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私はもう妹じゃないんだよ

「なんだ、香緒起きてないじゃん。」



高校最初の日、私のアラームは予期せぬ声にその役割を取って代わられた。普段は全然起きられないのに、人は不思議なものでこういう時はすぐに思考を開始する。それはもちろん嬉しさからではない。幼馴染のお兄ちゃんが起こしに来てくれたのは、嬉しいこと?そんなわけない。悲しいことだらけだ。



「叶にい…なんでここにいるの」



あの時からずっと、叶にいと話していても、脳みその半分くらいは別のことでいっぱいになっていて。



「用がないと来ちゃいけないのかよ。反抗期長いなー」



そんな私の態度を叶にいは「反抗期」で処理している。もし本当に反抗期だったら、私が今抱えている感情は「早く帰れ」それだけだろう。ボサボサの髪を見られたくなかった、とか、寝てると知っていながらあっさり部屋に入られてしまったこととか、きっと無防備だった私の姿を見ても平常運転なことに傷ついたり、用がないのに来てくれて嬉しいってどこかで思っちゃったり。そんな感情を持て余すこともなかっただろう。



「朝練遅刻するよ、早く行きなよ」



こんな風にかわいくないことしか言えなくなっちゃった自分に呆れることもなかっただろう。とにかく、例に漏れず私はこのハイスペック幼馴染が大好きなのだ。うっかり、そしてあっさり恋に落ちてしまってからはもう、むしろこの距離を恨み続けている。近過ぎる距離に抗いたくて、なのに当たり前のように叶にいと同じ高校に入学して。



ずっとこんな風にぐちゃぐちゃな思いを抱えたままの高校生活になったらどうしよう。叶にいを追い出すように強引に閉めたドアを見ながら、そうゾッとする気持ちをため息に溶かし込んで、真新しい制服に袖を通した。そんな高校1年の朝だった。


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