第1話 頼み事
ども、時刻です。今回は恋愛中心の小説にしてみました。『聖鬼神』共々、よろしくお願いします。
そこは魔法や魔物がいる世界、七つの国に分かれている、その世界は戦争、同盟、様々な関係を築いていた。
騎士の国として知られる王国『フェリン』、物語はその国の城下町に住む貴族の館から始まるのであった。
―『フェリン』城下町郊外・ミシューカ家―
豪華な装飾品で並べられた廊下に一人の青年がいた。黒髪碧眼の美青年であり、服装は貴族らしかぬ戦士の服で腰には剣を携えている。彼の名前はシャーシェス・ミシューカ、一流貴族、ミシューカ家の当主、バルザード・ミシューカの次男である。
シャーシェスは今、客室に向かっている。理由は一つ、とある人物に会う為であった。
シャーシェスが客室の前に行くと、扉を開ける。客室は豪華だが、シンプルに装飾品は纏められている。
そして、そこに一人の青年がいた。金髪青眼の青年でどこか真面目さが出ていた。青年の名はファンナ・ガザランド、王国騎士団に所属する騎士であり、シャーシェスの親友である。
「やぁ、シャース」
「久しいな、ファンナ」
シャーシェスはファンナに向かい側のソファに座ると、客室にいたメイドが彼に紅茶を入れる。
「それで何の用だ?」
「いきなりそれか」
ファンナは呆れながら、紅茶を啜る。
「俺の性格を知っているだろう?」
「まぁ、いいけどね……」
ファンナはカップを静かに置くと、一息つく。
「ガラードを覚えているか?」
「……ああ」
シャーシェスは嫌そうな顔になる。
「実はそのガラードが私の妹にしつこく言い寄って来るんだ」
「……リンナは可愛いからな」
「そうだね、普段は異性に興味がない君でも惚れるほどだからな」
「……」
シャーシェスは目を逸らす。そして、少し照れらながら頭をかくと話を進める。
「それで?リンナは?」
「もちろん、振っているよ、が、振った瞬間、暗殺者がリンナを狙うようになったんだ。今は僕の部下が護衛に就いているが……」
「それって……立派な犯罪じゃないか?」
「証拠がない……タイミング的にはガラードだと思うが、あいつの家は……」
「ああ、思い出したよ」
シャーシェスは頭を抑えながら、面倒くさそうな顔になる。ファンナは少し不安そうな顔になる。
「それでシャースに頼みたいんだ」
「ああ、護衛だろう?任せ……」
「いや、違う」
「……?違うなら、何だよ?」
疑問に思いながらシャーシェスは紅茶を啜る。
「妹の……リンナの夫になってほしいんだ」
「ぶっ――――――――!?!?」
突然の頼みにシャーシェスは盛大に紅茶を吹いた。
「げほっ、けほっ……ファレン、お前、今、何て言った?」
「だから、リンナの夫になってほしいんだ」
「俺の聞き間違いじゃないのかよ……どうして、結婚になるんだ?」
「もちろん、護衛の意味も兼ねている。何より、彼女が結婚すれば、諦めるかもしれないし、それに彼女の意思でもあるんだ」
「リンナの意思?俺と結婚する事が?」
「そうだ」
ファレンがそう言うと、シャーシェスは別に意味で頭が痛くなった。
「どうだ?」
「あのな……俺の今の職業を知っているだろう?」
「ああ、知っている。だからこそ、君の側が安全なんだ」
「そうは言うがよ……」
「頼む、君にしか頼れないんだ」
ファレンが頭を下げると、シャーシェスは諦めたようにため息をつく。ファレンは頑固なので、こうなるとてこでも動かない。
「分かった……結婚するよ……リンナに伝えておいてくれ」
「……っ!ありがたい!恩に着る!」
ファレンは机に身を乗り出す。シャーシェスは再びため息をついたのであった。
こうして、シャーシェスはファレンの妹と結婚する事になったのでなった。
しばらく、話をしてからファレンは帰った後、シャーシェスはとある人物の下に向かった。そして、その人物達がいる、部屋の前まで行くと、その扉をノックする。
「父上、兄上、シャーシェスだ、入るぞ」
「ええ、どうぞ」
シャーシェスは扉を開けると、そこは仕事場なのか、机が二つ、周りには本棚があり、それぞれの机で仕事をしている。
「君から用事があるなんて、珍しいね」
シャーシェスとは真逆の雰囲気ではあるが、どこか似ており、メガネをかけている。名前はシャルラル・ミシューカ、シャーシェスの兄であり、ミシューカ家の長男である。
「何の用だ、シャーシェス」
そして、厳格な雰囲気を持つ壮年の男性、名前はハザード・ミシューカ、ミシューカ家当主であり、シャルラルとシャーシェスの父である。
「ちょっと、報告がありまして……」
「報告?」
「その……リンナと結婚する事になりました」
その報告にシャルラルとハザードは目を見開く。
「結婚……?シャーシェスが?」
「ええ、まぁ、ちょっと……任務も含まれていますが……」
「そうか、で、いつ、迎え入れるのだ?」
結婚と聞いて一瞬驚いたが、すぐさま、いつも通りの態度を取る。
「一週間後です」
「ならば、その日までに準備をしないとな、シャルラル、お前も手伝え」
「ええ、弟が結婚するんです、手伝わない訳がないですよ」
何だかんだで、祝ってくれる家族に思わず照れてしまう。そして、シャーシェスは思ってしまう。
(俺の周りって、どうしてこう……)
お気楽なのだと……。
―『フェリン』城下町郊外・ガザランド家―
家に帰ったファレンは真っ先にとある人物の下に向かう。その人物の部屋の前まで来ると、扉をノックする。
「はい、開いております」
「失礼するよ」
ファレンが扉を開くと、部屋の中には一人の少女がいた。ファレンと同じく金髪青眼、腰まで伸びたロングヘヤーと優しそうな目つきで、かなりの美少女であった。彼女の名前はリンナ・ガザランド、ファレンの妹である。
「どうかなさいましたか、兄様?」
「リンナ、シャースが君と結婚してくるそうだ」
その報告にリンナは驚く。
「そ、それは本当なのですか?シャーシェス様が私と?」
「ああ、そうだ」
その事にリンナは笑顔になる。
「い、いつ、迎えに?」
「一週間後だ、お前もそれまでに準備するといい」
「は、はい!」
準備する為か、リンナは部屋に出る。その様子にファレンは思わず微笑んでしまった。
リンナは嬉しさのあまりに廊下を走っていた。
(シャーシェス様が……私と……け、結婚!!)
リンナは胸がドキドキしており、それが止まらなくって、それをごまかす為に無意識に走っていた。
「あ、あら、リンナ様?」
すれ違うメイドにも目をくれず、リンナはまだ、走る。気が付いたら、中庭にいた。
「はぁ……はぁ……」
リンナは息を切らしながらも、顔が赤くなっている。
「シャーシェス様……」
夜空に浮かぶ月に見上げ、そして、その日を楽しみにするのであった。
どうでしたか?さすがに四作も描くとキツイですが、何とかやってみようかと思います。