた。周りにゴブリンナイトはいるが参戦はしてこなさそう。
大剣ゴブリンは構えて昨日の続きを促す。僕もそれに応戦する。やはり早い剣速。避ける。受け流す。切りつける。ヒヤヒヤするが自分の技術が磨かれてる感じがする。受け流す際には剣の当たるところに集中しないと叩き折られそうだ。だか昨日何度か行ったおかげでなんとか凌げてる。
いい!楽しい。大剣を受けてしまうと見えないところから拳や蹴りが飛んでくる。もちろん受ければ吹っ飛ばされる。かなり痛いがレベルアップのおかげで耐えれている。とりあえずめげずに立ち向かいまくった。単体で実力負けしたのは初めてなので怖くもあったがそれ以上に大剣ゴブリンの技術の美しさに感嘆もした。ぜひ盗ませてもらいたい。かなり長く戦っていたと思う。レベルアップのおかげか体力もかなりあるのでなんとかなった。僕が慣れてきたのか、大剣ゴブリンが疲れたのか隙ができ始めた。即座に僕は隙をつき剣を持つ腕を切り飛ばした。勝った。そう思ってしまった。というかそれが大剣ゴブリンの狙いだったのだろう。一瞬の隙をついてゴブリンの残った腕に剣を持つ腕を掴まれてしまった。やばいと思った時には首に噛みつかれかけてたので何とか噛まれる位置を肩にズラす。
さすがだ。肉を切らせて骨を断つを実戦でやってきた。肩の筋肉はもちろん骨まで軋むようだ。慌てて殴ったり、蹴ったりして離そうとするが離れない。剣を離すまいと力を抜かないことに精一杯だ。これはヤバイ。魔力を纏ってなんとか耐えているが魔力が尽きれば僕の負け。つまり死だ。なんとかしなきゃ。
落ち着いて。暴れるよりも大きな一撃をそう思い左手に魔力を纏って大剣ゴブリンの胸に当てた。大剣ゴブリンも焦って力を入れてくる。
左手に纏った魔力をゴブリンに押し込むように爆発させるようにと意識して放とう。そう思い、左手に力を込める。
いけ!そうやって魔力を放った。
つもりだったがやっぱりでない。やっぱり僕に魔法は無理なんだ。と思ったが大剣ゴブリンから噛む力は失われた。驚愕の顔をしてこちらを見てる。あれ?魔力出た感じなかったんだけど…
自分の左手を確かめると大剣ゴブリンの胸を突き破ってました。魔法は使えないけど腕力が桁外れになっていたようで…大剣ゴブリンはすぐに光の粒子に変わって僕に吸収された。
なんだろ…不本意だ。ここでカッコ良く魔法使えるようになりたかったな。そういえばそんなに肩痛くなかったな。見れば軽く血が出てるくらい。
魔力を纏うと腕力がすごい上がるんだ。なんとなくわかってたけど基本的に纏うように防御にしか使わないからよくわかってなかった。
大剣ゴブリンが消えたところには丸くて赤い石が落ちてる。とりあえず拾おう。触るすっと消えた。僕に吸収された感じだ。やっぱりもう一回は出てこないだろうな。もっと練習したかったけど仕方ないか。
当たりを見回すと豪勢ゴブリンがまた叫んでる。こちらを指差してギャーギャー喚き立てているがゴブリンナイトはみんな腰が引けてる。僕も負ける気が全くしない。豪勢ゴブリンも引きつった顔で逃げていく。ゴブリンナイト達に囲まれて追えない。とりあえずゴブリンナイト達を倒そう。魔力使えばどれくらい筋力が上がるかの調整もしたいし。
魔力使えばかなり筋力が上がる。纏うのと違って叩き込むイメージだ。一太刀でゴブリンナイトを鎧ごと頭から下まで切って半分にすることがあっさりできた。それだけ切れるこの剣もすごいんだろうけど。
これはあんまり使いたくないな。また雑になりそうだ。とりあえず大剣ゴブリンとの戦闘を思い出すように丁寧にゴブリンナイトを倒してから豪勢ゴブリンの逃げた先に進んだ。
豪勢ゴブリンが逃げた先には台座に大きな水晶のようなものが置かれている部屋にきた。
ダンジョンコアとかかな?もしかして豪勢ゴブリンがここでレベルアップして強敵に?少しビビりながらもワクワクして進むと水晶を豪勢ゴブリンが持った。くるか!!
と思ったら、頭を下げて差し出してきた。なんかイヤーすいません。これで勘弁してください。的な感じでペコペコしてる。なにこれ?いいの?
なんだか倒す気にもならないので受け取ってみた。というか僕はゴブリンの駆逐が目的ではなくここから出たいだけなんだ。日にちも経っているだろうからどうしよ。みんなに心配かけているかもしれない。ちょっと目的を忘れていた。
豪勢ゴブリンを見て、ここから出たいということを伝えようと思った時、水晶が輝き、光が僕を包んだ。
気がついたらエレベーターの中。周りから声も聞こえて救助されるようだ。
あ、戻ってこれた。
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