いつもの牛丼
いらっしゃいませ〜
ここは牛丼専門店「牛友」。埼玉県川越市のとある場所にある個人経営店。
牛丼の経営店なんて珍しいだろう。
そんな牛丼の店を経営してる俺は志野 正俊。今日も牛丼を作る。
店内を見ると会社員や学生、家族連れなどたくさんの客が見える。
皆美味しそうに食べている。作る方も気分がいい。
また新しいお客が来たようだ。
「いらっしゃい!」
カウンターに座る。学生さんだ。制服を着ているので昼休みに食べに来ているに違いない。
しかも定期的に来てくれる子じゃないか。よし、注文を聞きに行こう。
「いらっしゃい!ご注文は?」
学生のお客さんは今日も答える。いつも頼んでいるように。
「牛丼並、紅生姜多めで。」
「はいよ!」
このお店では紅生姜は自己申告制になっている。一応席には紅生姜の箱はある。が、頼めばあらかじめ載せることができるシステムになっている。あの学生さんはいつもこちらに紅生姜のトッピングを言っている。
それにしても女の子なんだから一緒に食べる友達の一人や二人いないのかね…。
まぁ深くは考えないようにしよう。
「牛丼並生姜多めお待ち!」
「ありがとうございます。」
注文の牛丼を置くと、彼女はお礼と会釈して箸を取り手を合わせる。
「いただきます。」
今日も彼女は一人で牛丼を食べる。でも…、
「…ンフフ。」
めっっっっっっっちゃ美味しそうに食べるんだよなぁ〜!
それを見てるとすごく元気が湧いてくる。
「…?」
「っ!」
やべ、目が合った!
慌てて目を逸らす。まさか目が合うなんて思ってなかったので予想外すぎた。
「…ふふっ」
あ〜笑われてる〜!くっそ恥ずかしい…
「ごちそうさまでした。」
10分弱で彼女は食べ終わった。
バックを持って会計に行く。
バイトが声をかけてくる。
「志野さん!会計お願いします!」
「はいよ。」
少し気まずいけど行くしかない。
「ありがとうございます。お会計380円になります。」
「はい。」
このご時世、大手牛丼チェーン店の牛丼が400円台に突入している。
しかしうちは300円台をキープし客を確保する。
安い方がお得だしみんな食べたいだろう。
「はい、ちょうどお預かりします。ありがとうございました〜」
「ごちそうさまです。」
よし、何事もなく終わりそうだな。彼女も気にしてなさそうだし…
「あ、そうだ…」
「?」
「勘違いならすみませんがさっき私のこと見てました?」
「!?」
バレてた!?いや目が合ったし当然か。
「い、いや〜!いい食べっぷりだな〜と思って。」
「そ、そうですか?」
「あはは…」
「また来ますね。」
「あ、ありがとうございました〜」
…最後、すごい笑顔だったな。
あの子の笑顔、可愛いな。