違っていても遠くない
午後になると、私はすることがなくなる。反対に、ディルトさんとルークは庭に出る。どうやら、外で何か実験のようなことをしているらしい。それは家の中でしていることもあって、私はよく見に行くようになっていた。
「興味があるのか? 子うさぎちゃん」
「はい」
ディルトさんは、先日私にくれたような細工物を作っているらしい。こちらの世界には魔法使いが多いらしいが、このようなことができる人はそういないとルークが言っていた。
「ルークは何してるの?」
さっきからずっと、黙って立っているばかりのルークに問いかける。
「……護衛」
「僕は別に構わないと言ったんだが、聞かなくてな」
細工物を作るというのは、それだけ危険な仕事なのだろうか。外に出るような日も、家からはあまり離れていない。つまり、何かトラブルが起こってもそう広い範囲が巻き込まれるわけではないということなのだろうと認識していた。
「作れる人が少ないって言ったよね? 完成品がそれだけ高値で売れるってことだよ」
言外に、『そんなことにも気づけないわけ、バカなの?』とでも言われている気がする。被害妄想だろうか。
しかし、確かにルークの言ったことには一理ある。あんなに綺麗なものが数が少ないとなれば、奪い取って高値で売りさばこうとする人が出てきてもおかしくはないのかもしれない。
「実際、前にも強盗が来たことがあるし」
「えっ」
それは大丈夫だったのだろうか。過去のこととわかっていても心配になる。
「すぐに叩きのめしてやったよ。俺だって魔法使いだし、先生はもっと強いし」
『魔法』や『魔法使い』は、私のいた世界では物語の中の存在だった。でもここでは、ディルトさんもルークも自然と口にする言葉だ。そんなとき、私はここが別世界だということを実感する。
それでも居心地がいい。だけど、帰らなきゃ。ここのままここにいるなんて、許されることじゃない。
「……?」
今私、何を考えてたの?
「それに俺も最近、細工物を作り始めてるんだ」
「興味を持ってくれたのはうれしいのだが、睡眠時間まで削るのは……な。君からも何か言って……依乃理?」
「……え? あ、はい……」
何だったんだろう。思い出そうとすると、思考に霧がかかったかのようにぼんやりする。
「依乃理? どうしたんだ、急にぼんやりして」
「……大丈夫なの」
二人に声をかけられると、思い出せはしないものの頭の中の霧は晴れた。
「大丈夫です。ちょっと考え込んじゃっただけで」
ならよかったと言われれば、あまり心配をかけたくないと思う。だけど、気にかけてくれるのはうれしい。
それだけ、近づけたのだとわかるから。




