手伝い申し出
ディルトさんを手伝い、朝食の準備が終わった頃。見計らったかのようなタイミングで、ルークが下りてきた。おそらくディルトさんが時間を調節して準備を始めたからだろう。
三人での朝食が終わり、片付けまで終われば、私はもうすることがなくなってしまった。
「あの、私何か他に手伝えることとかってありますか? 居候なのに何もしないって、ディルトさんに悪いです」
「ふむ、そうだな……。そもそも、午前はすることがあまりなくてな。好きに過ごしても構わないのだが」
そうは言ってもらっても、お世話になっているのだから何かはしたい。甘えてばかりというのも、性に合わないし肩身も狭い。
「えっと。そ、掃除とか! 家事とかも得意とは言えませんけど……いないよりは、いいくらいの微力ですが……」
「気持ちはわかった。では、書庫の整理を頼もうか」
それを聞くと反射的にぴん! と何かが反応した。手伝い発見センサーだろうか。
「急ぎとは言わないし、本の量も多い。かなりかかるだろうが、それでもいいか?」
「がんばりますっ!」
頼まれたのがうれしくて、気合いの入った返事になってしまった。ディルトさんが少々気圧されるほど。そばで聞いていたルークも私の大きめな声にびくっとなっていた。二人ともごめんなさい。
でも、整理などのコツコツ進める地道な作業は割と得意だ。少なくとも、家事よりは自信がある。うん、大丈夫だろう。
「うむ、頼もしいな」
期待してもらったなら、応えたい。だが、そんな私の気合いはルークの一言にあっさり崩れた。
「本棚、けっこう高いけど。あんたじゃ届かないんじゃない?」
「!」
それは考えていなかった。この家の持ち主であるディルトさんは、私が見上げるほどの長身だ。本棚が彼に合った大きさなら、私ではきっと届かないという可能性は高い。
「踏み台とかって、ありますか……?」
おそるおそる、ディルトさんにそう聞いてみる。
「…………。無理をすることはない。高いところは、後ですればいいさ」
沈黙、からの笑顔でのその返答。
それはつまり、この家に踏み台なんてものはないし、本棚もだいぶ高いということを示していた。ああ……。
いや、背伸びでもすればなんとかなるかもしれない。それに、実際に見てみないことには判断できない。もしかしたら、届く高さということもあるだろう。
鉄壁のディルトさんの穏やかな笑顔から、可能性は限りなく低そうなことがうかがえるが。
「任されたからには、精一杯やらせていただきます!」
「そうだな、それがいい。ではルーク、依乃理を書庫に案内してあげなさい」
「昨日、ちゃんと場所教えたじゃないですか。まあ、いいですけど……。ほら、こっち」
不本意そうだが、決して嫌そうな様子ではなさそうだと思ったのは、都合がいい感想だろうか。
ルークは、ディルトさんの言うことに多少は異論を唱えるも、最終的には逆らわずに聞くのだ。家主と居候なのだし、当然のことなのかもしれないが。そこには、確かな信頼関係があったのだ。
しかし、ルークがディルトさんに指示でもされない限り、私に話しかけてもくれないのは、なんとなく寂しい気がした。
「何ぼーっとしてるの、置いていくよ?」
「す、すぐ行くっ」
そう言いつつ、待っていてくれるほどには、嫌われていないと思いたい。




