エレベーター
昨秋、メトロ文学館に応募した作品です。
「上へまいります」
真鍮にとけこむ
つやつやと奥ゆかしい声
蛇腹のとびらが閉まる
きらめく光を逃がさぬように
エレベーターガールはレバーを握る
歴史のバトンを落とさぬように
想い出を崩してしまわぬよう愛をこめて
上昇してゆく金の籠とは反対に
私の心は地中深くにもぐりこんでいく
めまぐるしく紡がれてきた歴史の地層に
戦火も世紀もこえてきたトーキョーの中へ
*
お読みいただきありがとうございます。本作は、東京メトロ沿線の高島屋本店にある、手動エレベーターをモチーフにしています。