6星 魔導科学?魔導蒸気機関
ルクス・リムの詳細は飛ばしても問題ありません( *・ω・)
イザナが扉を開けて桃子が中に入ると、目の前がパァッと明るくなる キラキラとしていて心地の良い香りが桃子を包む 無意識に深呼吸していまうほどだ
中を見るとそこはクラシックな可愛らしい部屋 光沢のあるアンティークな鏡の付いた化粧台やタンス ベッドはこれまた可愛らしいアンティーク調のシングル 天井には細く輝くシンプルなシャンデリア
家具は倒れないように打ち付けられいるがとても丁寧、固定している留め具すらクラシックで可愛い、引き出しがキラキラとした細いチェーンで固定されている
奥行き3.6m、目の前の壁長9mのお椀型の空間に、この世の可愛いが全て詰まっている そんな感覚である
桃子の目が輝く、なんて可愛らしいのだろうか このスカしたクールビューティの部屋がこんなにも可愛いなんて、桃子は抱きしめたい気持ちを抑えた
イザナは桃子のそんな興奮している表情を読み取り、複雑な気持ちであった
「あぁ… とりあえず下着と、あれやこれやを渡しとくから 後は足りなくなったら言いな」
「はい!ありがとうございます!」
イザナはふと思った、ガンバル号のどこに、このちょっと頭のアレな子を置いとくのかと
「ところで アンタ部屋は決まってんのかい?」
「え、いえ、わかりません…」
イザナは片手で髪をバサバサと整える
「しゃーないねぇ ボスに聞いてみるか 付いてきな」
「はい!」
桃子はイザナをとても気に入ったらしい、こういうギャップに弱いというわけでもなく、頼れる存在という安心感が桃子の心を引き付け勇気づけてくれるのだ
桃子はイザナから渡されたあれやこれやを抱きしめた
イザナと桃子は部屋を出て、ガレージへと向かった そこには大変疲れた様子で大の字で寝そべる男が2人いた ヴェイドとボスである イザナがいつもの事のようにため息をつく
「はぁ ちょっとアンタら こんな所で寝ないでよね 作業の邪魔だよ」
「よおイザナ…はぁ…はぁ文句なら…親父に言ってくれ…がぁ…はぁ」
「馬鹿野郎!はぁ…はぁ イザナが俺にそんな事言うか!」
「言うよ ところでボス、この子どうする? 部屋はどこにするんだい?」
「んん? なんだあ? この嬢ちゃんは」
ボスが何も知らない様子で桃子を見た それを見たイザナが察する
「ヴェイド! アンタ桃子の事何も話してないのかい?」
ヴェイドが起き上がり思い出したように話し出す ボスも起き上がり胡座をかいて話しを聞く
「あ!いっけね忘れてた… 親父、実はカクカクシカジカでな!」
「なに!? マルマルウマウマってか! よ〜しわかった!」
「わかるわけ無いだろバカ親子」
イザナがボスに説明をして、桃子がガンバル号で暮らす事の許可を求める、ボスは快く受け入れた
「よ〜し桃子!好きなだけここに居ろ! 俺はラグナードのボス!名前はヴォルガンだ! よろしくな! だっははは!」
「ヴォルガンさん…よ、よろしくお願いします」
悪い人では無さそうだが、先程ヴェイドとボスの殴り合いを見た後なので桃子は少し警戒している そしてイザナが話しを戻す
「で、桃子の部屋なんだけどね どうするんだい?」
ボスは胡座をかいて腕組みをして右手で髭をもしゃもしゃと触って考える
「ん〜? おっ! 空いてる部屋があるじゃねぇか!」
「空いてる部屋って… ボス、あそこはルクスリムの予備倉庫だよ?」
ボスが言うには、予備のルクスリムは当分の間は増えないから大丈夫だと言う、イザナは困った顔をしていたが仕方ないと諦めた
こうして桃子の寝室が決まった
イザナが部屋を案内してくれる、操縦室の隣にその部屋があるらしい、ついでにヴェイドが布団を持って後を付いてきた
「ここがルクスリムの予備倉庫だよ もしかすると予備を積むかも知れないけどね そん時はまた考えよう」
「何から何までありがとうございます あの…ルクスリムってなんですか?」
「ん?ああ ルクスリムっていうのはね…」
イザナが専門用語を連発して桃子は頭がパンクしそうになるが、スルトがわかりやすく教えてくれた スルトの言葉は他の人間には聴こえないようだ
つまりは蒸気機関を動かすために使われる燃料のような物らしい、この世界では魔導蒸気機関と呼ばれる物が主流のようだ
【ルクス・リムの性質と生成】
ルクス・リムは、純粋な魔粒子(魔力)を特殊な魔導装置で高密度に圧縮し、液化したもの この液体は以下のような特性を持つ
見た目:妖しく輝く黄緑色の液体
高いエネルギー密度:少量で膨大なエネルギーを放出可能
揮発性:常温で徐々に気化するが、特定の触媒や熱で急速に反応する
安全性:熱と触媒(粉末化した魔晶石)両方を加えなければ急速に気化することはない
【ルクス・リムを作る装置】
『魔光圧縮装置』『通称:光圧機』は、魔導技師が空気中から魔粒子を抽出し、それを高圧縮チャンバーで液化する仕組み
この過程で、魔粒子の波動を安定させる術式回路や安定剤、冷却用の術式が使われる
【自然界からの採取】
主に魔粒子濃度の高い場所の大気中や地脈に漂う魔粒子を「ルクス・キャプチャー」と呼ばれる装置で収集・採取され、大型のタンクに溜める、この状態の魔粒子はまだ圧縮されていない気体なので危険性は無い それを高圧縮チャンバーへ注入する
【高圧縮チャンバー】
耐魔性の金属(ミスリルやアダマント製)で造られた円筒形の容器に魔粒子を送り込む 内部には魔粒子を安定させる術式が刻まれており、外部からの魔導術式干渉を防ぐ
『振動共鳴』
チャンバー内で低周波の魔粒子波を発生させ、魔粒子を互いに引き寄せる この共鳴は、特定の水晶振動子を用いて調整され、魔粒子を高密度に凝縮させる
『冷却システム』
濃縮過程で発生する熱を抑えるため、氷結術式が使われる 温度が上がりすぎると魔粒子が不安定になり、爆発のリスクが高まるため、このステップが極めて重要
【ルクス・リムの生成、製品となるまでの流れ】
『高圧注入』
高圧縮チャンバー内で圧力をさらに高め続け、魔粒子の動きが制限され、魔粒子同士が互いに近づくことで液体状態へと相変化する この時、輝く黄緑色の液体「ルク・スリム」が生成される この液化には安定剤として「アルカノ・エキス」(希少な植物から抽出した物質)が微量加えられる
『安定剤の添加』
ルクス・リムは自然状態では不安定で、揮発しやすい性質を持つ これを抑えるため、安定剤「アルカノ・エキス」が混ぜられる これにより、常温でも一定期間保存が可能になる この希少な植物は魔導科学研究機関『アウレオラ』により管理されている
『封入』
生成されたルクス・リムは、魔粒子漏れを防ぐ特殊な金属容器『ルクス・ボンベ』や『ルクス・タンク』に封入される 容器の1部側面には特殊なガラスで中が見えるようになっており、容器内部に封印術式が施されているのがわかる、この術式が輸送中の事故を防ぐ
ルクス・ボンベ:使う用途により大きさが変わる、手の平に収まる物から見上げるほど巨大な物まで、サイズは様々である ルクス・タンクも同様の仕組みで巨大なサイズによりそう呼称される
魔力計:魔粒子の濃度や圧力をリアルタイムで測定する計器 針が魔粒子波に反応して揺れるアナログなデザイン 使用する際の圧力を調節するために必要な部品(別売り)
魔導技師:高圧縮チャンバーに刻む術式の精度が生成効率を左右するため、高度な魔導科学知識を持つ職人が不可欠
【魔導蒸気機関の構造と仕組み】
この世界の蒸気機関は、桃子の世界の伝統的な石炭ベースのものとは異なり、ルクスリムを燃料とする「魔導蒸気機関」として設計されている
以下にそのメカニズムをステップごとの説明
『燃料供給』
ルクスリムは耐魔性の金属(ミスリル製の物など)のタンクに貯蔵され、精密な注入弁を通じて機関の燃焼室に送られる この弁は魔粒子の微細な変動を感知し、流量を調整する
『燃焼と気化』
燃焼室では、ルクス・リムに熱術式と触媒(粉末化した魔晶石)を加えることで急速に気化させる この気化過程で魔粒子が解放され、高圧の「魔蒸気」が発生する
魔蒸気は通常の水蒸気よりも軽く、エネルギー効率が高いため、小型の機関でも大きな力を生み出せる
『ピストン駆動』
魔蒸気はピストンやタービンに送られ、機械的な運動エネルギーに変換される このピストンは、魔粒子の残滓に耐えられるよう、魔粒子耐性のある合金で作られている
ピストンの動きは歯車やクランクを介して、車両や工場機械に動力を供給する
『排気と再利用』
使用後の魔蒸気は完全に消滅せず、低濃度の魔粒子として排気される この排気魔粒子は「ルクス・コンデンサー」で回収・凝縮され、再びルクス・リム生成に利用される循環システムが構築されている
『ルクス・コンデンサー』
冷却コイルや凝縮用の術式が組み込まれ、気体の魔粒子を液体や高密度気体に変える
魔導蒸気機関の効率向上や後処理として機能する
使用タイミング
1、魔導蒸気機関のシリンダーから出た魔蒸気を、パイプを通じて独立した「ルクス・コンデンサー」に送る コンデンサー内で魔蒸気を冷却・凝縮させ、再利用可能なルク・スリムに戻す
利点:シリンダー自体を冷却する必要がなくなり、高温高圧を維持したまま連続運転が可能となり効率が大幅に向上する
2、魔導蒸気機関稼働後の排気処理段階で登場し、資源の無駄を減らす 魔蒸気タービンやシリンダー内の魔蒸気を冷却・凝縮させ、再利用可能なルク・スリムに戻す
こんな説明を聞かされたのだからたまったもんじゃない、桃子は魔導科学について質問することを恐れた 頭から煙が出るほどだ スルトが居てくれて感謝しかない
「ご説明ありがとうございますぅ…」ぷすぷす…
「別にいいよ ほらヴェイド、布団置いたら出ていきな」
「んだよ 人使いが荒えな、別にいいけどよ」
「えっと…ヴェイドは今の説明わかった?」ぷすぷす…
「は?当たり前だろ常識だぜ」
それを聞いてよほどショックだったのか、桃子はもう少し頑張って勉強しようと思った ヴェイドが布団を置いて倉庫を出た
そうこうしていると、ガタガタとガンバル号が動き出した
「わわ 移動してる?」
「森の近くは危ないからね とりあえず夕飯までここに居な、アタシはまだ仕事があるから行くよ」
「はい!ありがとうございました!」
イザナは少し困った顔で微笑み、倉庫の扉を締めて何処かへ行ってしまった
「ふぅ 異世界の人達って皆親切だな〜」
《そうだね 桃子はあのイザナって人が気に入ったようだし、良い人が多くて僕達も少し安心したよ》
「でもこれからどうしよう…」
《とりあえずは 早くこの世界に慣れることだね、どうやら魔導科学の発達した世界である事はわかったからね》
「魔導科学ねぇ、スルト達の居た世界みたいな感じ? 神の広場だっけ」
《ん〜少し違うかな、この世界の方が科学が進んでいる印象だからね、魔力が基盤にある世界では珍しい事だ 魔導蒸気機関なんて面白いね》
「ん~難しい事ばっかでよくわかんないな… あ!リル君はこういうの詳しそうだよね」
そう言うとスルトの声とは別の声が聴こえてくる、おどおどとした男児の声だ
《……よ、呼んだ…?》
「リル君はさっきの話わかった?」
《…う、うん わかるよ… よかったら…思考リンクしとこうか…? ボ、ボクの知識が…桃子に流れるんだけど…》
「それ助かる〜! 思い出すな〜、子供の頃それで満点取ったっけ、カンニングしたのかって親に怒られたけどね ははっ」
桃子の左耳のピアスがキラリと輝く、すると頭の中に莫大な情報が流れ込んできた、さっきまでちんぷんかんぷんだった魔導科学がすっきりと理解出来るようになった
「すっごいね! やっぱリル君は頭いいよ本当、これで何とか馬鹿にされなくて済みそう ありがとうリル君!」
《……ど、どう…いたしまして…》
しばらく精霊達とお話をしていると、ガンバル号の車内スピーカーから音楽が流れてきた 聴いたことの無い音楽だがロックな曲調である、演奏だけで歌は入っていない
読んで頂き感謝です( *・ω・)
そんなあなたの今日の運勢は末吉です( *・ω・)