表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と共に……  作者: 時刻
5/13

第5話 剣術道場

今回はシャーシェスの仕事場です。

―ミシューカ家・玄関―

 数日後、シャーシェスは仕事場でもある剣術道場に向かう為の準備をしていた。腰には剣が納めている鞘、服装は武道服であった。すると、リンナが包みを持って、玄関に見送りに来た。

「あ、あの、シャーシェス様……」

「どうしたんだ?」

「これ、お弁当です……」

 顔を赤らめながらそっと、包みを渡す。シャーシェスは微笑み、その弁当を手に取る。

「ありがとう、リンナ……行ってくる」

 シャーシェスはリンナの綺麗な髪に口づけし、リンナはさらに顔を赤らめる。

「はい、お仕事、頑張ってください」

「ああ、じゃあ、二人共、リンナを頼む」

「かしこまりました」

「リンナ様はお任せください」

 そう言って、シャーシェスは包みを持って、剣術道場に向かったのであった。


―『フェリン』郊外・王国剣術学校―

 城下町中心部に位置する、その場所にシャーシェスが働いている剣術道場があった。シャーシェスは門をくぐると、そこには少年少女達が必死に鍛錬していた。

「あ、シャーシェス師範代だ!」

「本当だ!師範代、今日はよろしくお願いします!」

「おう、後でな、爺様に会わないといけないから」

「「はい!」」

 相変わらずの雰囲気にシャーシェスはホッと一安心した。すると、目の前に一人の老人がいた。

「爺様!」

「ん、おお、シャーシェス、来たか……どうじゃ、久々の休暇は……」

「ええ、それなりに充実しましたよ」

「うむ、それとファンナから聞いたぞ、何でも結婚したそうじゃな」

「ええ、まぁ」

「とはいえ、お主も大変じゃな」

 爺様と呼ばれた老人、グロウド・マッチスは長めの髭を撫でながら、シャーシェスを心配する言葉を発する。

「これが今の俺の仕事です、爺様が心配なさる事はありません」

 シャーシェスはそのまま、生徒達の下に向かった。

「シャーシェス……」


 その後、シャーシェスは生徒達に稽古をつけると、昼食の時間となっていた為、剣術道場内にある食堂でリンナから貰った弁当を広げた。中はサンドイッチだった。とても美味しそうなサンドイッチをシャーシェスは一口いただく。

「ん、これは中々……」

 シンプルなエッグサンドイッチだったが、かなり美味しかった。すると、シャーシェスが座っている席に、二人の生徒がやって来る。一人は青髪のショートで元気な印象を与える少年で、もう一人は赤髪のポニーテールをした強気な少女だった。

「師範代!ここ、良いっすか?」

「おう、誰かと思えば、セルとルシュカじゃないか、いいぞ、座れ座れ」

 シャーシェスはセル・アラカルトとルシュカ・リエントを招きすると、二人はシャーシェスの向かい側の席に座る。

「わぁ、美味しそうなサンドイッチ……師範代が?」

「いいや、俺は料理はからっきしダメでね、これはリンナが作ってくれたんだ」

「リンナ……?あ、ファレン様の妹様ですね!」

「もしかして、ご結婚を?」

「ああ、式は挙げなかったが、妻として迎え入れてな」

 シャーシェスは若干照れながら喋る。

「それはおめでとうございます」

「素敵です!ああ、私もいつか素敵な人に出会えるかしら?」

「騎士を目指す女性ってあまり結婚するイメージがないような……」

 セルは定食を食べながら思っていた事を呟く。

「そ、そんな事ないわよ!ないですよね!?」

「……ごめん、俺もイメージがない」

「ええ!?」

「いるかもしれないが……俺の身近にいる女騎士で結婚した人はいないな」

「それって……」

「サラ様の事……?」

「ああ……あいつ、結婚には憧れているが……いかせん、女騎士って事で結婚が難しいんだよ、性格も相まって」

 シャーシェスはサンドイッチを食べながら、そう言うと、セルとルシュカは苦笑いをした。

「とは言え、女騎士でも結婚は出来るからな、諦めるな」

「は、はい!と言っても、まずは騎士になって見せます」

「俺だって、騎士になって見せるさ!」

「その意気だ……と、そろそろ時間か、お前らも飯食って、少し休んだら、鍛錬だからな、遅れるなよ」

「「はい!!」」

 セルとルシュカは元気良く、返事をすると、シャーシェスは微笑み、残りサンドイッチを食べきった。


 午後の鍛錬も終わり、シャーシェスは生徒達に明日の事を伝えると、解散させ、一人、道場に残った。すると入れ替わりでグロウドが入ってくる。

「爺様……」

「うむ、今日もお疲れ様だな、シャーシェス」

「あはは、もう慣れましたよ」

「そうか……しかし、やはり勿体ないの」

 グロウドがそう言うと、シャーシェスは頭を傾げる。

「お前ほどの剣士がここに居ていいはずがないのだがな……」

「……」

 その言葉にシャーシェスは困ったような顔をする。

「儂には騎士団に推薦する権利を有しておる。本人の許可があれば……すぐにでも……」

「爺様」

 シャーシェスはグロウドの言葉を遮る。グロウドはシャーシェスの顔を見ると、すぐに俯く。

「うむ、分かった……今はこの話をなかったことにしよう。だが、お前はいずれか騎士に戻るべきだ。それだけは分かってくれ」

 そう言って、グロウドは道場を出ていく。その背中を見たシャーシェスはおじきをした。

「すみません、爺様、俺はもう……騎士には戻れません」

 少し悲しそうな声を出しながら、シャーシェスは謝ったのであった。


―ミシューカ家・シャーシェスとリンナの部屋―

 夜、剣術学校から戻ってきたシャーシェスはシャワーを浴びて、夕飯まで寝転がっていた。そこにリンナがやって来た。

「リンナ」

「シャーシェス様、夕飯の時間ですよ」

「そうか、すぐ行く」

 シャーシェスは立ち上がり、リンナと共に部屋を出る。

「今日はお勤めご苦労様でした」

「ん、久々で少し疲れたよ」

 シャーシェスは首を少し回し、苦笑する。

「ふふっ……あ、後……」

「ん?」

「きょ、今日も弁当はどうでしたか?」

 少し恥ずかしながら、リンナは聞いてくる。

「ああ、美味しかったよ。また、作ってくれるか?」

 その言葉にリンナは笑顔になる。

「はい、シャーシェス様!」

 可愛い笑顔に思わずシャーシェスも微笑むのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ