第8話 招待
遅くなりました。今回は短いです、申し訳ない。
―ミシューカ家・執務室―
「……父上、これは?」
シャーシェスはリンナと共にハザードに呼ばれ、執務室で一枚の手紙を渡された。
「それはとある貴族のパーティーの招待状でな……本来なら私かシャルラルが行くべきだが……私もシャルラルも、忙しく、行けないのだ」
「つまり、代わりに俺とリンナで行けと?」
「そう言う事だ」
「はぁ……俺はこういうのは苦手なんだが……それにこの招待状を送ったのって……」
「知っているとも、とはいえ、招待が来て、行かない訳にはいかん」
「貴族ってそう言うところがキツイね」
「同感だ」
リンナは心配そうにシャーシェスを見る。
「シャーシェス様……」
「大丈夫だ、リンナ、何とかなるだろ」
「うむ、そう言う事で二人共、よろしく頼むよ」
こうして、シャーシェスとリンナは貴族のパーティーに赴く事になったのだった。
―とある貴族の屋敷・ホール―
シャーシェスとリンナはそれぞれ正装して、パーティーに赴いた。シャーシェスは騎士時代に着ていた軽装みたいな純白の服装で腰に剣を携えている。リンナは水色のドレスで質素な首飾り以外は飾りを付けておらず、しかし、それはとても清楚で可憐であった。
「やぁ、まさか、君が来るとは思わなかったよ」
「お久しぶりだな、ゴルド……」
シャーシェスは表面では笑顔で応対しているが、内心ではあまり目の前の貴族は好きではなかった。ゴルド・ナーセス、シャーシェスやファンナと同じく、騎士団の一人であり、二人とは同期であった。しかし、普段から見下しいるような性格をしており、剣術の才もあるにはあるが、実力はシャーシェスより遙か下だった。
「騎士から落ちぶれた者がどうしてここに?」
ゴルドの言葉にリンナは文句を言うようとしたが、シャーシェスがそれを制する。
「父上から頼まれてね……」
「ああ、なるほど……それより、シャーシェス、君は結婚したそうだね。副団長の妹と……まぁ、君にはふさわしくはないが、おめでとうぐらいは言っておこう」
「……」
「まぁいい、今日は私の父の誕生日だ。こんなところで騒がせたくはない。せいぜい楽しむといい。後で父上に挨拶はしておけ」
「ああ、そうするよ」
ゴルドは嫌味を言う男ではあるが、親思いが強い騎士でもある。そして、ゴルドは副団長であるファンナを尊敬している。そう言うところはシャーシェスは認めている所だ。
「……それより、暗殺者を雇っている人物は見つけたのか?」
「……何で、お前が知っている?」
「副団長から聞いてね」
シャーシェスは無言のまま、目を逸らす。ゴルドはそれが肯定だと知っている。
「……ガラードには気を付けろよ」
「分かっているさ」
「私もどうもガラードは好きになれない。あいつは親の七光りで実力も伴ってない。お前も七光りだが、実力は認める所だからな」
「……」
シャーシェスは最後は黙ったまま、リンナを連れ、その場を去った。残ったゴルドは、彼の背中を見る。
「……未練が残っているなら、今の職業は止めるべきだぞ、シャーシェス」
シャーシェスとリンナはとある人物に会った。ゴルド・ナーセスの父であり、このパーティーの主催者でもある、バルド・ナーセスである。
「ナーセス候、この度はおめでとうございます」
「おめでとうございます、ナーセス様」
二人は頭を下げると、ナーセス候は笑った。
「ほっほっほっ、頭を下げんでもいい。まさか、君が来るとは思ってもみなかったが」
「父も多忙でして……」
「ふむ、そうか、それは悪い事をしたな。それより、結婚したそうじゃな」
「ええ、ついこの前、このリンナを妻として迎えました」
「すまんな、丁度その時は儂は国外を出ていてな」
「いえ、急に決まったようなものです。あなたが謝る必要はありません」
シャーシェスは苦笑いすると、ナーセス候もつられて、笑う。
「うむ、まぁ、今日は楽しむとよい」
「あなたがそう仰るならば、そうします」
「では、儂もこれで、まだ挨拶をしないといけない人物がいるのでな」
「ええ、分かりました」
そう言って、ナーセス候は人波の中に消えてしまった。
「さて、しばらくは食事でもしながら、ゆっくりさせてもらうか」
「そうですね」
リンナがシャーシェスの腕を取ると、シャーシェスは微笑み、パーティーを楽しむ事にしたのであった。