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修行編: 景容の役職

「よく来たねえ。さあ、二人とも座ってくれ。ああ、そんな堅苦しい礼はいいから」

 父親が膝を曲げ始めたのを見透かしたかのように、皇帝が筆を置きながら言った。どうやら、二人が来るまでの間、一心に絵をかいていたらしい。壁中に、描きたての美人図が飾られている。

「さあさあ。その辺にある椅子に早く座ってくれよ。立ったままだと疲れるだろう? 向こうにある椅子はどれでも使ってくれていいから」

 皇帝は壁際の絵と絵の間に挟まれた椅子を指さしていた。仕方なく、景容らは壁際へと歩き、一脚ずつ椅子を運ぶ。皇帝の眼前まで椅子を持ってくると、そこでようやく手を離した。

「うん。ご苦労様。じゃあ、ぜひ座って話をしよう。……こちらが景容、かな?」

 皇帝が景容を手で示しながら、父親に聞いた。父親は小さく頷いただけだったが。

「随分立派なことだ。今回の試験でも、かなりいい成績を収めている。これから官吏になってもらうわけだけど、実は余もかなり期待しているんだ」

「それは、恐れ入ります」

 父親が背中を縮めながら言った。

「いやいや。余は思っていることを言っているだけだから。さて。本題に入ろうか。先に言うけど、余は景容に郊外へ行ってもらいたいと思ってるんだ」

「郊外?」

 今度は景容が確かめるように聞いた。その時、ずっと父親に向けていた視線をようやく景容に向けた。

「そう。さっき、余の娘である蘭花皇女が郊外にある離宮へと向かったんだ。療養のためにね。しかし、肝心の離宮を管理する者が今ちょうど欠けているんだ。だから、その役職を景容に担ってもらいたいな、と思って。どうだろうか」

 と、皇帝が言い終えると、父親もまた視線を半歩分後ろに座っていた景容に向ける。

「と、陛下はおっしゃっているが、どうだ? 郊外へ行く気はあるか?」

「いや。万一、行きたくないならそれでもいいんだ。無理に行けとは言っていないから。他にも、新人官吏には担ってもらいたい役職もあるし」

「いえ、大丈夫です。私は喜んで郊外へ向かいますよ」

 父親と皇帝の言葉に一抹の嘘くささを感じ、景容は逃げるように言った。とはいえ、その一言で、なんとその日の夕方から景容は郊外へ向かう羽目になったが。

 景容は道中、皇女一行の進み具合を耳にしていた。一行は、とりあえずゆっくりと郊外へ向かっているらしい。馬の速度によっては、景容も一行には追い付くことができそうだ。

 と思っていたのに、結局三日後景容が郊外にある離宮にたどり着いたときには、皇女らはすでに到着していた。

 だがそんなことは全く気にすることなく、彼はひとまず厩に馬をつなぐ。

 それから、景容が異様なまでに静まり返った離宮に一歩足を踏み入れた。その時、どこか彼の頭上からもかなり高い場所から微弱な声がした。

「どちら様?」

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