3. 一緒に
――その時だった。
「奈々ちゃん……!」
向こうの方から息を切らして――はるくんが走ってきた。
「……はるくん」
「彼が来てくれたようだな」と麻生くんが言って立ち上がる。
「麻生……」
「竹宮……梅野さん、泣かせるんじゃないぞ」
「……わかってる」
はるくんがさっと私の隣に座る。
「じゃあな、梅野さん。また歴史の話……しような」
そう言って麻生くんは駅に向かって行った。
「奈々ちゃん……麻生に何か言われた?」
「お、思い出話をしただけだよ」
「それなら良かった」
はるくんはほっとした顔をする。そしてゆっくりと私を抱き寄せた。
さっきまでの涼しいのも悪くはないけど、やっぱり彼の腕の中が一番あたたかくて好き……私は目を閉じて彼のぬくもりを感じていた。
「奈々ちゃんが麻生と一緒に帰ったって聞いて、心配してた」
「……どうして?」
抱き寄せる腕がほどかれ、はるくんは私を見て言う。
「中3の2学期で、奈々ちゃんの隣が麻生だっただろう? あの時に仲良さそうに話してたから……こう見えて僕はずっと気にしてたんだよ」
はるくんが私と麻生くんの仲を気にしていたなんて……全然知らなかった。
「だからその……奈々ちゃんのこと、取られたくないって思って……気づいたら君のところばかり行ってたよな」
「そうだったんだ……」
私たちはベンチから立ち上がり、手を繋いで歩き出した。
「奈々ちゃんは気づいてないかもしれないけど……今日の君は男子に注目されてたんだよ」
「え……それはないよ……」
はるくんは私を褒めすぎている。私のどこに注目される要素があるんだろうか。確かに麻生くんや他の男子たちとも喋ったけど……。
「……嫉妬なんてかっこ悪いけど、ずっとヒヤヒヤしてたんだから」
「はるくん……」
私は繋いだ手をぎゅっと強く握った。
きっと私とはるくんを「釣り合わない」って言った子たちも、誰かに憧れたいだけなのかもしれない。私は私を、ちゃんと信じたい。
涙を拭いてくれる手は――ひとりだけでいい。
「ありがとう、はるくん……」
「奈々ちゃん……」
私は深呼吸をして言う。
「これからも、よろしくね」
「こちらこそ……奈々ちゃん」
夜風に揺れた髪が、少しだけ、あの日の私を撫でていった。
成人式が終わり、大人として一歩踏み出した私たち。
これからも――一緒に成長していきたい。
そう思いながら、私たちは笑い合った。
終わり
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