落ちた。
初めての投稿です。お手柔らかに。
予約投稿をしてるので文字数が多く見えるようです。しばらくは毎日更新予定です。
カタカタカタ…オフィスにパソコンのタイピング音が響く、仕事の遅い僕は人よりも長い時間を使わないと仕事が終わらない。残業は禁止されているため、一度帰ったと見せかけてから事務所に戻ってきて仕事を終わらせる。いつものことだ。上司に見つかれば怒られる。心配してくれるいい人だ。
上司に言われた仕事もひと段落ついたし、明日の準備も終えたし、今日は帰ろう。
僕は仕事ができない。就職して三年たったがみんなよりも要領が悪く、仕事を早くすることができない。そんな自分が嫌にもなるが、地道に仕事を覚え、出来ていくのも嫌いじゃない。人と折衝するよう仕事は苦手だか、みんなの役に立てる今の地味な事務仕事は好きだ。みんなも褒めてくれるし、頑張れる。少しずつ効率の良いやり方を見つけ、仕事量を増やしていくのも楽しい。その分、任される量も増えて大変だけど。
「はー疲れたー!今日も頑張った!帰ろー」
目頭を抑えながら独り言をいうと事務所に響く。今日は仕事の満足感もあるし、ぐっすり眠れそうだ。また少しだけ効率がよくなった。簡単に帰り仕度を済ませ、肩に鞄をかけ事務所から出て、オフィスビルのエレベーターに乗る。
もう残ってる人も少ないのだろうすぐにエレベーターは来て乗り込み、ぼっーと下がっていく数字を見ていた。
ガタン
という音と共にエレベーターが止り、真っ暗になった。え?壊れた?このオフィスビルは35階建と大きく、エレベーターももちろん大きい。一人暮らしの自分の部屋くらいあるんじゃないかと思う。複雑だ・・・新しい建物なのでこんなこと起きるとも思っていなかった。地震か何かなのかな?
「もしもーし エレベーターが止まりましたー」
エレベーターの非常ボタンを押しながら言った瞬間、ふわっとした浮遊感に襲われた
エレベーターがどんどん下に向かってる、いやこれ落ちてる。。
あー死んだ?
誰に向けた疑問かもわからず僕は意識を失った。
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僕、生きてる?
目を開ければエレベーターの中。何が起きたかはわからないけどケガもしていないようだ。ちょっと背中が痛いくらい。汚れているかはわからないが着ているスーツをなんとなくはたく。
真っ暗だなー。どうしよー。寝るの遅くなっちゃうなーお腹すいた。何気ない思考を巡らせながら自分を落ち着かせる。
エレベーターの中、電気は消えたまま。よかった、エレベーターが形を保ってくれたおかげで無事だったみたいだ。エレベーターもいつ崩れるかわからない。外にでなきゃ。とりあえずエレベーターのドアを開こうと押してみる。
んーあーなんとか開く。重いがゆっくりと開いて通れるくらいの隙間ができた。とりあえず外に出よう。
地下とかなのかなーそう思いながら隙間から身体を外に這い出した。
あれ??ここ地下?洞窟みたいだなー建物の下にこんなとこあるんだ。結構高さもあるし、目が暗闇になれてきたのか多少見える。石が剥き出しでゴツゴツしてる。ここで待ってたら助けがくるかなーどこからか出れるのかな?
エレベーターも壊れてるし、とりあえずいけるとこまで行ってみようかな?スマートフォンをポケットから出して画面を見る。
電波なし。もう日が変わっちゃうなー。終電間に合うかな。さすがに疲れたし、早く寝たい。スマートフォンのライトを起動させて前を照らしながら歩く。
地面が土だ。壁は石だ。なんだろ?地下じゃないのかなー洞窟?みたい。とりあえずどんどん歩いてみる。
結構歩いたがスマートフォンの電池が心もとない。鞄に充電器はあるけど肝心のコンセントなんてありそうにない。どうしよ?引き返そうか?そう思った時に前からうっすらと光が見えた。誰かいるのか、どこかにたどり着いたか、水の音がかすかに聞こえる。
光に近づいていくとドーム型の空間に出た。真ん中には小さな噴水のようなものがあり、そこだけふんわりとした光に包まれている。人工物だと思う。ここに人が来るのかなーとりあえず帰れそうでホッとした。
緊張してたのか喉が渇いてる。これ飲んでも大丈夫かな?いやー普通飲まないかー。とりあえず噴水の縁に座り休憩し、携帯を見る。相変わらず電波もないし、充電はあと30%ほど。疲れた、ちょっと休憩しよう。
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寝ちゃってた。座ったまま寝てたせいか首が痛い。んー少しスッキリしたかな?
ギャッギャ
何時だろ?喉が渇いた。
ギャッギャ
水飲むの怖いけど口に含んでみよう。んー大丈夫そうだけどお腹壊すと怖いから吐き出す。
ギャッギャ
なんだか元気がでた。頭もスッキリ!また歩けそうだ。
ギャッギャ
というかなんだろこの音?声?少しずつ大きくなってきている。何か近づいてきてるのかな?動物?
ギャッギャ
声と共に歩く音みたいなものが聞こえる。気のせいじゃないなー。何か近づいてくる。どうしよう。獰猛な動物とかだったら。
とりあえず声の聞こえる反対側、来た道のところに隠れて様子をみてみよう。すぐさま移動し、隠れる。噴水は明るいからこっちは見にくいはずだ。
来た。息を殺す。気配消してるつもり。
ギャッギャと言いながら2人?二匹?の子供くらいの大きさの・・・ゴブリンだ。
いきなりファンタジー。何これ?無理です。ここ都会です。地下にゴブリンって。
あー水飲んでる。おー元気になった。やっぱりあの水飲めるんだ。ファンタジー要素ありそうだな。
なんだろーこの状況。とりあえず家に帰りたい。
はーっと大きなため息をついてしまった。現実離れした状況が緊張感をなくしてしまったんだろ。
ゴブリン(仮)がこちらを見る。ギャッギャ言いながら話してる。こちらをもう一度見て近づいてくる。
どうしよう。これ倒すやつかな。武器は持ってないし勝てるのかな?あんな大きな生き物殺すとか出来るかな?
うわーくる。きたー。
とりあえず逃げよう。走ろう。携帯を取り出して焦りながらライトをつけようとする。中々つかない。やっぱり僕はトロい。嫌になる。
焦るなと自分に言い聞かせライトをつけた。よし!どこまで来てると思い振り向けば、すぐそこに。
うわっ!
ギャッ!
僕の声と同時にゴブリンも声を出した。ちょうどライトを近接で見たみたいだ。目を抑えて痛がっている。2匹目が痛がっているゴブリンにぶつかって2人でもつれて倒れた。
ラッキー!運がいい!逃げようかと走り出そうとしたが今がチャンスと思い振り返る。どうする?わからない。焦る!
1匹がすぐに起き上がってこっちへくる。
慌てた僕は足に何かに引っかかって尻もちをついてしまった。とっさに出した腕が掴まれる。
痛い。すごい力だ。ギリギリと締め付けられ、もう一つの手で殴られた。
くらっとした。やられる。とっさに近くにあった石を握り、掴まれてる方のゴブリンの腕を殴る。
ギャッギャ
なんとか手を離させることに成功した。
やばい。ゴブリンってそんなに弱くないんだ。力は僕よりありそうだ。
もう1匹も起き上がり、こちらに向かって来てる。腕を殴られたゴブリンも痛そうにしながらもこちらににじりよってくる。
やるしかない。このままじゃ殺される。
何か武器になるものはと思い鞄の中に手を入れる。
カッターナイフだ。カッターナイフを構えるがなかなかなへっぴり腰だと思う。人に刃物を向けたことなんて初めてだし。人じゃないか。
ゴブリンが飛び込んできた。腕を掴まれて噛まれた。
カッターナイフを上から振り下ろして顔を刺すがカッターナイフの刃が折れてしまった。
やばい痛い。なりふり構わずゴブリンの頭を掴み、力任せに腕ごと壁の石にゴブリンを叩きつける。腕からは鈍い痛みが響く。
「はなせ!はなせ!」
無我夢中で壁に何度も叩きつけると流石に効いたのかゴブリンが噛み付いていたのを離した。
安心する間も無く、もう一匹のゴブリンに顔を殴られた。反射的に蹴り、近くにあった石を掴み何度も殴りつけた。ゴブリンは避けようとするが腕を掴み逃がさない。体格は小さいので押さえつけて何度も殴りつけた。するとギャッという声とともにゴブリンが光の粒子になり、自分に吸収されていく。なんだこれ。倒したってことかな?
もう一匹はと思うともういなかった。知らない間に倒してたのかな?
腕が痛いし、口の中もきっと切れてる。こういうのってもうちょっといい感じで戦うもんじゃないのかな。
ゴブリンが消えた後には歯?牙?みたいなものがあった。ドロップ品ってやつ?とりあえず拾ってスボンのポケットに入れた。まるでゲームみたいだ。どっと疲れたような、力が張るような感覚が身体を襲う。とりあえず噴水まで戻ろう。傷口を洗わないと。
噴水に戻り、水を手ですくい、少し躊躇したがゴブリンも飲んでたし大丈夫だろうと飲む。うまい。ゴブリンに噛まれた腕もスーツを捲り上げ洗うとみるみる傷口が塞がっていく。ファンタジー要素なのか?痛みが引いていく。回復の泉?何にしても助かった。流石に痛すぎたし、ここで治すのは困難だったと思うし。
はー怖かったー。倒せてよかった。冷静になると恐怖が体を襲ってくる。怖かった。ゴブリンは全然弱くない。死ぬかと思った。ゴブリンの死体が残らないので殺したというような感覚がない。だからまだマシなのかな?血だらけの死体とかあれば気持ち悪くて無理かもしれない。
とりあえず落ち着いて状況を整理しよう。エレベーターが落ちたら洞窟でファンタジー。うん。わかんない。夢なのかな?リアルすぎる。めちゃくちゃいたかったし。とりあえず何か出来ることは?
スマートフォン見てみるが電池がもうない。もう日にちも変わってる。ファンタジーだからあれだ。ステータスだ!ゴブリン倒してレベル上がった的な!なんか吸収してたし。
「ステータスオープン!」
言ってみたが何も出てこない。ですよねー。原理わかんないもん。ドロップ品の原理もわからないけど。そのうち見る方法があるかもしれない。
こういう時はじっくり考えないと要領の悪い僕は失敗する。まずはどうするか。どうしたいか。帰りたい、帰れるのだろうか。よし!一度エレベーターまで戻ってみよう。エレベーターの方からここに来たんだし、そこから帰れるかもしれない。早速、僕はエレベーターの方に歩き出した。出来るだけ早くここを離れたい。さっきはなんとかなったけどあんなゴブリンと何度も戦っていたら死ぬかもしれない。
エレベーターのあったところについた。何もない。僕が出てきたはずのエレベーターは影も形もなかった。一本道だし間違えようがない。どうしよう。途方にくれるがここにいてまたゴブリンが来たら大変だ。とりあえず回復の泉のまで戻ろう。足取りは重いがなんとか回復の泉まで戻ってきた。
とりあえず水を飲み落ち着く。ファンタジー要素というか、この回復の泉で傷も治るのならここを拠点にレベル上げが必要だろう。そもそもレベルがあるかわからないが戦うことに慣れるだけでもマシだと思う。とりあえずゆっくりでもいいから強くならないと。考え過ぎても仕方ない。前に進む方法を探そう。
よし!ゆっくり進もう!ゴブリンから何か体に吸い取ってたし、強くなれるという前提で進んでみよう!まずはじっくり観察して安全な討伐方法を探してレベルを上げて、倒すことに余裕出来てから前に進もう。過剰なくらいのレベル上げを意識しないとちょっとしたことで死にそうだ。生きて帰りたい。こんなとこで死んだら田舎のお母さんに申し訳がたたない。
そうなるとここを進むのか。来た道とは違う方の道を見る。さっきよりそんなに暗くないのかな?少しだけ先が見える。
とりあえず次のゴブリンを見つけて慣れるまで観察した上で倒そう。目標は決まった。体も痛くないし、疲れていない。泉効果だと思う。すぐにでも動くべきだ。
ゆっくりと歩き、奥の道の前に立つ。やっぱりさっきよりは奥が見える。深呼吸を1つして僕はゆっくりと慎重に。ビビりながら進み始めた。
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