朝の休憩室
「もうええわ、お腹いっぱいや」
「………」
スイコウ先輩は私がリュックの中から取り出したスマホを見た途端、目線をあさっての方向へ向け片手を上げた。
「そんな……」
私はザーッと血の気が引き、思わずスマホを落としそうになる。
「………」
スイコウ先輩は短くため息をつき、今日の清掃計画が印刷されたプリントを眺めていた。
「先輩」
「………」
「スイコウ先輩……」
私の声は震えてる。
スイコウ先輩に拒絶され、恐怖と不安で身体と思考が固まる。
でも、まだどこかで期待してるから、スイコウ先輩を呼ぶのだ。
「………」
「スイコウせんぱ……」
スイコウ先輩がプリントから私へ目を移動した。
音も無く私の胸に何かが貫通する。
スイコウ先輩は目だけで人を殺せるらしい。
「サトちゃんの書くもんは俺には訳がわからんのじゃ」
「………」
「訳がわからんもんを無理に読むのは苦痛でしかない。サトちゃんはエンタメバリバリの異世界魔法ラノベ、楽しく読めるんか?」
「………」
私は何も言い返せない。
「そーゆーことや。無理強いせんといて」
「………」
私はその日、そっからの記憶が全く思い出せない。
気がつくと家の玄関に、連日残業続きの両親が帰ってくるまで座り込んでいた。