表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】悪役令嬢が転生者の異世界で主人公やってます!  作者: 夕綾 るか
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/109

アルカディア王国へ

マリー&ルーナ回です。


 アルカディア王国に向かう馬車の中。

 ルーナは前の世界での記憶が戻った後に思い出したことを話し始めた。


「私が書いた物語の始まりは――アルカディア王国だったの」


 前の世界で子どもだった頃、ルーナは弟と物語を創造して遊んでいた。

 弟を主人公に見立てた物語で、異世界に転移した主人公が神様から加護をもらい、魔法が使えるようになるというもの。

 その異世界がアルカディア王国だった。


 魔法と神の守護があるアルカディア王国。

 その世界で主人公が新しい仲間と共に魔法を磨き、魔獣を倒し、国を護るという、いわば冒険物語だ。


「それをある人物が書き換えたの」

「ある人物?」

「ええ。私たち――この世界に転移する前の私と、転生する前のアイリちゃんとレオくんを殺した犯人」

「それってつまり、エスメラルダ王妃ってこと?」


 ルーナは小さく頷いた。


「書き換えたって……どんなふうに?」

「私の弟が物語を書いたノートを落としてしまって。それを見つけたのが彼女だった」


 養護施設で暮らしていた二人は、高校を卒業したら施設を出ていかなければならなかった。

 ルーナは働いていけば何とかなるだろうと思っていたが、二学年下の弟は違った。

 姉が出ていくことに、そして、先の見えない将来に不安を抱いていた。


 そこにノートを拾った彼女が現れた。

 彼女は耳当たりの良い言葉で巧みに弟をそそのかした。絶対に話題になる、お金になる、と。

 当時、中学生だった弟は彼女に言われるがまま、契約を結んでしまった。


「今考えれば、年齢的にも契約解除ができたのだろうけど。もちろん、その時はまだ子どもだったから」


 無知って怖いね、とルーナは悲しそうに笑った。


「それに私は反対だったから、弟とは衝突してしまって……お互い思春期ってこともあって、その頃にはもう話すこともなくなっていたの」


 物語の主人公は女の子に変更されてしまい、出てくる登場人物はそのまま、恋愛を中心としたものに書き換えられた。

 発売された書籍は中学生が作者ということもあり、瞬く間に売上を伸ばした。

 その上、当時流行っていた乙女ゲーム化も決まり、さらに弟の知名度は上がっていった。


「私には何もできなかった。目まぐるしく変わる周囲の状況に弟は心と身体がついていけず、悩み苦しんでいたのに」


 乙女ゲームが爆発的な人気になったことで、彼女は弟に第二作目の制作を持ちかけた。


「けれど、弟は断ったと聞いたわ。もう自分の名前を使わないで欲しい、って」


 高校に進学するタイミングですべてをリセットし、自分の生活を元に戻そうとしていた。

 その矢先、弟は事故に遭って亡くなった。


「…………!!」


 マリーは息をヒュッと小さく吸い込んだ。


「説明が長くなってしまったけど、アルカディア王国があの本かゲームの世界かもしれないと思って、思い出した時に調べてみたの。でも、出てくる貴族の家名は一致していたけれど、名前が登場人物たちとは違っていたわ」

「乙女ゲームでいったら――アシェルは絶対攻略対象になってるわね」


 顎に手をかけ、うーんと唸っているマリーにルーナはクスリと微笑んだ。


「ふふっ、大丈夫よ。アシェルはあなたにしか攻略できないから」

「そうかしら……? ほら、アシェルはイケメンだし優しそうに見えるでしょ?」

「ええ。でも本当に優しいのはあなたにだけなのよ」


 ルーナは学生時代を思い返していた。

 アシェルの見た目は柔らかいが、身に纏うオーラは真っ黒だ。マリーの前では抑えているだけで。


 馬車の中は思い出話に花が咲いていた。

 アルカディアに着くまで、一週間以上かかる。話す時間はたっぷりあるが、気持ちは焦る。


「まずは、私が懇意にしていた魔法具店に行ってみましょう。何か知っている情報があるかもしれない」

「私は引き続き、アシェルと連絡を取ってみる。いざという時は、私が直接アシェルのところへ行けばいいのよ!」


 どんな時でも前向きに考える、(スーパー)ポジティブ聖女様はとびきりの笑顔を見せた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
代理人(この場合は養護施設が未成年後見人として代理をする)の署名なく未成年と契約する出版社もゲーム会社もありえんな…… 同人誌とか同人ゲームとかの、元々法的にグレーな存在ではなく?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ