キレられた
僕の声が合図となり、一気に距離を縮める。
オークの拳が飛んでくる。よける。凄い音してるな。早いというより力強い感じだ。避けると同時にこちらも攻撃する。軽く攻撃すると受けられるが、魔力を込めると避ける。いいセンスしてる。殴って蹴って避けては殴ってを繰り返す。凄い。こんなに避けられての初めてだ。魔物はどちらかというと受けて立つ感じが多いのに。集団で襲われた時に攻撃が当たらないことはあったけど、1対1でここまで避けられたのは初めてだ。
久しぶりのダンジョンだからかな。乗ってきた。魔力を体のあちこちに回す。もっと早く攻めないと。
「すごいな。本当にヒトか?なにかの高等種族とかではないのか?」
褒められてるのかな?人に見えないっていうのはけなされてるのかな?
「褒めてくれてるのかな?僕もここまで避けられたのは初めてだ。」
「称賛だよ。オマエと戦うのは非常に有意義だ」
「じゃあもっと力を出していこう!」
魔力を全身にまわして力とスピードを上げる。僕の拳がオークの腹部を捉えた。
ドン!
いい感じに下から入ったのでオークの体が浮く。耐えようとしたんだな。グッとこらえて殴り返してきた。
ゴン…ガッ…ガン ドンドン ガッ
あー痛い。極力固いところで受けているが痛いものは痛い。強いな。勝てるかわからないけど久しぶりのピンチだ。学ばせてもらおう。
僕もオークも薄っすらと笑いながら攻撃しあった。力をぶつけあったり、流すように受け流したり、体格が同じくらいなのでいろいろと学べるが学ばれてるような気もする。
かなりの時間続けたと思うがお互い決定打に欠けている感じだ。いい感じに追いこめるけど、いざという時に転移されてしまう。ここまで戦闘に上手く転移能力を使用してくるなんてすごいな。でも、何とかつかめないと!
あ、足元に隙が出来たので下から殴ると見せかけて足首を掴んでやった。掴むとしまったという顔してるがもう遅い。攻撃が当たる瞬間に消えるから、掴むしかない。
よし、そのままジャイアントスイング!効果があるかわからないけどぐるぐる回して飛ばしてやる!
「こら!メスに対してそれはないだろう!!」
「ん?あー」
何か怒ってる。女の子扱いでもして欲しかったのか?大丈夫!僕はオークに欲情しないから服がはだけても平気だよ。グルグルとかなりまわして壁に飛ばしてやった。
頭から突き刺さるように壁にぶつかった。ガラガラと落ちた岩から足だけ出てる。間抜けだ。
笑うのも失礼かと思いこらえた。デリカシーって大事だから。
「このやろう……」
あ、怒ってる。足を掴まれて投げられる方も悪いと思うけど。
「hounphehgaye」
ん?なにか言ったな。違う言語なのかな?とりあえず怒ってることはわかる。
おぉーなんか力みたいのが溢れ出してる。というかこれは集めてるのかな。どんどんオークに力が集まってる感じだ。やばいな。あいつの領域だからかどんどん集まる。
「この姿で戦えば楽しめるかと思っていたがもうヤメダ。」
どんどん体が大きくなる。外のオークのように体が赤くなる。すごいな…これは危ないかもしれない。
とりあえず、変身?が終わるまで待ってるのも怖し、そこら辺の石を投げる!
シュー ゴン!
おー命中!投げるのは得意だ。どんどん投げていく。凄い形相だ。怒ってる。そうはいっても変身なんて隙だらけなんだからそこを狙うのは定石だと思うよ?
ゴン…ガン ガン ゴン
かなり当てたなー。やっぱり倒れないか。体も完全に大きくなり、赤くなると石より硬いのだろう。石が砕けてしまう。もう意味ないなー。
「スコシクライマテ…タタカウノナラコノホウガチカラガデルカラナ」
大きくなって声帯が変わったためか声すら変わってる。体は赤く、筋肉も出まくってる。豚って本当に筋肉質なんだ。手から鉄槌が現れる。外のオークが持ってたのとは違って黒い鉄槌だ。めちゃくちゃ怒ってるし、やばそうだな。
「シネ」
一息吐くように言うと一気に正面から飛んできた。
鉄槌を上から振り下ろされた。床を蹴って避けた。地面に鉄槌が当たる。鉄槌を基点に地面に放射線状に亀裂が入る。こわっ!!あれ当たったら体が爆散しそうだな。オークは息をフッと吐きながら鉄槌を振って
くる。地面や壁に当たれば割れたり、崩れたり、割れた破片があちこちに飛ぶ。
「チョコマカト」
元々怒っていたのにさらにイライラしているようだ。力もスピードもあるのでかなり厄介だな。
考えてる間にもどんどんと攻撃してくる。やばい。追いつめられる。ぎりぎりで避けれているがまずい…
ドンッ
鉄槌の槌の部分の逆側が爆発して避けたはずの鉄槌が方向を変えて飛んできた。
うわっ!くそ!どうにか剣を鉄槌と体の間に入れて受ける。鉄と鉄がぶつかり、ギシャリと嫌な音が響く。
僕の体は大きく飛ばされて凄い勢いで壁に叩きつけられた。あぁ…息がしにくい…無理やり息を吐くと血が口からドバっとでた。内臓が傷ついたかな…爆散しなくてよかった。魔力を全身にまわしておいてよかった。
「ヤットアタッタナ」
二ヤッと笑ってる。本当怖い顔だ。痛いな。何とか立ち上がろうと剣を杖代わり立ち上がろうとする。
ピシ…ピシ…バキ
あ、折れた。光の粒子になって消えていく。僕に吸い込まれていく。武器が亡くなってしまった。ま、剣があってもあの鉄槌を受けるわけにも行かないけど。どうしよう…
「サテサテ、ソロソロオワリカナ?ダンジョンカラ、アイツラガヌケダセテイタライイナ?」
それはもう楽しそうに笑ってる。ムカつくなーもう勝った気でいる。
「まだまだ終わらないよ。」
僕もマネをしてダンジョンから魔力を集める。といってもアイツの領域なのでほとんど集まらないけど。ないよりはマシだろう。体内部をなんとか治しながら動けるようにはなった。
「ほう。『集』使用できるのか?」
「『集』?ってのはわからないけど魔力が足りないからこうするしかないだけだよ。とういうか流暢に話せるようになったね」
少しでも時間を稼ぎたい。無駄話にでも付き合ってもらいたい。
「この喉にもなれてきた。オマエは魔力だと思っているのか?」
「ん?魔力じゃないの?」
驚いた顔なのか呆れた顔なのかわからないけど不快な顔をされた。
「それは違う力だ。我らの世界の根源的な力。生命みたいなものだ」
よくわからないな。何いってるんだろう?魔法が使えないのは魔力じゃないからなのかな?
とりあえず、その力を集める。体の中をぐるぐる回して回復を促す。何にしてもあの鉄槌を攻略しなきゃいけないし、石を砕くような体を殴ってもダメージを与えれる気がしない。攻撃手段か……
仕方ないな…あれかー
「さて、いくら回復したところで素手では無理だろう。だがもう手加減もできない。さっさと死んでもらう。」
さっきまでの怒りはなく、冷静だ。ゆっくりと歩いて近づいてくる。出来るだけ使いたくなかったけど仕方ないな…
「さー死ね!」
オークが鉄槌を振り下ろしてくる。それを僕は真っ黒な大剣で受け止めた。
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