3星 この世界の歴史とオートマタ
桃子はジャンプしてクレーターから出た、ラグナード3名は桃子の周りに駆け寄って集まる サソリの溶けた残骸を見て関心する者や呆れる者、怒りだす者
「うむ、これは凄まじい威力であるな」
「う〜わ…これは賞金にはならなそうっすね」
「な!? お前何してんだ! 名を名乗れ!」
《「私の名は桃子…音無桃子だ ところで…今の機械が何だかわかるかい?」》
「え?オートマタを知らないんすか?」
「知らねぇわけねぇだろ! お前のせいで木っ端微塵じゃねぇか! どうすんだよこれ!」
「待つのだ2人共、何やら事情があるやも知れん 桃子殿と言ったか、よければ事情を話してみてはくださらんか」
《「オートマタ… 実は…私は別の世界から来たばかりでね、まだこの世界の状況がわからない、邪魔したのなら謝る」》
「別の世界? 何言ってるんすか?この人」
「う~む、もしや転移者か… 極稀に別の世界からこの世界へ人が運ばれて来ると聞いた事がある…なるほど それはさぞお困りであろう」
「そ、そういう事なら 仕方ねぇ…のか?」
エドが親切にも桃子にこの世界の事を教えてくれた、聞くところによれば
その昔、約1000年も前の事
この世界には魔族と人間が暮らしていた 魔族は優れた魔導技術を有していたが、人間が扱える魔導技術は少しの火を出したり水を浄化したりと、生活に役立つ程度のものばかり
長寿であり圧倒的なまでの魔力を持つ魔族に人間は怯えながら暮らしていた
そんな中、各地で魔族が人間を襲い始めた、人々は恐怖し女神に救いを求めた
しかし事態は悪化する、突然魔族の王『魔王』がオートマタを引き連れ現れたのだ、そしてオートマタは人間を襲い出した
これにより人間と魔族は完全に対立 女神を信仰する『オルビスティア聖団』が『攻撃魔法』と『防御魔法』を独自開発し、それを記した『魔導書』を各国に提供
バラバラだった各国が魔族に対抗すべく結束し『オルビスティア連邦』が樹立、人間達は魔導科学を発展させながらオートマタと戦っていた
それから数十年が経ち、女神の加護を持つ『勇者』が現れ、加護の力によって魔王は敗れた これにより全てのオートマタは停止、魔族達は『魔界』と呼ばれる未開拓の地へ逃げ込み、人々に平和が訪れた
その後、魔導科学が発展して人々の暮らしは豊かになっていった
しかし今から250年前、隕石と共に再び魔王が復活し、停止していたオートマタが人間を襲いだした 『オルビスティア連邦』は魔導科学研究機関『アウレオラ』を設立し、いつか現れる「女神の加護」を持った勇者のサポートをするために、オートマタの生態研究を始めた、オートマタには賞金がかけられ人間達の中には賞金稼ぎが増えた
ラグナードはその賞金稼ぎで生計を立てている
《「なるほどね…」》
「桃子殿、その様子では行く宛も無かろう ここらは危険ゆえ、我らと共に行動してはどうか 詳しい話しは基地で伺おう」
「ん〜…だなっ 困ってんなら仕方ねえ 乗ってけ」
「たしかにここは危険っすね 野宿するにも森にはオートマタがうじゃうじゃ居るっすから」
《「そうか…わかった お言葉に甘えるよ それじゃ、ちょっと後ろを向いてくれるかい? 着替えるんでね」》
「ここで? 今からっすか? 大胆っすね〜」
「はあ!? な、なんで着替えんだよ!」
「いいから言われた通りにするのである」
ヴェイドが恥ずかしそうに後ろを向いて両手で目を覆う、ロッドは覗こうとするが、エドにゲンコツされて仕方ない様子で後ろを向いて片手で目を覆った
《「…武装解除」》
桃子の頭上から8重の魔法陣がクルクルと降りてきて、元のスウェット姿に戻った
「え〜っと…もういいよ?」
ラグナードの3名が振り向き、桃子の変貌ぶりに驚きを隠せずにいた スウェットにサンダル、ボサボサの長い髪に眼鏡姿、皆が桃子に顔を近づけ興味深く凝視する
「え!? さっきのイケイケの姉さんはどこに行ったっすか!? てか着替えるの速いっすね〜」
「お前、本当にさっきの奴なのか?」
「うむ、なるほど 見知らぬ服装に早着替え…これは転移者で間違いなかろう」
「ど、どうも ははは…(それはどういう理屈なんだろう…)」
ヴェイドが顎に手を添えてさらに顔を近づける、その無神経な行動に桃子は少し困惑する
「え な、なに?…」
「お前さっきとキャラが全然違うな 別人じゃねぇか?」
「別人じゃないわよ ちょっと事情が…ってか それより本当に付いてって大丈夫なの?」
ヴェイドが何も気にしない素振りで答える
「ん? 仕方ねえだろ、こんな所に置いてけねえからな」
「…あ、ありがとう」
彼らが一通り驚いて冷静に戻った所で桃子を装甲車へと案内する
「よし、じゃあ行くか 後で親父にも報告しねえと まあ大丈夫だろ」
「報告はヴェイス兄さんに任せるっす 面倒くさそうなんで」
「うむ、では向うとしよう 桃子殿、付いて来るのである」
桃子は言われるがまま彼らの後を追い、装甲車へと向かって行った
近くで見るとバカにデカい、地面から船底まで2mはある
桃子達は装甲車の後部にたどり着き、ヴェイドが大きな声で「開けてくれ」と言うと、プシューと蒸気音を立ててスロープ状の可動式通路がシリンダーと共に開いて降りてきた
本来は積込用なのだろう、トラックが余裕で入れるほどの横幅がある、そこから中へと歩いて登るとトラックが余裕で2台は入れるであろうスペースが広がっていた 奥行きが15mほどある
端には工具やボンベが並び、壁には配管やメーター、バルブが付いている
高さ5mほの天井にはクレーンがあり、フックがぶら下がっていた 下を見てみると、床にタイヤ痕がある、ここはガレージのようだ
全員がガレージの中へ入ると、入口辺りから蒸気が吹き出しスロープが閉じた 天井にはライトがあるが不思議と眩しくない、柔らかい光が空間を包む
「うわ〜 なにこれすっごい」
桃子がその光景に圧倒されているとエドが両手を腰に構え自慢気に説明する
「ここが我らラグナードの基地『ガンバル号』である! 昔ボスが使っていた宙船を改造して陸戦用にした物だが… ボスのネーミングセンスゆえツッコミは控えていただきたい」
「あ、はい…わかりました(あっぶない…ツッコむ所だったわ)」
読んで頂き感謝です( *・ω・)
そんなあなたの今日の運勢は小吉です( *・ω・)