表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/93

序章

和風異世界トリップです。

元気のいいツンデレ美少女と恋愛経験豊富な大人男子の攻防戦、ぜひお楽しみください。読みやすい物語をモットーに、にやにやしてもらえるよう頑張ります!

挿絵(By みてみん)


序章


 さわさわと頭上に葉擦れの音が響く。

 

 おもむろに瞼を押し上げると、澄んだ水鏡に反射する陽光に瞳を射られた。

 

 岸辺に立つ彼の足元では、白い花が二、三輪、ゆらゆらと水面を揺蕩っている。

 可憐な花だ。小ぶりだが、精一杯開かれた純白の花びらに、いくつもの透き通った水の雫を乗せている。惜しげもない陽を浴びて咲き誇る姿は、気持ちよさげに背伸びをしているようにも見えた。

 

 ふと瞳を細めた彼の耳に、背後から、馴染み深い声が話しかける。

「まだこんなところで油を売っていたの。そろそろお役目を果たしにいかないと、また大目玉を食らってしまうんじゃないのかい」

「そう急かされては、せっかく起きた気も萎えそうだ」

 彼は背後の人物に背を向けたまま、飄々と肩を竦めて見せた。

 すると聞こえよがしに、笑い半分の溜め息が響く。

「まったく君は変わらないね。そのへそ曲がりぶりには手を焼かされるよ。……ああ、そういえば、あの御方。懲りずにまたなにかを画策し始めたようだよ。どうする?」

「さて、俺には関わりのないことだが。……放っておいたことろで大事はあるまい」

「そう言うと思った。……さあ、いい加減、出かけたらどうなんだい。気が萎えるなんて言いながら、君がこのお役目を放り出すはずないってことは、ちゃんと分かっているんだから」

 彼は再び軽く肩を竦めた。

 知ったような口を利かれるのは好みでない。

 背後の人物もそれを分かっているはずだが、敢えて口にするのは生来の性質だろう。

 だが無言の嫌味は通じたらしく、くすりと笑い声が落ちる。

「私もこれでお暇するよ。――御機嫌よう、悪友どの。あとで、ちゃんと君が責務を果たしに行ったか、ちゃんと確認しに来るからね?」

 歌うように言い残し、重たい羽音が響いた。

 

 一人その場にとり残された彼は、再び、足元でぷかぷかと浮き沈みを繰り返す白い小花を眺める。

(逐一見張られるのも面倒だ)

 

そろそろ出かけようか。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ