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みんなが帰った後の休憩室
「なんや、不倫か?」
スイコウ先輩がスマホから目線を外さずに吐き捨てた。
「いや、最後の方はそれをイメージしてますが、テーマは第三者から眺める恋人、もしくは両思いな二人の笑顔です」
「は?」
「……この間、姪っ子と近所のお祭りに行ってきたんです。周りはカップルだらけで、私……」
「私?なんや?」
「妬んで嫉みました」
「………」
やっとスイコウ先輩がスマホから目線をあげた。
「私、こんな見た目やから恋人なんてできたことないし、誰かを好きになるなんて今までなかったから、別次元のことやって割り切ってたつもりでした。だから恋愛小説もファンタジー感覚で書いてて。でも、やっぱり幸せそうに笑い合う人達を見てたら、なんや寂しくて」
「……ほんまアホやな」
スイコウ先輩がスマホを私に返して休憩室から出て行こうとする。
「スイコウ先輩!」
私は思わず呼び止めてしまう。
「………」
「………」
スイコウ先輩が立ち止まり私を振り返るが、私は何も言えない。
「3点」
スイコウ先輩は真顔でそう言い残し、とうとう休憩室を出て行ってしまった。