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繋がりの証のようで

 この家の書庫には資料になるような本はもちろん、小説まで置いてあった。読んでいいかディルトさんに聞くと、快く承諾してくれたので、時間のあるときは書庫に行くことが増えた。


 今日はついつい長居してしまって、自分の部屋に帰る頃には夜も遅くなっていた。


「……?」


 廊下を歩いていると、部屋の一つから明かりがもれていた。あそこはルークの部屋だ。ドアを閉め忘れているらしい。


 声くらいはかけておいた方がいいだろうか。開けっ放しではすきま風も入るかもしれない。


「ルーク? ドア……」


 開けっ放しだよという言葉が続かなかった。机に向かって何か作業をしているルークの横顔が、あまりにも真剣だったから。

 もっと見ていたくて、私は近づいた。机の上には、私にはよくわからない道具が散らかっている。それらをルークは迷いなく手に取り使う。その真ん中にあるのは、砂時計だった。


「……? 君、いたの?」

「あ、ごめんね勝手に入って。ドア開いてたから声かけようと思ったんだけど」


 思わず見惚れたことは、恥ずかしくて言えないけど。


「えっと、何してたの?」


 出ていけと言われないのは意外だったから、ここぞとばかりに質問をする。


「だから言ったでしょ、細工物作りの練習。これは先生が君にあげた時計の細工の模倣」

「見ててもいい?」

「……いいよ」


 これもまた意外なことだった。いつものルークからは考えられない程優しい。それとも、もしかして本当はこんなふうだったのかな。


 勝手に座りなよと言われ、部屋にあった椅子を引っ張ってきて机の近く、ルークの作業が見える位置に陣取る。


 邪魔をしないように黙って様子を眺めているうちに、しばらくの時間が過ぎた。


「ま、これはこんなもんかな」


 くるんとルークが砂時計をひっくり返す。カラフルな砂が落ちていく。虹が砂になって、ガラスの中を落ちていくようだった。

 全ての砂が落ちきると、ぽひゅんと私がディルトさんにもらった時計のものより小さな花火が咲いた。


「やっぱりすごい……」

「細工物、気に入ったの?」

「うん」


 そう答えると、ルークは何かを考え込んだ。そして、私の方に目を向ける。正確には私の髪に結ばれたリボンに。


「それ、細工してあげようか」

「いいの!?」


 視線を逸らしながら、声が大きいと注意された。


「よくなきゃ言わない。ほんと、君って馬鹿」


 むっとしたけど、細工をしてくれるうれしさの方が勝った。リボンをほどいて渡す。

 受け取って、ルークは少し離れたところにあった道具箱から、針と透明な糸を取り出す。何か魔法をかけて、リボンを縫い始めた。

 透明な糸は、一見するとそこにあることに気づかない。そんな糸を、ルークは丁寧に縫っていく。その手つきに、また目を奪われる。


「……上出来、かな」


 出来上がったリボンは、光に透かすと糸がきらきら輝いた。華やかではないけど、これもまた綺麗だ。

 どんな仕掛けがされているんだろう。考えるだけでとても楽しみになる。


「ルーク、ありが……っと?」


 ぼすんと肩に重み。ルークが私の方に倒れかかってきたのだった。穏やかに寝息をたてている。


 もう夜もだいぶ遅い上、細かい作業をしていたから疲れたのかもしれない。ディルトさんが、ルークがあまり寝ていないと言っていたのも思い出した。


「よい、しょっと」


 なんとか支えて、近くにあるベッドまで運ぶ。伸長の差から、半ば引きずるような状態になってしまったのは許してほしい。


「おやすみ、ルーク」


 そっと囁き、私は部屋を後にした。


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