第1話 突然の別れ
頭痛い…
もうそろそろ起きて、会社に行く準備をしなくちゃいけないのに、
何もやる気が起きてこない。さすがに飲みすぎたか。
一人でワイン3本、ビールにチューハイ。何本飲んだか覚えてない。
30も過ぎて、何やってんだ私…
花田咲、33歳。
昨晩、最近仕事が忙しすぎて連絡を怠っていた彼に会いたいってメールをした。
二か月近く会っていなかったから、彼も喜んでくれるだろうと思っていたのに、
返ってきたメールは予想外のものだった。
『会ってどうするの?』
どうするのって…恋人同士が久しぶりに会えるんだよ?
今更どうするもこうするもないような気がするんですけど。
2人がお気に入りのお店で食事して、夜の街をぶらぶらして、
そして最後は彼の家へいって愛を確かめ合う…
って、そんなこと私の口から言えって言うの?
『どうするの?って、恵介は会いたくないの?』
きっと久しぶりだから照れてるんだ。可愛い。
なんて一人でニヤニヤしてたら、すぐに返事が来た。
『会いたくないのはそっちだろ!君には僕は必要ないんだよ。
強い女性だからね。一人でも生きていけるだろう…』
は…はい?私が強い女性だって?
『言ってる意味が分からないんだけど?』
ちょっと、この展開ってまさか…
『別れてくれないか?守ってあげたい子が他にできたんだ』
やっぱり…
もう5年も付き合ってきて、恵介は私のこと分かってくれてるって思ってたのに。
そうじゃなかったんだ。今でも恵介が好きだし本当は別れたくないのが本心。
なんだけど、私の30を過ぎてる女のプライドがそれを許さない。
『そっか、それじゃしかたないね』
こう言うのが強い女って言われる原因なのかしら。
別れたくない…そう素直に言えない私が憎い。
もっと可愛く甘えられたらいいのに…。
『咲、本当にごめん。今までありがとう。さようなら』
終わりなんてあっけないものだ。
今の時代、メールなんてお手軽な連絡手段があるから、
顔を合わせずに付き合いを終えることが出来てしまう。
きっと直接会って別れ話をしていたら、涙の一つや二つ出たんだろう。
しかし、今の私は顔色ひとつ変えない無表情をしていた。
で、その後の私はって言うと…一人で自棄酒。もう浴びるほど飲んだわよ!
飲まなきゃやってられないっつ〜の。
で、今朝気付いたらこの有様って言うわけ。
なんとも情けない…。
「さあっ!」っと掛け声ひとつ。
こんな気持ち引きずってても何も変わらないし。いつまでもグジグジしているのは性に合わない。
パパッと簡単に身支度を済ませ会社に向かう為、玄関のドアを思い切り開けた。
そこには眩しいほどの青空が広がっていた。
「なにも、こんなに良い天気じゃなくてもいいのに…」
私の気持ちとは正反対の天気。
いつもなら清々しいと嬉しくなる天気も、今日は恨めしい。
チッと舌打ちしたい気分をグッと堪え(30過ぎても一応女の子だし)、
会社へと急いだ。