ワールドフィナーレ〜光の勇者と血の魔法使い〜
血で描いた魔法陣はシャルルの詠唱に反応して鈍く光る。
敵のゴーレム群はその弱々しい光を踏み荒らし、レートバッカのパーティーへ襲いかかった。
「土に還りなさいませ!!リターンソイル!!」
シャルルの叫びに地面から大きな手のような羽根が生えて、ゴーレム群を地面の中へと押し潰した。
「シャルル!!」
レートバッカが負傷した右足を引きずりながら、魔力を放出し血液を大量に失って膝から崩れ落ちたシャルルへ駆け寄る。
「レートバッカ様、シャルルも少しはお役に立てましたか?」
紺碧の大きな瞳を潤ませ、シャルルがレートバッカの腕に支えられて呟く。
「ありがとう、シャルル。お前のおかげだ」
「……レーン……」
幼い頃に呼んでいた愛称をシャルルはつい、口にする。
「シャル……」
レートバッカも同じくシャルルを懐かしく呼んだ。
「オイオイ、お熱いこった!」
やれやれといったようにモズナが短剣をお手玉よろしく何本も空中で遊ばせる。
「まったく、そういうのは二人きりの時にしてください。メーワクです!」
盛大にため息をつきながらニイマイナーが神経質そうに中指で眼鏡の位置を直した。
「とか言っちゃってー!ニィニィはヤキモチ焼いてんだよねー!私もレートバッカに支えられた〜いって!」
長いツインテールをなびかせシュークリーがニイマイナーの後ろから抱きついた。
「ちょっ!!違いますから!訂正を要求する!」
二人のじゃれ合いを皆が笑いながら見る。
「シャルル、早く手当てを」
ニイマイナーがシュークリーを押しやり真顔で言った。
「でも……」
シャルルは逡巡した。
レートバッカに会いたい一心で無理矢理パーティーへ押しかけ、ずいぶんと足を引っ張ってきた自覚はあった。
今回はたまたま魔法がうまく発動してくれただけだ。
「……助かりました。ありがとう……」
ニイマイナーが小さな声で呟いた。
「え……」
「二度は言いませんよ!」
シャルルが戸惑っている間にニイマイナーはレートバッカの腕から彼女を引っ張り、斬り裂いた手のひらへ素早く癒しの魔力を貼り付けた。
「しばらく食事当番も洗濯当番もしないでください」
「………」
「分かりましたか!!!」
「は、はいー!!!」
荒れ果てた大地を潤すように、とても楽しそうな笑い声がいくつも響いていた。