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この異世界の救いよう  作者: 山葵たこぶつ
第一話 ハウネル王国騎士養成学校
37/182

37.ルール説明

 団長であるゴルドーの紹介により、席に着いたルアノとハウト。


 ルアノは受験者と聞いていた四人がわからず、ロイヤルガード三人に問いかけた。


「ねえ、なんであんなに沢山いるの? 確か受験者は四人でしょ?」


 ヴォルガは肩をすくめて答える。


「何のつもりかは、私にもわかりかねますね」


 そこでクレイスが口を挟んだ。


「しかし、受験者の四名は知った顔です」


「ホント? どれどれ?」


 思わず身を乗り出そうとしたルアノを、ヴォルガがさり気なく抑えた。


「ロイド氏の前に立つ一団で、桃色髪の少女と、黒髪の少年がセットでいるでしょう?」


 クレイスは苦笑しつつもルアノとハウトがわかるように解説する。


「あの二人と……。そして、銀髪で色黒の青年と、黒髪の少年の後ろにいるプラチナブロンドの娘です」


「詳しいじゃねえか」


 珍しいものでも見るように、ヴォルガはクレイスに言う。


「今年の学生って、どうなんだろ?」


「本来は見世物じゃないのに、テンション上がるよね」


 ルアノはハウトと二人で、わくわくと盛り上がる気持ちを、口だけに留めた。

 公衆の面前で化けの皮が剥がれたら、えらい事故が発生する。


「一番の有望株は、ウィルク・アルバーニアかと思われます」


「そうですね」


 クレイスの予想に、マーディラが追随した。


「え? 知ってるの? どの子?」


 ハウトは二人に顔を向けて尋ねた。


「黒髪の少年です」


 クレイスはきっぱりと言い切った。

「彼は()い。既に、現役の≪現身(うつしみ)≫と肩を並べる実力を持っています」


 ルアノは『へぇ』と先の少年を凝視する。

 確かに、気配は悪くない。有望株とクレイスに言わせるのも、少しは納得がいくような気がした。


「イケメンだ……、けど……」


 残念なものを見てしまったように、自らの語尾が濁っていくのをルアノは感じた。


「すっごいガラ悪い」


「確かに、……変ですね。あのコ、あんなに人相悪かった?」


 マーディラがルアノの言葉に同意。


「あのな……、ロイヤルガードに覚えられる学生って、どんなだよ?」


 取り残されたヴォルガが呟いた。



***



「ウィルク・アルバーニア、レティシア=ミゼル・ルケーノ、ガーラント、アルフィ・アルバーニア!」


 髭団長が受験者の四名を呼んだ。


「――以上、≪決戦(デュエル)≫参加者、前へ!」


 流と他三名は、同時に数歩前に出た。

 それにより、他のグレード5の生徒達と、明らかな線引きがなされてしまう。


「では、この≪決戦(デュエル)≫のルールを説明する」


 王族、そして近しい騎士で凝り固まった空気をものともせず、ロイドは口を開いた。


「参加者四名には、一対一の試合を、総当たり形式で行ってもらう。全六試合となる計算だ」


 流は内心で不利を感じた。

 流でも十分に立ち回れるような、特殊なゲーム性を求めていたが、まさかのリーグ戦である。


「試合を行う二名には、【竜の幕】と【剣の幕】に分かれてもらう。どちらがどちらに着くかは、試合の順番と同時に、くじ引きで決定する」


 ロイドは場内に置かれていた長机と巨大なホワイトボードに近づいた。


「では、何をもって勝負を決めるかを説明する。……が、その前に注意事項を言っておく。大事な身体だ。無法なデスマッチなどさせるわけにはいかない」


 ロイドは少し勿体をつけると、再び口を開いた。


「試合において、相手の騎士生命を脅かす致命傷を与えることを禁ずる。殺してしまうなど、もっての外だ。これを破った者は、即脱落。その場で残った者のみを勝者とする」


 違反行為について述べたロイドは、『では、どうやって勝負を決めるか』と続けた。


 ロイドは長机の上に置かれている、竜の紋章が刻まれた陶器と剣の紋章が刻まれた二つの陶器、それぞれに片手を突っ込む。

 そして、彼は陶器から手を出すと、左右の手それぞれに一つずつ小さなものを取り出した。


「そこからではよく見えまい。参加者だけでなく、グレード5の者達も、全員近づいて確認しろ」


 そのロイドの言葉を皮切りに、流を含む学生達はロイドの周りに集まった。


 ロイドが両手に持っているのは、バッジのようなものだった。

 それぞれ、竜を模したバッジと剣を模したバッジである。


「これは実際に≪剣竜(けんりゅう)現身(うつしみ)≫に支給される、栄えある徽章を“竜”と“剣”に分けたものだ。素材は勿論、本物の霊石でできている。そして、これらと同じものが、それぞれ竜の陶器と剣の陶器に十分な数だけ入っている。確認したまえ」


 周囲がどよめきながら、勝手がってに陶器に手を入れ、バッジを取り出した。


『すげーな』


 そんな声さえも聞こえる。

 おそらく、高価なものなのだろう。流自身も、自分の名にちなんで竜の徽章を取ってみる。指で摘ませるサイズの小さいバッチだ。竜を模した形をしていた。


「高いのか?」


 ぼそぼそ、と流はアルフィに確認した。


「霊石。“霊脈石(れいみゃくせき)”。そこら辺の石とは違って、命があるって言われてる高級品よ」


 アルフィはこっそりと答えてくれた。


「へぇ……」


 流は二つの陶器の横に置かれている、黒い箱に注目した。

 こちらには、竜と剣が合わさった、“剣竜(けんりゅう)”の紋章が刻まれている。箱にはくじ引きで使われるような、上面の中央に手が入るほどの大きさの穴が穿たれている。


 ――オイ。まさか。


「察しが良い者は気が付いたろう? 二名が試合を行った後、他の二名の参加者および観戦者の諸君には、『勝ったと思う方』に投票をしてもらう。つまり、竜の幕の者が勝ったと思うならば、竜の徽章を。剣の幕の者が勝ったと思うならば、剣の徽章を。それぞれ剣竜(けんりゅう)の紋章を持つ、そこの黒い箱に一つ入れるのだ。ただし、投票するかは任意だ。強制はしない」


「さっきから言ってる『観戦者』ってのは、俺達グレード5の生徒のことっすよね?」


 生徒の一人が手を挙げて質問した。デュナスだ。


「もちろん、その通りだ」


 とロイドが答える。


「諸君らグレード5の生徒は、計五十名だろう? 試合を行った二名を除くと、四十八名。つまり、一試合につき最大四十八の票を、かける六回戦分、参加者達に奪い合ってもらうわけだ」


 少しだが、生徒達はざわめき出した。

 自分達が審判になるということに、少なからず動揺しているようである。


「ただし、投票はその試合の白黒をつけるためのものではない。それぞれの参加者は、自分に入れられた票数を累積していくものとする。そして、参加者は他の参加者に対して、任意のタイミングで、任意の数の票を譲渡することができる」


 ――ピリッ、と流の頭で閃光が小さく弾けた。


「全六試合終了後に票の移動がなかった場合、≪決戦(デュエル)≫を終える。累計獲得票数が最下位の者が脱落。これは同率(タイ)を含む。そして、それ以外の残った者を、この≪決戦(デュエル)≫の勝者とする」


「だったら、票の譲渡なんてするわけないでしょ」


 アルフィは呟いた。


 ――何かが変だ。


 そう流は感じていた。

 わざわざ票の累計獲得票数など、計算する必要はない。各試合で投票により白黒をつけ、最も黒星が多い参加者を脱落させれば済む話だ。


「各参加者への投票結果や累計獲得票数は、このホワイトボードに映写機によって映し出される」


 ――ハイテクだな。


 流は映写機の存在に驚いたが、考えてみれば写真があるような世界だ。プロジェクターくらいあってもおかしくはない。

 流が投票箱を見ると、コードのようなものが映写機まで伸びている。


 ――ビリビリッ。


「一応釘を刺しておくか。徽章の取扱いは慎重にな。高級品だ。もし破損した場合、その徽章は票としてカウントしない。まさかないとは思うが、くすねても後でバレるぞ」


 そして最後に、とロイドは付け加えた。


「試合には十秒(・・)の制限時間を設ける」


 その瞬間、大きなどよめきが生じた。

 一体どうしたのか、流にはわからない。


「冗談でしょ……」


 と小さく悪態を吐いたアルフィ。


「たったの十秒で、どうやって勝負決めろっていうの?」


 ――いや、俺はいつもお前に十秒保たずにやられてるんだが。


 そう考えたところで、流は自分の認識が、他の参加者と大きくズレていることを自覚した。


 流を除く参加者達の実力は、かなり拮抗している。


『相手の騎士生命を脅かす致命傷を与えることを禁ずる』


 とロイドは言っていた。


 この縛りが影響し、参加者は思い切り相手に打ち込むことができないのか。

 十秒は、勝敗を分けるのに短すぎるのだ。


 流は考えを改めた。この≪決戦(デュエル)≫、単純に実力を計る勝負ではない。

 ひょっとすると、流は上位三名に食い込めるかもしれない。





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