1星 元魔法少女の憂鬱
音無桃子26歳独身
かつて混沌とした世界を救った元魔法少女モモコは、色々と疲れていた
友達は皆結婚して子供が出来て疎遠になり、現在は近所のコンビニでバイト オシャレも諦め、髪は伸ばしっぱなし、服はスウェット、靴はサンダル、コンタクトは怖いので眼鏡を掛けている 疲れ切った表情を浮かべながら今日もバイトを終えるのであった
「店長 お先上がりまーす…」
「桃子ちゃん、夜遅くまでおつかれ また明日もお願いね」
「うぇーす…」
コンビニを出て家に向う、外は暗い、コンビニの前で若者4人がカップ麺を食べている、その匂いが桃子の空腹感を逆撫でる
家までは徒歩25分、実家暮らしなので帰れば食べ物にありつける、考える事と言えば食べ物の事と、過去の事、どこから狂ってしまったのだ私の人生は、あれから精霊達からも何の音沙汰もない、と桃子は憂鬱であった
(はぁ…世界救ってこれか… お腹減った)
桃子がお腹を擦る、帰宅途中はいつもこんな感じだ、あの戦いは何だったのか、世界を守っても感謝されるわけでもない、皆何も覚えてない、ため息を吐きながらボーっと夜道を歩く元魔法少女モモコ
(…おっと危ない、赤信号だ)
深夜の交差点、田舎だからか車は来ない しかし交通ルールは守る、それが魔法少女モモコである
オシャレしたい、彼氏が欲しい、友達とオタク話しがしたい、精霊達と遊んでた頃が懐かしい、あの頃は敵と戦って生き生きとしていた、もう全てがキラキラしていた
(敵ぶっ倒して精霊達とハイタッチなんかしちゃってさ 変身がバレそうになった時は焦ったっけ、ははっ はぁ… 思い出すと余計に虚しくなるな… やめよ)
歩行者側の信号が青になり、桃子はトボトボと歩きだす
その時だった、トラックのライトが桃子を照らし、猛スピードで突っ込んできた
「え…やば!!」
居眠り運転だろうか、トラックはブレーキを踏む素振りもなく突っ込んで来た、桃子の目の前まであと一歩という所、その恐怖に目を瞑るが何も起きない、どこも痛くない、不思議な現象に戸惑いながら目を開ける、すると
そこは別の場所だった 荒野のような場所が広がっている、風が静かに草木の香りを運んで来る
右側を見れば遠くの方に大きな山脈があり、左側には背丈ほどの茂み、少し離れた所には森林が広がっている
「うそ…なにこれ てか明るい…」
《久しぶりだね桃子》
懐かしい声が聴こえた、頭の中で過去の回想シーンが走馬灯のように頭をよぎる 驚きと懐かしさが同時にやって来た感覚だ
桃子は思った、そんなはずはない、あの戦いで自分は魔力を失い、精霊を見ることはおろか、声すら聴こえなくなったのだから
期待と不安が同時にやってきた、ゆっくりと後ろを振り返る
そこには、かつて共に戦った精霊スルトが居た あの時のヌイグルミのような見た目ではないが感じる、懐かしい魔力 共に戦っていた頃とは違い、今目の前に居るスルトは光の玉のようだ
「その声…スルト!? え、なんで!?」
「そう 僕だよ」
桃子はその懐かしさと感動で泣きそうになり、スルトを抱きしめようとしたが、今のスルトは光の玉 そして今自分が置かれている現状を把握するため、一旦浮足立つ気持ちを抑えることにした
「も、もしかして またゲートが開いたの?」
《いいや違うんだ 桃子は力を失って見えなかったかも知れないけどね 僕達はずっと桃子の側にいたのさ》
「僕達? スルト以外の精霊も居るの?」
《そうだよ 桃子がトラックに轢かれそうだったから 僕達の力で桃子を移動させたんだけど どうやら別の世界に来てしまったようだ 不思議な事に、この世界は魔力に満ちている》
《あたしも居るわよ》《おいらも》《…ぼ、ボクも》《俺も》
「ええ!? あんた達…なんか光の玉みたいになってるけど大丈夫? てか別の世界!?」
《ああ、この姿はね 地球とは違って、この世界では魔力量が多くて本来の姿に戻ってしまうみたいでね、だからこうやって自らを封印して小さくなる必要があるんだ この世界を破壊したくはないだろ?》
「そっか…そりゃヤバイわね…」
《正直この姿も疲れるんだ だから『ペンタチャーム』で居させてもらうよ》
そう言うと精霊達は桃子の左耳に集まり、5連のピアスとなって落ち着いた
これが魔法少女モモコの変身アイテム『ペンタ☆チャーム』である、5柱の精霊の魔力が桃子に流れて来るのだ
「なんかこの感じも懐かしい で、元の世界に戻れないってどういうこと?」
《ああそれがね すぐ地球に戻ろうとしたんだけど この世界自体に結界が張ってあって戻れないんだ 困ったね》
「困ったねって…え、じゃあ私達は…?」
《そうだね しばらくこの世界で生活をして 結界を壊してから元の世界に帰る ってことになるね》
「えええ!?」
驚きの連続でパニックになりながら、昔ながらのスルトの落ち着きように懐かしさを覚える
桃子からしてみれば小学生以来の再会である、童心に帰り言葉遣いが少し子供っぽくなる
精霊達とそんな会話をしていると、森の方が騒がしくなってきた、大勢の鳥が羽ばたく音 木々が倒れる音 何かが轟音を撒き散らしこちらへ向かって来る
「え!なになに!? なんかヤバイ感じ!?」
《離れた方が良さそうだね》
「だよね!? うわわ! 来たあ!!」
桃子は走ってその場を離れる、すると茂みの中から金属で造られた1台の巨大なキャラック船のような装甲車のような…、とにかく変な乗り物がものすごい勢いで飛び出してきた
その長さ30m、横幅15m、高さ18m、ほどの不格好でメカメカしい、ずんぐりむっくりとした造形だ
キャラック船の上には帆が無く、その場所には楕円形のドームが上部に覆いかぶさったようなフォルム、前方甲板にはロープが張ってあり洗濯物がバタバタと揺れている
ドームの上や船体の周りから数本のシリンダー突き出し、それが上下して排出弁から蒸気を吹き出して歯車を回している 外装はツギハギだらけで船のような部分下部には左右4本づつ太いダブルタイヤが付いて勢いよく走っている、タイヤ幅は外側基準27mほどだ
その装甲車の後部をよく見てみると人影らしき物が3つ、忙しなく動いている
乗組員だろうか、皆ブラウン色のつなぎを着ている、黒地に白い斜めのラインをあしらったバンダナを付けた男3名が、その装甲車の後部に付いた3台の捕鯨砲のような物を、それぞれ後方に向けて蒸気と共に何かを射出した
射出されたソレは、長さ2mほどの銛である その銛が狙う先にはこれまた巨大な機械のような昆虫、所々に歯車が見える
船よりは小さいくサソリのような形だが、サソリにしてはデカすぎる 全長10mはあるだろう
金属のような装甲をして、装甲の隙間から蒸気を吹き出しその装甲車を襲っている その巨大なサソリの周りには、無数の小型のサソリ 小型と言っても人ほどの大きさがある
男達はそのサソリ共と戦っている様子だ、その装甲車が桃子の方へ走りながらサソリ共に向けて攻撃していた
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そんなあなたの今日の運勢は中吉です( *・ω・)