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無実の罪で娘が婚約破棄された。よろしい。死ぬ準備はできているな?

作者: naturalsoft
掲載日:2026/10/13

誤字脱字の報告ありがとうございます。

今日は学園の卒業パーティーの日だ。

これから卒業生達は正式な貴族の仲間入りとなる。


娘は第二王子の婚約者だ。

王太子ではないので、王子妃というものになる。王妃ではないからまだ気が楽だろう。


我が家は侯爵家と、貴族でも最高位に準ずる家柄だ。

娘のシオンには厳しくも、愛情を込めて育ててきた。これから大人の仲間入りだ。婚約者と結婚して幸せになって欲しいものだ。


卒業パーティーを楽しんでくるだろうと思っていた矢先───


「旦那様!お嬢様がお戻りになりました!」


???


「もうか?早くないか?」

「そ、それが、卒業パーティーで婚約破棄されたそうで、泣きながらお戻りに………」


「何だとっ!!!?」


ダダダッッ!!!!!

走って部屋に向かうと娘が妻の胸の中で泣いていた。


「だ、大丈夫か?いったい、なにがあったんだ?」


娘は妻の胸で泣いているだけですぐに答えられる状態ではなかった。妻も首を振ったので、今は落ち着くのを待つことにした。


30分ほど経ち、ようやく泣き止んできた。娘から口を開くまでは何も尋ねなかった。


「………申し訳ありませんでした」


ようやく口を開いた娘が口にしたのは謝罪からだった。


「それはいい。何があったか話せるか?」

「はい………」


内容は執事が慌てて話したことと同じだった。

では、どうしてそうなったかだ。


婚約者だった第二王子のカース様は娘シオンの他に寵愛している娘が出来たそうだ。

そして、その懇意にしている娘から悪質な嫌がらせをしたという事で婚約破棄されたという。

その証拠に3人ほどの証言もあったそうだ。


「ふざけているな」

「ええ、ここまで私達のグラン侯爵家をバカにするなんて、いえ、可愛い娘を蔑ろにした罪は重いわ」


そうだ。

我が家名より、愛する娘を蔑ろにされた責任を取らせなければ!


「シオン、お前が嫌がらせをしたと証言した者の名前と家名はわかるか?」


男爵家の子息と子爵家の令嬢2人か。

ここは感情的になってはいけない。

冷静に状況と相手の間違いを突かなければならない。


「明日の1番で先触れを出せ! ヤツラの証言の矛盾を突く。シオン、お前の行動日誌を使わせてもらうぞ?」


「は、はい。お父様、私を信じてくれるのですか?」

「ああ、お前の性格はよく知っている。婚約者に苦言を言うことはあっても、そんな『子供騙しな』嫌がらせなどするわけない」


「誰も信じてくれなくて………」


母親がまた優しく抱き締めた。


「大丈夫よ。国中が敵に回っても私達はシオンの味方よ」


「お母様……」


シオンは安心したのか泣き疲れて眠ってしまった。


「我が娘を泣かせた代償………高く付くぞ」


父親である侯爵はシオンの寝顔を見ながら呟くのだった。翌朝、グラン侯爵家から近い場所の貴族家から、シオンの証言について伺うことにした。


まずは男爵家からだ。

到着すると、男爵より証言した子息の方が青い顔をしていた。応接室に入るとすぐに本題に入った。


「まず、最初に言っておく。我が娘が本当に悪質な嫌がらせをしていた現場をみたのなら、我が家の恥ずべきことだ。我が家から男爵家には何もしないと誓おう」


明らかにホッとする男爵達に続けて言った。


「ただし、その証言にわずかでも矛盾があれば覚悟することだ。如何に『第二王子』ごときに庇護されようとも、我が侯爵家の総力を持って徹底的に追及させて頂くぞ」


また男爵達は青くなった。

如何に王子とはいえ、所詮は第二王子というスペアに過ぎないのだ。権力はともかく、使える資金は侯爵家と比べることも出来ないくらいに差がある。


「さて、君が見たのはシオンが教科書を破っている所を見たそうだな。昨日、その日付も覚えていて証言したと聞いた。同じ証言をして欲しい」


子息は緊張した様子で話した。


水月の第二の火の日の放課後、忘れ物を取りに戻った所にシオンが教科書を破いている現場をみたそうだ。


「ふむふむ、ずいぶん日が経っているのによく覚えていたな?」


「そ、その次の日が私の誕生日だったので覚えていたのです」


なるほど。矛盾点はないな。


「それなら日付は間違いなさそうだな」

「え、ええ」


侯爵はカバンから書類を取り出した。


「侯爵殿?それはいったい?」


男爵は尋ねた。


「仮にも王子妃になる予定だったのだ。学園の授業後、王城へ登城して王子妃専門の勉強もしていた。故に予定も王室に決められていたので、しっかりと『記録』が残っているのだよ」


!?


子息の身体がビクッと震えた。


「ええっと、水月の日はと………」


ペラペラッとめくっていくとその日の予定が出ていた。


「ふむ?その日は………王家の公務が入っており、学園自体に行っていないようだが?これはどういうことかな?」


男爵の子息はダラダラと汗を流した。

父親の男爵は遠慮がちに言った。


「し、失礼ながらその記録が間違っている可能性は……?」


「おや、これは異なことを。これは我が家の『写し』に過ぎませんぞ?王室の出入りの記録にしっかりと記載され、登城の記録があるはずですが?王室の記録に異議を申し立てると?」


王城に出入りする時はしっかりと記録され、その記録はしっかりと保管されるのだ。その記録を疑うということは王家を疑うということである。


「さて、いきなり矛盾が見つかったわけだが、どういうことかな?」


侯爵の眼光が厳しくなった。

しかし侯爵は急に話を変えた。


「このまま嘘の証言をした男爵家を潰してもいいのだが………今なら記憶の間違いだったと証言を撤回すれば許してやってもいいのだが?」


!?


「ほ、本当ですか!?」

「ああ、だが日にちが違っていたとはいえ、君は本当に何を見たのかな?」


男爵の子息は土下座して謝った。

第二王子から嘘の証言をすれば、王城の文官として働かせてやると言われたそうだ。


父親である男爵も息子の未来の為に黙認したとのこと。侯爵は王子の汚い手口を知ってさらに怒りが、いや殺意が芽生えた。


「では、王城に行って、証言した日のシオンの登城記録のコピーをもらい、証言は『間違い』でしたと撤回してもらいたい」


「は、はい!すぐに行ってきます!」

「私も次の証言者の元に向かう。最後に、誰に付くのかしっかりと考えてから、実行しないと身の破滅を招くと助言しておく」


男爵達は何度も頷いた。

さて、一件目であのクソ王子の手がわかった。

サッサと片付けよう。


そのまま次の証言者の家に行くと、だいたい男爵家と同じ状態であった。1人は王子の第二夫人になると言われていたが、それは国王のみ許された行為であり、第二王子は臣籍降下して、一貴族になるのだから、なるなら愛人か愛妾になるのだと尋ねたらポロポロと話してくれた。


なんでこんな常識を教えてないのか、子爵の教育に苦言を言っておいた。


こうして全ての証言が集まったことで、最後に王室に面会を申し込んだ。

いつもなら1週間後くらいになるのが三日後に面会の許可がでた。


流石に国王はこの件に関わってないよな?

少し不安があったが、妻と相談して強気で臨むことになった。


面会の日になった。

朝から王城に向かうと、ちょっとした会議室に通された。

なるほど。

この部屋の会話は外部に漏れない作りなのか。

王家の醜聞を外部に漏らさない為の場所を選ばれたことで、国王の考えも少し読めてきた。


私が最後だったようで、全員が揃っていた。


「少し遅れましたかな?」

「いや、グラン侯爵は時間通りだ。私も今来た所である」


国王陛下に一礼して席に着いた。


「では当事者が全員そろったことで、数日前の件について話し合いを始める」


国王陛下の横には宰相も座っていた。


「父上!話し合いも何も、侯爵の娘とは婚約を解消しました。何を話し合うのですか?」


コイツはバカか?

公衆の面前で婚約破棄を言ったとしても、国王と侯爵家当主の許可がなければ婚約の解消などできんのだぞ?


国王の方を見ると頭が痛そうにしていた。


「まず第二王子のカース殿下、婚約の解消は国王陛下と侯爵家当主の許可がなければ成立しません。よってこの場が設けられたのです」


宰相が説明した。


「なら、侯爵に伝えよう。貴殿の娘シオンとはそちらの有責で婚約を破棄させて頂く」


自信満々に言い放つ王子に侯爵は不遜な態度で対応した。


「ほう?貴様の様なクズとの婚約破棄は喜ばしいことだ。しかし、こちらの有責とはどういうことかな?」

「貴様!いくら当主だからといって王族の私に対してその態度はなんだ!」

「ふっ、この後に『いなくなる』者に敬う心は持ち合わせていないのだよ」


「ど、どういうことだ?」


カース王子は動揺した様子で尋ねたが、侯爵は時間の無駄だと話を変えた。


「そんなことはどうでもいい。それよりうちの娘の有責ということだが?」

「ちっ、それは侯爵の娘であるシオンがここにいる男爵令嬢のマリアに酷い嫌がらせをしていたからだ!」

「ほう?それで?」


侯爵は余裕の態度で煽るように言った。


「それでだと?王子妃となる者がそのような品格を疑うようなことをしたのだ!婚約破棄の理由に十分だろう!それに、実際にシオンが行っていたという目撃証言もある!」


侯爵は視線を国王と宰相に向けた。


「カース王子、王子の証言者達は次の日に全員が証言を撤回しております」


!?


「はっ?」


間の抜けた声が会議室に響いた。


「まず、男爵の子息の目撃証言ですが、こちらも日が経っているので、日にちの間違いはないかと、何度も確認しました。自分の誕生日の前日なので間違いないと言われましたが、その日は公務でシオン令嬢は学園に来ておりませんでした。では男爵の子息は誰の何を見たのでしょうか?」


「そんな物は『記録』の間違いだろう?」

「いいえ、王城に登城された方は王室の記録に残ります。王子は王室の記録が間違いだと仰るのですかな?」

「い、いえそういうわけでは・・・」


国王陛下がいる時に、王室への批判はまずい。


「では、他の証言は・・?」


すでにカース王子が男爵家に便宜を図るから嘘の証言をするように言ったことは国王と宰相は知っている。

その他の証言者にもだ。


「どれも似た状態で、シオン令嬢は見ていないとのことでした。カース王子、証言の裏付けを取りましたかな?これでは王子が冤罪をかけて婚約破棄したと思われますぞ?」


「バカな!い、いや、マリアは階段から突き落とされたのだぞ!階段の上にはシオンがいた!間違いないだろう!?」


「その時は目撃者もいました」

「だろうが!」

「いいえ、数人いた目撃者はマリア令嬢が自分から落ちたと証言しております。シオン令嬢は両手に荷物を抱えており、押せる状態ではなかったと」


!?


驚く王子に侯爵は言った。


「その時は貴様に押し付けられていた学園の課題の準備のため資料を持っていたそうだ。ありがとう。貴様のおかげで娘の潔白は証明された」



そんな・・・

カース王子は小さく呟いた。

隣に座っているマリア男爵令嬢も顔色が悪くなった。


「なにを呆けている。クズ王子よ」

「貴様!さっきから王族の俺を舐めるなよ!」


威勢よく言い返すが──


「そう、我々は舐められては終わりなのだ・・・」


侯爵の眼光がさらに鋭さを増した。

ドンッとテーブルを強く叩いた。


「我が娘を冤罪で公衆の面前で貶めた屈辱!これで済むと思うなよ!!!!!」


侯爵の突然の怒気にカース王子は椅子から転げ落ちた。マリア令嬢も下を向いて震えた。


「はぁ~侯爵が歴戦の戦士だと知らないのか?10年前に隣国が攻めてきた特、前線に立って敵の将軍を討ち取ったのだぞ?その侯爵を怒らせるとは信じられんな」


国王の言葉にカース王子は信じられない眼で侯爵を見ることになる。


「何だ?勉強不足で知らなかったのか?」


国王や宰相は冷めた眼でカース王子を見つめた。


「国王陛下、我が娘の潔白は証明されたということでよろしいかな?」

「ああ、この度は我が愚息が申し訳なかった」


国王は頭を下げた。


「国王陛下からお詫びも頂いたことだし、カース王子とそこの令嬢は覚悟せよ」


!?


「な、にをだ・・・?」


ゴクリッと喉が鳴った。


「貴様がそこの令嬢と一緒になりたいがために、我が娘に冤罪をかけて断罪したことは調べがついている。もし穏便に内々に打診していれば問題なかったが、貴様は慰謝料を惜しさに、娘に罪を着せて婚約破棄したのだ。ただで済むなと思うな」


ゴゴゴゴゴッッッッ!!!!!

殺気を放ちながら再度言った。


「俺に手を出せばどうなるかわかっているのか!?」

「そんなことは知らん!これから『暗殺者』が貴様の命を狙うだろう。すでに王太子殿下には子供も3人産まれているし、貴様のようなスペアはいらん。そこの男爵令嬢もだ!我が侯爵家を怒らせて無事でいられるとは思わぬことだ」


「ひっ!?」


「自分が被害者のような顔をするなよ?貴様が我が娘が断罪されていた時、笑っていたことはすでに知っている。婚約者のいる男性を誘惑して落としたことで優越感に浸っていたのだろう。最初はスパイ容疑で捕縛する予定だったが、貴様の男爵家や個人の裏に隣国の影はなかった。ならお前一人の単独犯ということになる。よくも王家と侯爵家の縁談を破談にできたものだ。貴様にも『影』を送ってもいいのだが、貴様は普通に王家の婚約を破談させた罪で王家に委ねる」


宰相は手を上げると護衛騎士によってマリアは連れて行かれた。マリアは叫んでいたが誰も気にしなかった。


そして次は自分の番だと察し、否定する様にカース王子は叫んだ。


「ち、父上!侯爵は今、私を暗殺者に狙わせると言いました!すぐに捕縛して下さい!」


国王と宰相は首を振った。


「隣国との国境には侯爵の軍が今も詰めてくれている。責任者の侯爵が捕縛されたとなれば隣国が攻めてくるぞ!貴様にその責任が取れるのか?元々は貴様が犯した罪だ。責任を取れ。貴様の命と侯爵なら私は侯爵を取る。宰相はどうだ?」


「そうですな。もし、カース殿下が誠実に婚約者と向き合い、侯爵の方に問題があれば擁護しましたが、今回は完全に自業自得ですからなぁ~。公務も婚約者に任せっきりで、逆に、殿下を御守りするメリットを教えて欲しいくらいですな」


真っ青になってカース王子は震えた。


「そ、そんな!?」


「ああ、そうだ。城に閉じこもってもいいが、仕事を真面目にしている間は見逃そう。もし、怠けたり楽をしようと思うならいつでも貴様を殺す!」


「ひぃい!?」


ついにカースは恐怖で気を失った。


「はぁ~こんな不良物件を押し付けられなくて喜ぶべきか・・・」


「本当にここまでの愚者とは思っていなかった。シオン令嬢がやった公務を自分の手柄として報告していたのだろう。側近達も全員見直しだな。嘘の報告をしおって。グラン侯爵、本当に申し訳なかった」


「我々で何かできることがあれば何でもおっしゃって下さい。できる限りのことはしましょう」


10年前に隣国が攻め込んで来た時、かなり追い込まれたが、侯爵の騎士団が敵を分断し、敵に大打撃を与えたことで我が国は救われた。その褒美としての第二王子への婚約だった。

すでに王太子には婚約者がいたからだ。


グラン侯爵には国王や宰相も頭が上がらないのだ。

しかし、侯爵には権力欲もなく、愛国心の強い人物の為に、国王達は侯爵を優遇しているのだ。



話し合いが終わり家に帰ると娘のシオンと妻が出迎えてくれた。


「王家との話し合いは問題なく終わった。お前の無罪が証明されたよ」


「ありがとうございます!お父様」


キラキラした目で父親を見つめた。


「あなた、お疲れ様でした」

「これくらい何でもないよ」


侯爵は妻の頬にキスを落とした。


「………やっぱりお父様はステキです。私もお父様と結婚したいです!」


ピキッ!と空気が凍った。


「………シオン?血の繋がった親子では結婚出来ませんのよ?それに、私の旦那様を横取りしようとすれば娘だろうと容赦しません!」


「お母様は娘が可愛くないのですか!」

「それとこれとは話し別です。少し痛い目をみますか?」


母親はゴゴゴゴゴッッッと魔力を込めた。


「私も負けません!」


シオンも魔力を溜めて周囲に地響きが起こった。


「やめなさい」


ゴチンッと頭にゲンコツが落ちた。

無論、手加減してある。


「ふぎゃっ」

「シオンはクズ男に傷付けられて今はまだ精神が不安定に過ぎない。もう少し療養するように」


涙目で、はいと答えた。


「それに、私にはおまえしか目に映らないのだから娘に張り合うなよ?」


ポッ!?


「ごめんなさい。あなた」


お母様はお父様の腕を組んで中に入っていった。


「くっ、やっぱり結婚するならお父様みたいなイケオジが最高か!」


色々と拗らせたシオンの婚活はこれからである。




【END】



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― 新着の感想 ―
クズでカースなカース王子が真面目に仕事をするとは思えない。 と、思われ城では着々と葬儀の準備がされていたりして。 もしかしたらカース王子は忠実だったのかもしれない。 自分の名に恥じない人間であろうと。
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