7星 桃子入団、ラグナードの証
音楽が鳴り始めるとガンバル号の動きが止まった
「何かイケイケな曲だね、それになんだろう…止まった?」
《…これは… ボクが…想定している科学技術より……そ、相当上かもしれないよ……》
「え? そうかな 普通だと思うけど」
《…だからだよ…現代の技術を…さ、再現出来てるって事だから…》
「ああ…言われてみればたしかにそうだね 不思議だねぇ」
同じ知識量があっても興味が無ければ反応も変わるらしい、桃子が少し不思議がっていると、コンコンと扉をノックする音が聞こえて、扉越しにヴェイドの声がする
「桃子〜 飯行こうぜ〜」
「あ!うん!」
桃子が急いで部屋から出る
「ところで、この音楽は何?」
「ああ これかぁ、ロッドが飯の時間は音楽聞きながら食うんだっつって勝手に流してんだ つーか行くぞ、俺腹減ったよ」
「うん、わかった」
桃子の部屋の隣に食堂があるらしい、外に出て通路を歩いていると食欲を唆るいい香りがする、どんな食事だろうか、桃子は異世界の食事にとても興味が湧いた
食堂の扉を開けると大きなテーブルがあり食事がテーブルいっぱいに置いてある、奥にヴォルガンが座り、左側にはエドとイザナ、右側にはグランツとロッドが座っている、ヴェイドが左側の奥に座った
桃子は右側の手前が空いているのでそこへ座った、するとヴォルガンが大きな声で言った
「よし!では食事を始める! 奪った命に感謝して食え!」
そう言うと、皆が一斉に目の前の食事にがっついた、なんと荒々しい食いっぷりだろうか
「桃子さん、早く食べないと無くなるっすよ」
「え、ええ!? い、いただきます!」
桃子もがっつく事にした、初めての異世界料理は瞬く間に消えていく物のようだ じっくりと味わって食べたいな、色々と食材の事や料理の事なども聞きたいな、そう思いながらも、とにかく口に運ぶ事にした、鳥の肉やパン、スープにサラダ、たぶんそうなんだろうなと思いながら何の肉なのか聞きもせず食べる
ヴェイドが「親父!それ俺の!!」とヴォルガンと揉めながら慌ただしく食べている、桃子はこの状況に少し慣れ始めた 周りを観察する
皆の食べる姿が個性的である、ヴェイドとヴォルガンはまるで野生児のようにがっついている
グランツはテーブルに身を乗り出して進みながら食べている、イザナは黙って食べながら料理をタッパーに入れてお弁当を作っている
エドはとても素早くそして行儀よくナイフとフォークで綺麗に食事をし、ロッドは音楽を楽しみながら何故か手づかみなのに食べづらそうにしている
桃子は「変な人達だけど、ちょっと楽しいかも」などと考えながら食事を楽しんだ
あっという間に食事が終わった、皆で食器を片付けて洗い物を始めた 食堂の奥に厨房があるらしい 食事の時とは違い、皆が連携の取れた動きである
桃子も手伝い皿を拭く、隣でイザナが洗った皿を渡してくるがとても眠そうだ 勢いよく食べたせいだろうか皆眠そうにしている
洗い物はすぐに終わり皆が席に着いた、ボスが桃子に色々と聞いてきた 桃子が元の世界について話しをすると皆が驚いている
「おお!夢のような世界であるな!言論の自由とは!」
「え!?じ、じゃあ その世界には人間と動物しか居ないんすか!?」
「うん 一度だけ別の世界と繋がって変なのが入り込んで来たことはあるけど 基本的にはそうだね」
エドは政治の話、グランツは科学の話、ヴェイドは宇宙の話、イザナは意外にもアニメに興味を持った、ロッドはなんでも驚いて見せた
桃子もこの世界の事を色々と聞いてみた、そしてただの居候では申しわけなく思い、ラグナードの仕事を手伝いたいと思った
「あの、皆さんは賞金稼ぎをしてるんですよね? えっと…オートマタ? あの変なロボットを捕まえて、アウレオラっていう組合に持っていく…? 私にも何か出来る事ありますか?出来れば手伝いたいんですけど」
ラグナードの皆がボスの顔を見る、ボスが真剣な表情で桃子に語りかけた
「桃子よ、俺の仕事を手伝いたいなら、1つだけルールがある」
桃子はその真剣な口調を聞いて背筋をのばした
「俺達ラグナードは家族だ、敬語はやめろ」
「へ? それだけですか?」
「こいつぁ重要な事だ、俺は家族のためなら死んでも守るが、部外者は守れねえ 俺の仕事を手伝うって事は俺の家族になるって事だ、家族に遠慮なんかするな」
何て不器用な理屈だろうか、しかし桃子はその理屈が気に入った 桃子はかつて魔法少女だった頃、この男と似たような理屈を捏ねる奴と出会い、幾度となく助けられた過去があるからだ
魔法少女時代 ーーーーー・・・・
最初に闘った敵は『悪魔幹部バアル』が作り出した怪人、その悪魔幹部バアルは毎回怪人を作っては桃子の前に現れた、しかし十数回目辺りから姿を見せなくなった、その代わりに他の悪魔幹部が何度も桃子を襲った
戦いの最中、その他の幹部から聞いた話ではバアルは魔法少女を倒せないが故に降格させられたのだとか バアルは幹部の中では最強の部類で四天王の1人だ、他の幹部からしたら目の上のたんこぶ的な存在だったらしい
その後も悪魔幹部達との戦いが激化、毎日のように戦いは続いた、そしてついには全悪魔幹部8名が襲いかかって来たのだった、1人1人なら大した事はないが数が多すぎる
その数の暴力で桃子が魔力切れを起こし絶体絶命の大ピンチ
その時だった、8名の悪魔幹部達から一斉に放たれた攻撃を跳ね除け、堂々と立ちはだかる悪魔が1人、桃子の目の前に現れた
《「まさか… バアル… ?」》
「ようボロ雑巾ちゃん 俺様のイカした登場に感激しただろ?」
《「何であんたが… くっ…」》
「数少ない喧嘩仲間だからな 居なくなるとつまらねぇ だからよ、俺様と契約しろ 契約しねぇと守れねぇ」
《「あんた…敵幹部じゃなかったのかい…?」》
「幹部はもう辞めたぁ 今の俺様は、ただの悪魔だぜぇ?」
《「ははっ… バカじゃないのかい…? ちょっと感激したわ…」》
「じゃあ契約だ いつでもいいから喧嘩しようぜぇ そん代わり… 俺様が死んでもお前を守ってやる」
《「わかった契約する… さあ ブチかまそう!」》
ーーーーー・・・・
あの頃の記憶がフラッシュバックして嬉しい気持ちになった、そして決意した
「わかりま… ううん、わかった!」
その答えを聞いてボスが微笑む、皆もホッとした様子である
「よし! それでは! 桃子をラグナードの一員と認める! ヴェイド!アレ持って来い!」
「そうなると思って持ってきてるぜ親父」
ヴェイドはポケットから黒地に斜めの白のラインが入ったバンダナを出し、桃子に手渡した
「桃子!これがラグナードの証だ! 大いに励め!」
「うん! ありがとうボス!私頑張る!」
桃子はバンダナを使ってポニーテールを作った ロッドがそれを見てテンションを上げている
「おお!ポニテいいっすねぇ!」
桃子はロッドの話し方に疑問を持った
「あれ? そう言えばロッド君は敬語でいいの? ねぇボス?」
ボスは桃子の質問で何かを思い出し豪快に笑って答える
「だっははは!ロッドはこれでも精一杯努力してるんだ! なあロッド!だっははは! うける!」
ボスは腕組みをして何やら自慢げである、ヴェイドがテーブルに立て肘を付いてロッドをニヤニヤしながら見て答える
「コイツいい所の出のお坊ちゃんだからな タメ語を知らねぇんだ 笑えるぜ」
「な〜に言ってんすか、ちゃんと出来てるっすよっ ふんっ」
そう言ってロッドが頬を膨らます、なぜこんな所にお坊ちゃんがいるのかはさて置き 桃子は今日の事を色々思い出してみた、そう言えばそんな感じの印象をチラホラ見かけた記憶がある さっきは無理して手づかみで食事をしていたのだなと思うと、少し微笑ましく思えた
読んで頂き感謝です( *・ω・)
そんなあなたの今日の運勢は末吉です( *・ω・)