黒き想いは木の上に
番外編枠つくったのでこっちに移植です
中身はいじってません(`・ω・´)キリッ
1月下旬から2月。
この時期になるとクエストカウンターが女子で賑わってくる。
理由は何となく想像出来るとは思うが、ここから片道1日程の場所に巨大な樹海、シエロスカ樹海がある。その中心にそびえ立つ塔の様な大樹の中にある実。それが彼女達の目的だ。
その樹海の中心にそびえ立つ1000mを超える、世界樹と呼ばれている大樹の600m程の地点には何故か最上質のチョコが現れる。理由は気にするな。
で、そのチョコを求めて女子達はダンジョンと化した大樹の内部を登っていく訳だな。
男子は参加不可…なんてことはなく、誰でもクエストに行くことが可能だ。吊り橋効果とか狙っているんじゃないのか?そもそも吊り橋効果なんてモノに頼っている時点でアウトじゃないのかとは思うがなそもそも自分で作って渡すから意味があるんじゃないのかまぁ市販でもいいという人もいるのだろうが折角なら気持ちを込めて欲しいとは思わないのか苦労してわざわざ取りに行くというのもそれはそれでいいんだろうがそのまま渡すのは無いと俺は思うあくまで最高の材料という位置付けとしておいた方がいいと思うしというか_______
「…ロ、クロ?聞いてますか?」
「いや、現実逃避をしていた」
「何それ、僕たちと行くのは嫌なのかな?」
「そうなんですか!?先輩酷いです!」
「折角頼みに来てあげたのに、その反応は酷いんじゃないのかなー?」
_______何故俺の目の前にリリア、フィリム、アリィ、マーベルが並んでいるのだろう。
「……何故俺なんだ?」
「私の護衛でしょう?」「クロ君が1番頼りになるから、かな?」「私のマスターですからね!」「気になる男の子だもん★」
本当に逃げたいんだが。皆笑顔が怖いぞ?特にリリアとマーベル。お前らわざとやっているだろう!?
「はぁ……仕方が無い、か」
その光景に受付の職員すら引き気味で、いつもは嫉妬の目を向けてくる男子生徒諸君すらも同情の目を向けてくる中(レニアスに「死ぬなよ」とか言われたし)、俺達は樹海へと旅立った。
……不安しか無いんだが。
そして2日間、飛行機は使わず、船や電車で樹海へと向かう。飛行機に乗らない理由は、モンスターに襲われたり、何かあると簡単に落ちるから。落ちるとかなり危険だからな。止まっても歩いて行ける陸地の方がいいだろうという判断だ。
今は電車に乗って林の中を走っているところ。
「暇だね〜」
「そうですか?景色を見てるだけでも楽しいですよ」
「確かにアリィちゃんは尻尾揺らしてホントに楽しそうだねー、えい」
「ひゃぁぁ!?尻尾握らないでくださいぃ!」
「他にも人がいるんですから、もう少し静かにして下さい」
「そだよー。私眠いんだから」
「それより、普通に獣人ってバラしていいのか?」
『あ……』
おい、お前らそれ位考えておけよ。馬鹿なのか?……いや、馬鹿か。
それ以前にスキル校の生徒だとバレてもいいのか?
何て思うのは考え過ぎ何だろうか。
「ふぁ〜〜。まぁ、この車両にいるのウチの生徒だけだしいいんじゃないかなぁ?」
「そう思っていると、街中でも簡単にボロが出るぞ」
「敵を騙すならまず味方からってね」
「フィリムさん、それちょっと違うと思います」
「え?ホント?」
「でさー。さっきも言ったケド、もうちょい静かにしてくれないかな?」
「あ、ごめんなさい」
何故かそこでアリィが謝る。言われてるのはフィリムの方だと思うのだが……当の本人は知らん顔だし。
「じゃあ私はクロ君に膝枕してもらうから★おやすみー」
「何それズルイ!」
「わ、私も膝枕してもらいたいですっ!」
「貴方達は…はぁ。クロ、後で私にもお願いします」
「さらっと言うな。誰にもやらないからな」
「えぇ〜ダメなの?」
「ダメだ」
「いいじゃないの〜」
「……やらないからな」
2つの意味で。
「えー、ノリ悪いなぁ」
「そうだよ!やってあげなよ!」
フィリムとマーベルが揃うと危険だな。変に息が合っていてタチが悪い。
この旅、胃が痛くなりそうだ。
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そんな事もあったが、次の日の昼。無事に樹海の中心部。大樹もとい世界樹の下へと到着。
樹海の道中でも色々あったのだが割愛。
「さぁて!久しぶりのダンジョン行ってみよーか!」
「フィリムさんは本当に元気ですね」
「遠足の時に無駄にテンション高くて歩いてるうちに静かになっていくタイプだな」
「そういう子って虐め甲斐があるんだよねぇ。始めは煩いのに段々静かになってさ★」
「虐め甲斐、ですか……」
「アリィさん。マーベルさんの言っている事は間に受けない方がいいですよ」
「そうそう。私は他の人とズレてるからね★」
自覚があるなら直せよ。開き直るな。
そう思っているとこちらを向いたマーベルが笑った。
「やだよー。自分に嘘はつきたくないもんね」
「心を読むな。怖いわ」
「相手が何考えてるか解る時は解るんだよね★」
何とも物騒な特技だ。使えるのがマーベルというのが更に危険な気がする。
「それはともかく、他の生徒の邪魔になりますし、進みましょうか」
そう言って世界樹の中へと入って行く。
入口は幹にある巨大な穴。そこをくぐった瞬間、外とは違う世界に来たような感覚に襲われる。これはダンジョン特有の魔力の所為らしいが、気が引き締まるので嫌いではない。
ちなみに此処は俺達のいる国でもかなり有名なダンジョンであり、チョコ以外にも希少な植物やモンスターが生息しているので冒険者なら必ず訪れるであろうダンジョンだ。
フロアは全50階層あり、15階迄は直径200m程の大広間に植物やモンスターがいる。ここはDランクのパーティでも行けるレベルなのだが、16階からは枝の中にもダンジョンが広がり、上の階に登るほどアリの巣以上に複雑なダンジョンとなっていく。更にモンスターも増え、食獣植物等も生息している為15階とは打って変わって少々危険なダンジョンとなっている。
1階層の高さは20m程で、今回の目的であるチョコは600m地点。つまり、30階にあるわけだ。このダンジョンは15階層毎に難易度が上がっていき、1〜15はDランク。16〜30迄はCランク。31〜45迄はBランク。46〜はAランクという入場ランク制限がある。
つまり、このクエストはBランクでマーベルとアリィは来れない筈なのだが、一時的にパーティを組み、リリア達について行く、という形で参加している。2年でBランクなのは俺とリリアだけなので、勿論周りは全員先輩。居づらい事この上ない。
1階はモンスターはおらず、薬草などの良く見るが使える植物と、中央には養分や水分を運ぶ維管束が詰まっている物凄く固い柱がある。
「先輩。あのトンネルは何ですか?」
そう質問してくるアリィの指す先には直径3m程の穴。
「あぁ。あれは地下洞窟に繋がっているんだ。ランク制限はB。それに魔族も生息している危険地帯だな」
「そんな所にも繋がっているんですね、先輩は行ったことあるんですか?」
「1度だけな。良質な鉱石が取れるんだが、モンスターも魔族もなかなか厄介だったからそれ以降は言っていないし、行ったのが去年の11月頃だったからそれ以降行く機会も無かったしな」
地下洞窟はダンジョンではないが、かなり危険とある意味有名だ。
マグマが流れているし、生息しているモンスターも魔族もタチの悪い技を使ってくる。その分得られる素材や鉱石等は高価だが、Aランクになるまで行きたくはない。
「あの時は大変でしたからね」
「僕はまだ行ったことないなぁ。何がいたの?」
「マグマに覆われてまともに殴れない上にマグマを飛び散らすモンスターや無駄に素早い巨大コウモリ」
「トゲトゲな体で特攻してくる魔族もいましたね」
「……うわぁ」
「凄い、ですね」
「リリアが敵を止めている間に即効で必要な鉱石を集めたあとは飛んで逃げたな」
「もう行きたくはないですね。行くとしても水属性の方が欲しい所です」
「……私が行くのはまだ早いみたいですね」
「だね」
そんな話をしながら2階へと続く階段を登っていった。
2階にはEランクの初心者向けモンスターであるウルフの群れが幾つか見える。ウルフは文字通り凶暴で少し大きな狼、と言えば解ると思う。
次の階への階段は反対側にあるので戦闘は避けれないとは思うが、群れると危険と言われるウルフでも所詮はEランク。難無く3階へと進んでいく。
3階ではEランクのウルフ&ブルを。4階ではEランクの植物型モンスター、ラーフェンを撃破し先へ進んで行く。
今回は俺とアリィが突っ込み、周りをリリアとフィリムが抑えマーベルが倒していく。という形で、なかなかバランスがいいと思う。
そしてDランクのゴブリンやハイウルフを倒し、15階にたどり着いた。
「大きいですね…」
「そうか?2m程度だろう?」
「アーマードゴブリン勢揃いですね」
「あれ?ここってまだDランクなんだよね?」
「殺やり甲斐がありそうだね★」
世界樹ダンジョンでは15階層毎にボスフロアがある。
これに勝てるなら安心して次に行ける。という強さのモンスターが出てくるのだが、16階層からはダンジョンが複雑になることもありなかなか強いモンスターが出てくるのだ。
今目の前にいるのはゴブリン。
しかし、ただのゴブリンではなく、鎧を着けているゴブリンだ。鎧を着けただけのハイゴブリン。更に剣をもったソードゴブリン。盾を持ったシールドゴブリン。弓を持ったボウゴブリンの4種でリリアも言っていたようにまとめてアーマードゴブリンと呼ばれている。
アーマードゴブリンはCランクだが数が多い事が多い為油断出来ないモンスターだ。Aランク冒険者が油断してやられるケースも中々多いしな。
「クロ。あそこ変じゃないですか?」
そう言って指した場所にはゴブリンが大量に群がっていた。それにゴブリンが倒れていくのも確認できる。
「戦闘中か!」
「大変じゃないですか!」
群れの中に飛び込み、周囲のゴブリンを蹴散らしていく。
緑色の肉塊の中心に居たのは本校の生徒と思われる男女のペア。女子生徒の方は脚を怪我しており、男子生徒が庇いながら戦っている様だ。
「副会長!?」
「話は後だ。下がっていろ」
「あ、はい!」
生徒を下がらせまた暴れようと振り向くと、残念な事にマーベル、アリィが粗方倒してしまっていた。てか速いな。
「あの、ありがとうございます」
「気にするな。動けるか?」
「俺は大丈夫ですけど……」
そう言って向くのは彼女の方向。
が、彼女の傷はフィリムが応急処置をしていた様で支えがあれば何とか動けそうだ。
本当に万能な先輩だな。
「大丈夫です。何とか動けます」
強がってはいるのだろうが、無理をしている様には見えないから、降りるだけなら大丈夫そうか。
「今回は諦めて降りた方が良いだろうな」
「そう、ですよね」
「気にしないで。さ、帰ろっか」
「うん」
「気を付けて下さいね」
「ドンマイだよ!」
「ありがとうございました!」
そんな事もあったが、無事15階層突破。
ここまでは問題無く進めているから大丈夫だろう。
「ここからが本番だ。今迄とは違うから油断するなよ」
『はい!』
階段を登ると数人の女子生徒が立ち往生していた。
「どうしたんですか?」
「あっ、会長も来てたんですね。実は…」
話をまとめると、16階層に来るのが初めてで思っていたよりも複雑なダンジョンに驚き、進むのを躊躇っていた。という事らしい。
「なら僕達と一緒に行く?」
「いいんですか?」
「大丈夫だよ。何かあっても副会長様が守ってくれるからね!」
「そうだね、クロ君強いから★」
「おいおい…」
からかうな。そしてそこの女子達よ。期待に満ちたその目は何なんだ?ここから戦闘は俺だけとかは嫌だぞ?
「だ、大丈夫です!私も守りますから!」
「あぁ。ありがとう」
「はいっ!」
尻尾を振りながらやる気満々な様子のアリィ。変なのに囲まれている中、こういう健気な子がいると落ち着くな。
「クロ、何か失礼な事を考えていませんか?」
「いや?そんな事はないぞ」
「そうですか」
勘良すぎだろう!
殆ど表情を変えていないのに何故気付くのかは解らないが、リリアは確信を持っていそうだからな。今後気を付けていこう。
こんな事をしていると、女子生徒の1人が聞いてきた。
「あのぉ。いつもこんな感じなんですか?」
「そうだな。こんな感じだ」
「だね〜」
「えぇ。こんな感じです」
「そ、そうなんですね」
そう言うと一瞬同情の視線を向けて来た気がしたが、気の所為。だよな?
「それはいいとして、そろそろ行くぞ」
「道分かるんですか?」
「いや。だが進んでみない事には何も始まらないだろう」
「お?名言かな?」
「煩い」
そして女子生徒3名を加えた俺達はダンジョンを進んで行く。
歩きながら軽く自己紹介をした所、しっかり者といった感じの生徒がフォリア。ギャルの様に見えて意外とそうでもないのがラメット。口数が少ない不思議ちゃんがトロンと言うらしい。更に全員3年生と先輩だった。
今はその先輩方とリリア達が女子トークを始めたので、俺と、何故かトロンが前に出て様子見をしている。
「話して来なくていいのか?」
「面倒」
「……」
会話がズバッと断ち切られる。
…いや、後ろの会話に混ざるのが面倒ということは無理に話す必要も無いか。
そう判断し歩を進めていく。
少し迷いながらも雑魚モンスターを蹴散らし、謎の植物も切り裂き、希少な植物を採取しながら進む事約7時間(休憩多め)。ダンジョン特有の苔が淡い光を放っている頃、大広間に壁と見間違える程巨大な扉を発見。
その扉は不思議な紋様が刻まれ、所々に苔が生えており、神秘的な雰囲気を醸し出している。
「綺麗…」
「あぁ。そうだな」
口数は少なくてもちゃんと感動はするんだな。
「む。何か失礼」
「そんな事はないぞ?」
「そう」
読心術2人目!?
何故解るんだ……だが"何か"だからセーフだ。多分な。
俺がそんな苦悩を抱えている事など知る由もなく、後ろから来た女子会中のメンバーも到着。
「うわ何これ凄っ!」
「幻想的ですね」
「まさにファンタジーって感じだね〜」
「凄い…」
「わぁ……」
「綺麗だねぇ」
と、それぞれ感嘆の声をあげる。
「この奥が30階層のボス部屋だろうな。他の生徒達も此処で休んで明日の朝突入する様だし、今日は此処で寝るか」
「えぇ〜。ホントに?」
「ココで寝るのぉ?」
「ダンジョンですからね、この位当たり前ですよ」
「そうそう。この位で泣き言言ってどうするの」
「諦めなよ。用意はして来たでしょ?」
「まぁいいけどさ〜。じゃ、私はクロ君の横ね★」
「遠慮しておく」
寝てる時に何をされるかわからないしな。起きたら縛られていた〜なんて事はゴメンだ。
「はいはい。そういうのはいいですから」
「おやすみなさ〜い」
「速い!」
「おやすみ」
「皆早いよ!?」
「疲れたんだろう。お前も寝ろ」
「う〜。おやすみ」
因みに俺は争奪戦が始まる前に見張りという名目で逃げた。仕事はちゃんとやるから問題はない。
次の日。
日の出前に起きて寝袋を畳んでいるとフォリアが起きてきた。
「悪い。起こしたか?」
「いえ、早起きなんです」
そう言ってフォリアも寝袋を畳む。
「寒いですね」
「朝だからな。また寝てもいいんじゃないか?」
「私。2度寝って出来ないんですよね。副会長さんは寝ないんですか?」
「あぁ。早起きは三文の得と言うしな」
「真面目なんですね」
そう言うフォリアの顔は楽しそうだ。
と、そこでリリアが起きた。
「おはようございます。2人共早いですね」
「おはよう」
「おはようございます」
急にリリアの表情がとても嬉しそうになる。何か、凄く嫌な予感がするんだが。
「すいません。邪魔をしてしまいましたか?」
やっぱりな。イタズラ好きというか何と言うか……
「ふぇ?あ、いや。そ、そんな事はないですよ?」
「本当ですか?」
「本当ですよっ」
「ふふっ。顔を真っ赤にして可愛いですね♪」
「……か、からかわないで下さいよ」
そして、徐々に他の生徒、冒険者達も目を覚ましてきた。
こんなイベントに来るのは生徒だけかと思っていたのだが、意外と大人の冒険者もいるものだな。
ここにいるのは全員合わせて約30人程度。こんなに人がいてもチョコは足りるのだろうか?
そこで1人の冒険者が声をあげる。見たところ20代半ばといった所か。スキルは持っているのだろうか?
「ここにいる皆さん!今からボスに挑みますが、チョコはちゃんと山分けしますので勝手に持っていかないようにしてくださいねー!」
『はーい!』
言い方というか、ノリがまるで遠足だな。
それとわざわざこういう事を言うという事はやはり昔に何かあったのか。
「それでは行きます!」
女性冒険者の掛け声と共に扉が開かれる。
この奥にチョコが実っている訳か。どれほど巨大か楽しみだ。
_______と、思っていた俺が馬鹿だった。
扉が開かれた瞬間に触手が襲って来て無理矢理戦闘開始。これは予想範囲内だが、その触手の持ち主が完全に予想を超えていた。
冒険者と一部の生徒は分かっていたのか攻撃を始めるが、知らなかった生徒は暫く固まっていた。
そりゃあ、普通チョコがモンスターだとは思わないだろう?
体調10mを軽く超える植物型のボスモンスターの背中や尻尾等様々な場所に2m程の花が咲いており、その中に目的のチョコが入っている。
「皆さん!ぼーっと立ってないで行きますよ!」
「あ、うん!」
「あの花を取ればいいのかな?」
「知らん!倒した後で剥ぎ取ればいいだろう!」
「チョコ。倒す」
「チョコ傷付けちゃダメだよぉ?!」
「解ってる」
「ほら!喋ってないで行くよ!」
取り敢えず俺は触手を切り落としつつ接近だな。
そう判断し襲い来る触手(蔓つる)を切り落として行く。
他のメンバーもそれぞれ攻撃を開始。
蔓を切ったり、避けたり、駆け登ったり…って凄いな!
さて、俺も負けていられないな!
空を飛びボスの正面まで接近して槍に換装。そのまま突進すべく姿勢を落とす。
「おぉっ!?」
するといきなり口らしき場所から黒い液体が発射される。チョコとはな…
何とかチョコを躱し大人しく脚を攻めに行く。
蔓に咲いている花を落としながら降下しまた蔓を切っていく。
その頃反対側はリリア、マーベルの範囲攻撃で無双していたらしい。蔓まとめて切ったり、縛ったり。燃やしている人もいたそうだ。
そんなことを続けること20分。蔓を全て切り落とし、胸(?)の辺りの核を破壊する事でやっと動きが止まった。
後はチョコを回収し配っていくのだが、大人の方々が公平に山分けするのに手間取っていたらしく30分程掛かったが、全員納得できた様で安心した。勿論俺は貰っていないが。
「さて、帰りましょうか」
「そうだな。まだ上に行きたいのなら付き合うが」
「疲れたし、大人しく帰ろ〜」
「そうだねぇ…」
「帰って調理」
「あはは…そう言えばそうだったね」
今の言い方的にフォリアは料理が苦手なようだ。
「炭にしないように」
「そこまで酷くないよ!?」
「酷いってとこは否定しないんだね〜」
「あ、いや酷くは…ない……と、思う」
その時全員の心の声が一致した気がした。
(あぁ。酷いんだな)と。
で。
帰り道も俺とトロンが前。他が後ろという並びで降りていく。
帰りは迷いにくくなっているので行きよりも速く、5時間程で降りることができた。
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バレンタイン当日。
学校に嫌々登校し、書類整理や自習をしたのだが、昼間何も無かったので油断していた。
放課後生徒会室に行くと拘束された。案の定女子メンバーが揃っていた。なおアルさんは逃げた模様。
目の前には軽く積まれたチョコと、笑顔が怖い女子生徒達。
……帰りたい。
「頑張って作ってみたよ!」
「あまり上手く出来たか分からないけど、頑張って作りました!」
「お菓子作りなんて久しぶりにやったよ〜」
「昨日お世話になったのでお返しにと」
「バレンタインチョコだよぉ」
「…お礼」
「あぁ。ありがとう。後でゆっくり食べさせてもらおう」
『今食べて』
「いや、折角だから1つ1つ味わいたいんだが」
『今・食・べ・て?』
「……はい」
女子は怖いな……
それに、誰のチョコから食べればいいんだ!?正直言って俺が死ぬ運命しか見えないんだが。
「では、取り敢えず右から貰っていこうか」
『…………』
それがダメならどこから食えと言うのだお前達は。
ならもっと公平に…公平……あ。
「なら、ジャンケンをして勝った人のチョコから貰う。というのはどうだ?」
その言葉を聞いた途端に少女達の目の色が変わる。
簡単に思っている事を書くと、絶対に負けない。負けられない!といった感じだろうか。
そして、壮絶なジャンケンは30分近くかかり、いざ俺がチョコを食べる事になったのだが、上質な素材を使っているからなのか作るのが上手いのかは解らないがとても美味しかった。
ただ、後半になると少しキツかったが。
その後ホワイトデーのお返しを約束させられたりして帰宅。
さて、気付いている人もいるだろうがこの後に待っているのは休息などではなく_____
「さてと。ここからは私のターンだね!」
「はいはい」
「あ、ひどい」
そう言ってリリアは頬を膨らませる。全く…コイツは何で人が居なくなるとここまで変貌するんだか……
「ま、いっか。はい♪チョコあげる」
「あぁ。ありがとう」
リリアの手に乗っているチョコを貰おうとすると何故かスッと避けられた。
再度手を出す。避けられる。出す。避ける。
するとチョコを箱から出して笑顔を向けてくる。
「ほら口あけて」
「……は?」
「あれ?いらないの?」
「そんなことをするくらいなら食わない方がましだな」
「つまんないなぁ」
「別につまらなくていいだろう」
全く…何を期待してるんだか。いつも以上に変になってないか?
「はいはい。じゃふつうにあげる」
「今食べるのか?」
「もちろん♪」
「はぁ……」
こうして、バレンタインは無事(?)終了した。
が、翌月のホワイトデーの事などを考えると…不安だ。
因みに、1番美味しかったのはやはりというべきか、リリアだった。そこまで得意だった訳では無かったと思うから、俺の目を盗んで相当頑張っていたんだろうな。