第十話 大陸使節派遣
己れ人を愛すれば、
人も亦我れを愛して、
則ち和す。
己れ人を悪くめば、
人も亦我を悪くんで、
則ち破れ災いとなる。
大原 幽学 『微妙 幽玄考』
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西暦2070年1月元旦
総理官邸
「総理、等々この日がやって来ましたね」
「そうだな...等々この日がやって来てしまった。近藤 翔一朗国防大臣」
近藤 翔一朗国防大臣
近藤 啓太元国防大臣のひとり息子で、若干35歳で大臣職に就き47歳の時に父から国防大臣職をもらい以後2年間国防大臣をやっている。
「はい」
「1月3日に閣議を開く。その時にこれからのことを話そう」
「分かりました」
西暦2070年1月3日 午前8:30
総理官邸
「全員揃ったな」
「はい」
松浦財務大臣が返事をする。
松浦財務大臣
本名は松浦 佑太郎、瑞穂総合銀行の御曹司で当時21歳の時にその能力を買われ23歳の時に財務大臣職を手に入れ以後2年間財務大臣をやっている。因みに総理の親戚の子でもある。
「それでは、閣議を始める。まず最初に近藤国防大臣、軍事衛星での偵察結果を報告してくれ」
「はい、まずはこの地、ユーラシアから離れているアフリカのような土地についての結果を報告します。まずこの地は我々にとっては必ず手に入れたい土地です。この地には、我々が持っていない天然ゴムに、今では超高級品のマンゴー、パイナップルに高級品のキュウイ、バナナ更に値段が高騰した魚などの食料などが豊富ということが分かっています。また他にも鉄、銅、銀、金、白金、宝石、ウラン、希少金属、天然ガス、ミスリルなどの魔石なども豊富ということが分かっています。しかしながらこの地には人間ではない種族が生存している模様です」
「資源は種類が豊富ですね〜、具体的にはどのような種族が?」
西野外務大臣が質問をする。
西野外務大臣
本名は西野 蒼一郎、宮城元外務大臣に能力を買われ宮城元外務大臣死後外務大臣職に就き以後20年間外務大臣をやっている。
「それが...信じ難いことにゲルマン神話などの北欧神話で登場するエルフ、ドフワーフ、獣人などが確認されております」
「なんですと!」
松浦大臣が声を上げる。
「国家転移の次は、神話の生き物か...」
大臣の誰かが呟く。
「ともかく、この地とは関係を築きたいのだが反対や意見があるものはいるか?」
総理が大臣達に聞く。
「では、総理私からひとついいですか?」
日高官房長官が声を上げる。
日高官房長官
本名は日高 賢治、54歳の時に官房長官職に就き以後9年間官房長官をやっている。元々は宮内庁で働いていたが総理に抜擢され官房長官になった。
「なんだね、官房長官」
「この地には本当に人間はひとりもいないのですか?」
「近藤国防大臣どうなのかね?」
近藤国防大臣に視線が集まる。
「この地では未だひとりも確認されておりません。しかし、別の場所では確認されております」
「別の場所とは?」
西野外務大臣が質問をする。
「この地以外の場所すべてです。簡単に言えばこのユーラシアみたいなところほぼ全域で確認されております」
「本当ですか!?」
松浦財務大臣が大きな声を上げる。
「はい」
「それはいいことを聞いたな」
総理が笑顔で言う。
「しかし総理」
「なんだね?」
「衛星での偵察結果、この世界は種族同士で争っていることが分かりました。正確には、人間対人間除く全種族ですが」
「なんだと!」
総理が怒鳴る。
他の大臣達も動揺を隠せない。
「そうなれば、接触は避けるべきか...」
「総理!接触を避けるのですか!我々は今まで鎖国し続けてきたのです。また延期などしたら国民が納得しません。そうなれば野党最大の大政翼賛党の支持率が上がり夏の参院選での敗北は確実になります。そうなれば我々は退陣の道が見えてきてしまう。そんなこと我々は許しませんぞ!」
水野総務大臣が机から乗り出し大きな声で反論してくる。
水野総務大臣
本名は水野 誠一、48歳の時に総務大臣に抜擢された優秀な人物なのだが少々言葉が荒いのが問題である。
「わ、分かりました。兎に角落ち着いてください」
総理が場をなんとか鎮める。
「は〜で、その地にはどんな資源があるのだね?」
総理が質問をする。
「ユーラシアの主な資源としては、鉄と魔石、銅であとは1万トンくらいの金、銀です。と、言ってもほとんどの資源は北方に集中しています。中央は森、南方は平原が広がりどうやら農業が盛んなようです」
近藤国防大臣が質問に答える。
「そうですか。ではユーラシアの方は北方に使節を出しますか」
総理が言う。
「そうですな〜。で、問題なのはエルフなどがいるアフリカの方の地ですな〜。我々にとって天然ゴムは絶対に欲しい。あれがあれば日経株価は更に上昇し景気が良くなる。そうなれば使節を一様派遣しますか」
総理の発言に西野外務大臣が賛同する。
「危険すぎます!エルフなどの種族は人間と戦争をしているのですよ!そんなことで国民を危険にしたらどう責任を取るつもりですか!」
松浦財務大臣が怒号を上げる。
「落ち着いてください松浦財務大臣。一様です。一様」
総理が場を鎮める。
「しかし松浦財務大臣。どのみちユーラシアの方と国交を樹立したらアフリカと接触することは避けられない。それならば、危険を承知で使節を派遣すべきです」
近藤国防大臣が言う。
他の大臣達も頷いている。どうやら皆派遣に賛同のようだ。
「松浦財務大臣以外賛同のようだな。私も派遣には賛同だ。松浦財務大臣、使節を派遣しますがよろしいでしょうか?」
総理が松浦財務大臣に質問をする。
「皆さん全員が賛同するのならば仕方ない...私も派遣に賛同させていただきます」
「それでは、派遣決定だな。近藤国防大臣、使節派遣部隊は護衛艦隊でよろしいですな?」
「はい、それでよろしいかと」
「それで派遣日は1月20日とする。反対のあるものはいるか?...よしいないようだな。西野外務大臣」
「はい」
「使節団の編成を行ってくれ」
「分かりました」
「他に意見や質問があるものはいるか?...いないようだな。それでは閣議を終える」
西暦2070年1月20日 午前10:00
NHK
「皆さんおはようございます。NEWS10のお時間です。最初のNEWSをお伝えします。今日9時ごろ大陸に向けて横浜港から2つの使節団が出発しました。使節団はハワイを中継して大陸を目指す模様です。続いてのNEWSです。大陸に新たに誕生しt...」




