第2話 元傭兵、ゲームを学ぶ
17:00
疲労しきった4人の老人が、倉庫で息を切らし、それぞれ弱音を吐いていた。
「うぉぉ…目が痛てぇぇ…」
「私は…腰が…動きませんよ…」
「目が回っちまった…若い時はこんなことなかったんだが…」
「うぇっへっへっへ…はぁ…」
目の前でボロボロになる老人たちを見て、結梨はため息を吐いた。
「そりゃ4時間ゲームやりっぱなしなんて疲れるに決まってんじゃん。1時間やったら15分は休憩!これ常識!」
結梨は老人たちを叱りつけながら目薬や腰に貼る痛み止めなどを持ってくる。老人たちは天の恵みにすがるように各々必要な目薬や痛み止めを手に取った。
「船橋ぃ、腰に貼ってくれぇ…」
「お前の太った腰なんぞ見たくない、佐々木に頼め」
「うぇっへっへっへ…任せて」
日下はうつ伏せに横になると、佐々木に痛み止めを手渡す。佐々木は痛み止めを素早く日下の腰に貼り付けた。
「うぉぉ…古傷に染みるぅ…」
「目薬もよく効くぜ…」
老人たちの吐息の四重奏が倉庫に響く。
「いや誰得なのこのシーン?」
結梨が1人で呟く。気にせず老人たちはそのまま吐息を漏らして一休みしていた。
「それにしても、40戦やって40敗、全部全滅って…逆にすごいよ」
「うるさい、気にしてんだ」
結梨が言うと中条が悔しそうに答える。一方の結梨は続けた。
「言ったでしょ?難しいって」
認めたくない中条はそっぽを向く。だがそれ以外のメンバーはうなずいていた。
「正直ゲームなど子供の遊びだと思っていました…ですが全く違った」
「あぁ、まず基本的な操作もわからないでできるものじゃないな」
「目も疲れる」
日下、船橋、佐々木が口々に言う。我が意を得たりと結梨はうなずいていた。
「そう。おじいちゃんたちの頃のゲームとは全然違うの。まず操作からして複雑だし、画面に映る一回の情報量もすごく多い。だから何の考えもなしに始めるものじゃない。わかったおじいちゃん?」
結梨に理詰めで諭され、中条は黙り込む。そして中条は大きく息を吐いてからやけになったように声を張った。
「わかりましたよ!このゲームは難しいです!」
「うんうん、わかればよろしい」
結梨は満足そうに笑う。一方で船橋は不安そうに尋ねた。
「もしや任務を放棄するのですか、隊長?」
「バッカ言え、任務は諦めん。これをしっかりとやり込み、賞金2億を手に入れる。結梨!お前にも手伝ってもらうぞ!」
「えぇ!?」
結梨としては放っておけばゲームの難しさに負けた中条たちがゲームを投げ出すとばかり思っていた。だがこのジジイは負けず嫌いの頑固者だった。
「無理だよおじいちゃん!そもそも、こういうゲームってお年寄りは不向きなんだよ!?動体視力とか反射神経とかすっごい要求されるから!仮に練習して、大会出ても若い人たちには勝てないよ!」
「それでもやると決めたんだ!俺はやるぞ!」
「落ち着いてください、結梨さんも、隊長も」
中条と結梨の言い合いの間に、日下が割って入る。2人が黙り込んだのを見て、日下は話し出した。
「隊長、気合いだけでは何事もうまくいきません。まずはこのゲーム自体をしっかり学ぶべきではないでしょうか」
「学ぶ?」
「えぇ。戦争には定石やルールがあるように、このゲームにも定石やルールがあるはずです。まずはそれを知らなければ、先ほどのように負け続ける一方です」
「それは確かに」
「結梨さん、これは世界大会に採用されるゲームなんですよね?」
「そうです」
「それならば多くの人が楽しめるような要素が含まれているはずです。これが本当に反射神経と動体視力のみで決まるゲームなら、世界大会で採用されるとは思えません」
「つまり、その要素が俺たちが勝ち上がるための重要なポイント、ってわけだな!」
「その通りだ船橋。それを見抜くためにも、まずはこのゲーム自体をしっかりと学ぶ必要があるかと思います」
「うぇっへっへっへ…操作方法も込みでね」
日下が論理を展開する。思わぬやる気と理路整然とした発言に、やめさせようとしていた結梨も言葉を失った。
「日下、お前の言う通りだな。難しいものだからこそ、わかったふりをせず、しっかり学ぶべきだな。よし、まずは学びから入ろう」
中条が言うと、老人たちも、おう、と返事を返した。
「結梨、頼む。手伝ってくれ」
中条は結梨の方を向いて頭を下げる。結梨は一瞬複雑そうな表情をしてから答えた。
「…わかった」
「ありがとう」
中条はそう言って結梨と握手を交わす。2人は小さく笑い合った。
中条は明確になった今後の方針に沿って今後の動きを指示する。
「まずは操作方法から学ぶか。それがわからなきゃお話にならん」
「じゃあ、トレモから始めようか」
中条の言葉に結梨が言う。だが老人たちは首を傾げた。
「とれも?」
「あぁ、トレーニングモードの略だよ。自由に色々設定して操作確認ができるの」
「おぉ、それはいいな。どうやってやるんだ?」
「マッチングのすぐ下にさ、プラクティスってあるでしょ?それ押してもらえば始められるよ」
結梨の指示に従ってゲーム内のカーソルを操作する。プラクティスモードを選んで丸ボタンを押すと、画面が切り替わり、細かい設定が出てくる。
「結梨、ちょっと文字が見えないんだが…」
「上から、役職、武器、ステージ、一番下がスタートだね。操作方法確認するだけだからそのままスタート押しちゃっていいよ」
中条が尋ねると、結梨が指示を出す。老人たちはその指示に従って一番下のスタートという文字にスティックを動かし、丸ボタンを押した。
「これはメガネを作らないといけないな」
ゲームがロード画面になり、暇を持て余していた船橋が呟く。老人たちは全員うなずいていた。
「こうも文字が小さいと確かに年寄りには厳しいな」
「このゲーム対象年齢12歳以上だからね。そりゃあお年寄りのことはあんまり考えないでしょ」
結梨に言われて老人たちは少し悲しくなりながら画面を見つめる。
ロードが終わり、目の前に近代的なビルが並び立つ。画面の下側には、アサルトライフルの上部分が写り込んでいた。
「じゃあ、まずは移動から始めてみようか。左スティックを前に倒してみて」
結梨が指示を出す。老人たちは自分の手元を確認しながら左の親指でスティックを倒す。
ゆっくりではあるが、モニターに映る視界が上下に揺れ、目の前に映るビルが徐々に大きくなってきた。
「おぉ…!前に進んでいるんだなこれは!?」
「そう。そんな感動しないでよ」
中条の感動し切った眼差しを照れ臭そうに受け流し、結梨は冷静に言い放つ。
「これでアカのクソどもを追いかけ回せるのか!」
「もっと速く移動したい時はバツボタンを押しながらスティックを倒す。やってみて」
結梨の指示が出ると、再び老人たちは手元を確認する。右手側の下の方にあるバツボタンを押したのを確認してモニターを見る。
先ほどよりも早いペースで画面が上下し、目の前の建物が大きくなっていくのがわかった。
「おぉぉ!走ってるぞ!結梨!みてくれ!おじいちゃん走ってるぞ!」
「はいはいはしゃがない。左スティックから指を離せば止まるから」
結梨が言うと、全員ゲーム内で足を止める。老人たちはお互いに顔を見合わせて、言葉こそなかったが目配せで感動を共有していた。
「いやあ移動できるだけでも素晴らしいな。世界が変わったよ」
「逆に移動なしでよく4時間もやってたよおじいちゃんたち」
中条が結梨に言うと、結梨も笑って言葉を返す。
そこに船橋が手を上げて質問した。
「これは横を向いたりできないのかい?」
「横を向く…あぁ、右スティックを動かしてください」
「どの方向に?」
「向きたい方向側に倒してみてください」
結梨のアドバイスに従って、船橋はコントローラーを見ながら右スティックの位置を確認すると、右スティックを右にゆっくり倒す。
モニターに映っていたビルがゆっくりと左に流れていき、ビルとビルに挟まれた道がモニターに映った。
「おぉ!これで索敵ができますよ!隊長!佐々木、日下、お前らもやってみろ!すごいぞ!」
「うぇっへっへっへ…もうやってみたよ」
「空も見上げられるようだ。いい青空だ」
船橋が興奮気味に言うと、佐々木と日下も答える。中条も右スティックをずっと同じ方向に倒し続ける。中条のモニターに映る世界がぐるぐると回っていた。
「おうおうおう、目が回っちまうよ」
「親指離せば止まるから」
結梨の指示で中条が指を離すと、モニターに映る世界も止まる。
「これが基本の『キ』だね。周囲を見渡しながら移動して、相手を探し出して倒す。これがこのゲームの基本的な動き」
「では、今度は倒し方を教えてくれ」
中条が結梨に頼む。結梨はわかった、と答えてから指示を出した。
「R1ボタンを押してみて」
「あーるいちぼたん?」
「右の人差し指の近くにあるやつ」
結梨はそう言って中条のコントローラーで場所を教える。中条は半信半疑になりながらR1ボタンを押した。
ズダダダダダダ!!!
「うぉおおお!?」
モニターから聞こえる銃声と、手元のコントローラーの強烈な振動に、中条は思わず傭兵時代の癖で椅子から降りてしゃがみこむ。
他の老人たちは不思議そうに中条を眺めていた。
「どうよ」
結梨が尋ねる。中条は立ち上がりながら興奮冷めやらぬ様子で語り始めた。
「あぁ、すごい!この銃声!この振動!まさにアーマライトと同じそれだ!」
「んー、リアルってこと?」
「そうだ!ちょっと物足りないけど、よくできてる。一気に体が色々思い出したよ!」
「ははは、よかったよかった」
「おい、お前らもやってみろ!こりゃあすげぇぞ!」
状況がよくわかっていないまま固まっている仲間たちに、中条がけしかける。結梨と手分けしてコントローラーのR1ボタンの場所を教えていく。最初にR1ボタンを押したのは船橋だった。
ズダダダダダダ!!!
「おおおおお!!!」
船橋も手元の振動とモニターから聞こえてくる銃声に興奮して立ち上がる。息を荒くして、中条の方を見た。
「隊長!これはすごいですよ!」
「あぁ!すごいだろう!」
「うぇっへっへっへ…ボケて語彙力まで無くなってら」
感動して涙まで滲ませている船橋と中条をよそに、冷静に佐々木と日下はモニターを見てR1ボタンを押し、銃声を聞き流していた。
「それにしても、本当に銃声がリアルだな。現代の技術は本当にすごい」
日下も感心してモニターを眺める。無心でR1ボタンを離しては押し、銃声に聞き入っていた。
「で、ここからが大事なんだけど、ちゃんと狙いをつけて撃ちたくなると思うんだ」
「おう、そりゃあな」
「その時は、L1ボタンを押しながらR1ボタンを押す」
「えるいちぼたん…お、この左のやつか?」
「隊長、どれです?」
ボタンの位置に気づいた中条に、船橋が尋ねる。中条が軽く指を差すと船橋も理解したようだった。
中条はモニターを見ながらL1ボタンを押す。
画面いっぱいに、銃の照準器が映った。
「おぉ!こいつは狙いやすいな!」
「照準器までアーマライトそのものですね」
日下もモニターに映った照準器のデザインを見て感心する。船橋と佐々木も順調に照準器がアップになっていた。
「おじいちゃんたちは銃に関しては詳しいだろうからさ、狙いの付け方はだいたい実銃と同じでいいと思うよ」
「つまりフロントサイトがリアサイトのくぼみに来るように狙いをつければそこに飛んでいくわけだ」
「そう、多分」
銃の知識のない結梨には中条の言うフロントサイトもリアサイトもさっぱりだったが、多分問題はないと判断して次に進む。
「それで、左側を狙いたくなったらさっきも言った通り、右スティックを左に倒す」
「右スティックで視点と照準、両方を管理しているわけだね」
急に冴えたことを言ったのは佐々木だった。思わぬ冴え渡り方に、結梨も動揺しながらうなずいた。
「結梨さん、質問よろしいですか?」
日下が突如質問する。結梨はそちらに向き直って質問を聞き始めた。
「はい、どうぞ」
「L1ボタンを押さないでも銃を撃てるわけですが、狙いは甘くなるでしょう?基本的にL1ボタンを押しながら撃った方がいいのでしょうか?」
「あー、そうですね…状況によります」
「というと?」
「ちょっと細かい話になっちゃうんですけど、L1押すと狙いが正確になる代わりに視界が狭くなって、さらに視点移動が少し遅くなるんですよ」
「つまり、索敵や乱戦には向かないと」
「そうです。そういう状況の時はわざとL1ボタンを押さないで周囲を探ったり、一気に銃弾をばら撒いたりするのが基本ですね」
「なるほど、勉強になりました。ありがとうございます」
日下が頭を下げると、結梨も遠慮がちに会釈する。
その間にもずっと銃を乱射していた中条が結梨を呼んだ。
「結梨、リロードどうやってやるんだ?」
「四角ボタン」
結梨が言うと素直に従って中条は四角ボタンを押す。中条のモニターに映る謎の手が、同じくモニターに映るアサルトライフルのマガジンを交換した。
「ほー。悪くない手つきだが俺たちには及ばねぇな」
「わかってると思うけどリロード中は無防備だからリロードしながら逃げるなり、どこかに隠れながらリロードしてね」
「わかった。ところで、これマガジン捨ててるけどよ、たとえば残り4発の時にリロードとかできるのか?」
「できるよ。その銃は装填数が30発だから、予備の弾26発消費して満タンにできるね」
「マガジン捨ててるのに?」
中条が言いたいのは、実戦においてはマガジンを交換する時に残り4発の方が捨てられるのなら、消費される予備の弾は30発だろうということである。
「だってこれゲームだもん」
結梨は中条の疑問に短く答えた。身も蓋もない結梨の返事に、中条は少し納得がいかないような表情をすると
「リアルじゃねぇなぁ」
と1人でつぶやいた。
「よし、じゃあ画面に映る細かい数字とかは明日教えるよ。今日は一旦このぐらいで操作練習を終わりにしよう」
「そうだな…さすがに目が回ってきた…」
結梨が場を仕切り、船橋はそう言って目薬を注す。他の老人たちも眉間を軽く押したり、腰を伸ばすなどしてリラックスを始めた。
「なら、ゲーム自体はここまでにして、ゲームの定石やその他の情報収集を始めましょう」
「うぇっへっへっへ…座学だね」
「賛成だ。始めよう」
日下の提案に、中条も乗っかる。老人たちはプレディス5の電源を切ると、情報収集のために机を少し片付けた。
「さて、学ぶと言ってもどうしたものか…」
「ネット使おう。パソコン持ってくるよ」
結梨は船橋の疑問に答えるようにそう言うと、立ち上がって倉庫を飛び出た。
「お待たせしましたー」
愛想よくそう言って結梨が帰ってきた。その脇にはノートパソコンも抱えられている。
結梨は老人たちの前にパソコンを開くと、動画サイトを開く。検索ワードに「PoM」と入力すると、大量の動画が出てくる。
「おぉ、すごい数の動画だな」
「まぁそりゃ人気あるゲームだからね」
感心する中条に対して、結梨は冷静に言葉を返す。そのまま画面をスクロールして中条たちにちょうどいい動画を探す。
「あ、これとかいいんじゃない?」
そう言って結梨がクリックしたのは『【のんびり解説】これさえ見れば初心者も完璧!PoMを解説!【Pride of Mercenaries】』と銘打たれた動画だった。
5秒間の広告が流れ終えると、青いリボンをつけた首だけのキャラクターと、茶髪に白い魔法帽子を被った首だけのキャラクターが画面下側の左右端に現れ、画面の中央にはお茶の間のイラストが置かれていた。
「のんびりレイワです」
「のんびりマリカです」
「なんだこの声は?」
中条が思わず尋ねる。それもそのはずで、動画から流れてきているのは中条たち老人には耳馴染みのない機械で合成された音声だった。
「ひどい訛りの喋りだな、茨城県民か?」
「秋田かもよ」
「これ人間じゃないの、機械が喋ってるの」
結梨が言うと、老人たちは一斉にへぇと感心の声を上げる。みんなが会話しているうちに、動画内での冒頭の茶番が終わり、解説が始まった。
「ところでマリカ、結局PoMってなんなの?」
「あぁ、PoMっていうのはプライド・オブ・マーセナリーズの略なんだぜ。このゲームのジャンルはFPSで、今度東京で開催される世界規模のゲーム大会、REVOにも採用される、幅広い層から支持を集めるゲームなんだぜ」
「だぜだぜうるせぇな」
「そういうキャラなの」
中条がツッコミを入れると、結梨がなだめる。動画はそのまま進んでいく。
「FPSってなに?」
「あぁ、First Person Shooterの略なんだぜ。一人称視点で移動して戦闘するタイプのゲームのことなんだぜ。逆に、三人称視点でキャラを動かすゲームのことを、TPSなんて言ったりもするぜ」
「一人称視点のホラーゲームはやったことあるわ。すごい没入感で怖かったわね」
「こいつ顔だけでどうやってゲームやるんだ?」
「そういう設定なの」
中条が結梨に尋ねると、結梨は大人な対応で中条をなだめた。
「プライド・オブ・マーセナリーズは、4対4で撃ち合うゲームで、比較的シンプルでわかりやすいゲーム性と簡単な操作性、やりこむほどにわかってくる戦略的な深さを売りにしたゲームなんだぜ」
「嘘つけ難しいじゃねぇか」
「黙って」
「基本的にはオンラインで知らない人とチームを組んで戦うけど、仲間を集めて一緒のチームとして戦うこともできるんだぜ」
「知らない人と組むの?私なんか下手だから、知らない人と一緒にやったら役に立たないまま終わっちゃいそう」
「心配無用だぜ、レイワ。このゲームはとあるシステムを搭載することで、初心者でも活躍できるようになっているんだぜ。それがこのゲームが人気を誇る理由のひとつなんだぜ」
機械音声がそう言うと、日下の目が鋭くなった。
「おそらくここがこのゲームのミソですね」
日下が呟くと、老人たちは全員背筋を伸ばして画面に集中した。動画は進み、解説を続ける。
「このゲームは、試合に参加するとき、必ずひとつ役職を決めるんだぜ」
「役職?」
「あぁ、それによって戦場における自分の得意なことが変わってくるんだぜ。どんなにうまい人も、役職の不得意な部分を補うのは難しいから、初心者でも役職次第でうまい人のサポートが簡単にできちゃうんだぜ」
動画のキャラが言い切ると、日下はそれを軽くメモする。動画はそれを気にせず進んでいく。
「このゲームには7つの個性的な役職があるんだぜ。レンジャー、スカウト、タンク、メディック、エンジニア、エージェント、ボマー。これらは全て長所と短所を併せ持っているから、そこに奥深さがあるんだぜ」
「7つもあるの?覚えられるかしら」
「心配無用だぜ!どれも個性が強いから、特徴と紐づければ簡単に覚えられるんだぜ」
「じゃあ早速解説して、マリカ」
動画の場面が切り替わる。黒い背景に白い文字で「1.レンジャー」と表示されると、武装したキャラクターが表示された。
「レンジャーはこのゲームで最も基本的な役職なんだぜ。直接戦闘を得意とし、他の役職が1個か2個しかメインウェポンを持てないのに、この役職は唯一3個も持つことができるんだぜ」
「3個も?すごいわね」
「それに加えて、予備の弾薬も、どの役職よりも多く持てるんだぜ。武器を3個持てるのも相まって、対応力が高いオールラウンダーなんだぜ」
「それだけ聞くと最強そうに聞こえるわね」
「一方で弱点もあるんだぜ。よくも悪くも癖がなく、直接戦闘しかできない役職だからサポートなどは難しいんだぜ。平均的な能力の役職でもあるから、防御力が欲しい時にはタンク、移動力が欲しいならスカウトなどレンジャーよりも秀でた部分をもつ他の役職と比べると見劣りしちゃう部分が多いのも弱点だぜ」
「止めていただいていいですか?」
動画の音声がひとしきり流れると、日下が結梨に頼む。結梨は素早く一時停止ボタンを押す。その間に日下はメモを取っていた。
「しかし、銃火器を3種携帯できる歩兵より強力な兵種がたくさんいるとは…」
「現実ではなかなかないと思うのですが、一体どうなっているのでしょうか」
中条が不安そうに考え込むと、船橋もそれに便乗する。それらが終わると、日下が手を挙げて、終わりましたとひと言結梨に伝える。
結梨はそれを聞くと動画を再生した。
動画では黒い背景に白い文字で「2.スカウト」と表示された。
「2個目の役職、スカウトの紹介なんだぜ。余談だけど、この役職は最も人気のある役職と言われているんだぜ」
「そんなにすごい役職なの?詳しく教えて、マリカ」
「もちろんだぜ。スカウトの最大の長所は、その名の通り索敵能力の高さなんだぜ」
「スカウトって、偵察兵って意味だもんね」
「そうだぜ。スカウトは、足が速い上、表示されるミニマップの範囲が広いんだぜ。しかも、自分の近くにいる敵は常にミニマップに表示されるから、背後から近づいてくる敵に気づくことも簡単なんだぜ。他の役職が足音とかで背後を警戒しなきゃいけないのに対して、スカウトはミニマップさえみれば近くに敵がいるかどうかを判断できるから、その点ですごい人気なんだぜ」
老人たちは言葉を失った。正直何を言っているかはよくわからない。よくわからないがかなり掟破りなことをしているというのは容易に想像できた。
「スカウト、すごいわね」
「スカウトのすごいところはそれだけじゃないんだぜ」
「まだあるの?」
機械音声と老人たちの声が思わず揃う。動画はそんなことを気にせず続いていた。
「あぁ。スカウトの固有スキル、『スーパーレーダー』っていうのがめちゃくちゃ強いんだぜ」
「スーパーレーダー?」
「そう。これを使用すると、10秒間、物陰に隠れている相手をシルエットで浮かび上がらせることができるんだぜ」
「うぇっへっへっへ…へ?」
老人たちは目の前の動画から聞こえた単語を脳内で咀嚼した。
「つまり、このスカウト相手には物陰に隠れても無駄で、不意打ちも基本的に通じないと?」
「見えないはずのものが見えるなんてやりすぎだろうが!」
「現実的ではないなぁ」
老人たちから非難が溢れる。結梨はそれら大人気ない老人たちを見て一喝した。
「これゲームだからね?いちいちそんなこと言ってたらキリなくなるよ?割り切ってね」
「ゲームだからって非現実的すぎるのは」
「非現実を形にするのがゲームなの!リアルなだけのゲームなんて売れないしつまんないよ!」
中条が反論しようとするが、結梨は力説する。パワフルな結梨の言動に、中条は口をつぐんだ。
中条が結梨に黙らされているうちに、動画は次の場面に進んでいた。
「次は、タンクの紹介なんだぜ。タンクはとにかく防御力が高いのが特徴なんだぜ」
「どのくらい高いの?」
「レンジャーが3発で倒れる攻撃を、なんと10発耐えるんだぜ」
日下が動画の内容をメモしていたが、その横にいた船橋が声を荒げた。
「ライフル弾を10発耐える?人間じゃないだろそんなの!」
「ちょっと静かにしててくれ」
日下は船橋に軽く言う。動画はそんな様子を一切気にせず流れていく。
「しかもスキルのスーパーアーマーを使用することで、この防御力が15秒間1.5倍になるんだぜ」
「15発耐える人間ってことか!?リアルじゃ…っと禁句なんだったな」
中条が思わず声を上げようとするのをグッと堪える。文句ばかりの中条と船橋を放置して、日下は黙々とメモを取る。同時に画面に注目していた佐々木が中条に言う。
「うぇっへっへっへ…でも弱点はあるみたいだよ」
「ホントか!?」
「足が遅くなって射程が短くなるんだぜ。言い換えると、接近戦でしか輝けない役職だから、使い所は結構難しいんだぜ」
動画が中条に答えるように進む。動画の内容に、中条もおぉ、と少し納得したようだった。
そんな中条など気にしないように動画は進んでいく。
「どんどん紹介するぜ。お次はメディックなんだぜ」
「メディックって、衛生兵って意味よね?」
「そうなんだぜ。その名の通り、10回までではあるものの、味方の治療ができる役職なんだぜ」
「それだけじゃないんでしょ?」
「察しがいいんだぜ、レイワ。メディックの最大の特徴を説明する前に、このゲームのシステムについて少し話すぜ」
「どんなシステム?」
「このゲームでは、一定ダメージを受けてもすぐには死なず、ダウンって状態になるんだぜ。ダウン状態になってから攻撃を受けると、死亡状態になってゲームに参加できなくなるんだぜ」
「それがメディックのスキルとどう関係するの?」
「あぁ、メディックはダウン状態の味方を2回まで蘇生することができるんだぜ!」
逆にここまでくると老人たちは驚かなくなった。渋い表情で画面を睨みつけて何度も不満そうにうなずいていた。
「うぇっへっへっへ…蘇生ね」
「もう何も言わん」
呆れた様子の老人たちに構う様子もなく、動画は先に進んでいく。
画面には「5.ボマー」と表示され、間もなく機械音声による解説が始まった。
「次はボマーなんだぜ。ボマーは、爆発物系の武器の扱いに長けた役職で、爆発物系の武器の威力が上がるんだぜ」
「なんか地味そうね」
「そんなことはないんだぜ。平均的な戦闘能力に加えて、武器スペースを圧迫しないで対戦車ミサイルと対戦車地雷をもち、さらに全ての役職の中で唯一地雷を撤去できる能力の持ち主なんだぜ」
「このゲーム、戦車もあるのか」
日下が少し驚いた様子で呟く。図らずもそれに応えるような形で機械音声は解説する。
「このゲームでは戦車、装甲車、ヘリといった兵器が登場するんだけど、普通の役職だと装備次第では対抗できないことの方が多いんだぜ。だけど、ボマーならどんな装備であっても常に対戦車ミサイルを携帯しているから戦車を意識した装備を組まなくていいメリットがあるんだぜ。銃火器も2つ持てるし、身体能力も平均的で扱いやすい役職なんだぜ」
解説の言うことを老人たちは脳内で咀嚼する。ゲーム内の専門用語が少ないのもあってなんとなく理解はできた。
「特に対戦車戦を得意とする、順当に強い兵士ってところか」
「今までのに比べたらリアル寄りですね」
中条と日下が呟く。船橋と佐々木も異論なく頷いていた。
動画はまだ続いていく。続いて表示されたのは「6.エンジニア」という文字列だった。
「ただのエンジニアが撃ち合いで活躍できるとは思えないんだが…」
船橋が呟く。それに答えるかのように動画の解説が進む。
「このエンジニアって役職は、武器が1つしか持てない上に、弾薬も多くは持てず、足も遅い役職なんだ」
「えぇ?じゃあ誰もこの役職を選ばないんじゃない?」
「実際はその逆なんだぜ。スカウトに次いで一番多いのはこの役職って言われてるんだぜ」
「性能が低いのに?どういうことなの?」
「エンジニアは非常に特殊な性能で、スキルを使うことでドローンを飛ばすことができるんだ」
ドローンという単語に、老人たちの目が一気に鋭くなった。
「日下、こいつは厄介だぞ」
「えぇ。我々も何度ドローンに苦しめられたことか」
「うぇっへっへっへ…そこだけはリアルだね」
老人たちをよそに、動画は解説を進めていく。
「エンジニアは、自分が無防備になる代わりに対戦車能力を持ったドローンを飛ばすことができるんだ。つまり、自分は安全なところに篭って一方的にドローンで敵を攻撃することができるんだぜ」
「ドローンがやられたらエンジニアはどうなっちゃうの?」
「一定時間ドローンが使えなくなるだけで、本体には何の影響もないんだぜ。尤も、ドローンはタンク並みの耐久力は持っているし、ボマーの対戦車ミサイル並みの火力を持つ兵器を3発搭載している上、音や的も小さいからそう簡単にはやられないんだぜ」
「ずるくない?」
「でもドローンの装備は人間にはなかなか威力を発揮しにくいし、ドローンの操作中はエンジニア本体は無防備なのもあって、対策されてしまうと活躍は結構難しいんだぜ」
「手放しに最強とは言えないのね」
解説動画の言葉を、老人たちは集中して聞く。そして各自自分ならどうするかを考えているようだった。
「最後に紹介するのは、エージェントなんだぜ」
老人たちの考えをよそに動画は進む。老人たちは再び画面を見上げた。
「この役職も、武器は1つしか持てない上、どんな攻撃でも当たってしまうと一撃でダウンしてしまうんだぜ」
「何かあるな?」
中条が疑いの目を向ける。彼の読み通り、動画はエージェントの長所を述べ始めた。
「その代わり、全ての役職の中で1番足が速くて、とんでもないスキルの持ち主でもあるんだぜ」
「とんでもないスキル?どんなスキルなのかしら?」
「ステルス迷彩ってスキルなんだぜ」
老人たちは言葉を失った。その名前だけで十分ヤバさは伝わったが、その詳細について耳を傾ける。
「効果は?」
「5秒間透明になって誰からも見えなくなるスキルなんだぜ。この状態だと、さっきのスカウトのスーパーレーダーにも引っ掛からなくなるんだぜ。その代わり、クールタイムが40秒とかなり長いのも特徴なんだぜ」
「1ラウンド10分が基本ルールだから、40秒は大きいわね」
「よし、止めてくれ」
中条が言うと、結梨は動画の再生を止めた。
老人たちは目頭を指で押さえたりして目をほぐしながら動画で集めた情報を確認し始めた。
「このゲームには7つの役職があって?我々はその中からひとつ選んで戦うわけだ」
「特に強そうなのは、索敵性能が高すぎるスカウト、ドローン使いのエンジニア、透明化できるエージェント。この辺りでしょうか」
「接近戦になれば耐久力の高いタンクと治療のできるメディックの組み合わせも厄介そうだ。純粋に戦車に強いボマーも手強い」
「うぇっへっへっへ…レンジャー要らないね」
老人たちの作戦会議を見て、結梨は思わず感心の声をあげた。
「おぉー。実際ネットでもそんな感じの評価らしいよ。さすがおじいちゃんたち、わかってんじゃん」
「おだてるな。この程度簡単に想像できる」
結梨に対して中条は少し照れ臭そうに言葉を発した。だが日下は何かを考えているのか頭を抑えていた。
「それにしても、どうしたものでしょうかね。この役職というシステム、強いところが本当に強い。明確な対策を持っていなければ、簡単に完封されそうです」
「『侍の頭脳』なんて呼ばれてたお前がそこまで悩むとは。珍しいじゃないか」
日下に対して船橋が意外そうに声をかける。それを見ていた佐々木も横から口を挟んだ。
「うぇっへっへっへ…そりゃやった回数少ないからね。作戦とかも立てようがないでしょ」
「…それもそうだな。佐々木の言うとおりだ。我々にはまだ実戦経験が足りていいません」
日下はそう言って中条を見る。中条もうなずいた。
「そうだな。我々はまず、これらの前提知識を身につけた上で、たくさん戦って、操作技術や定石を身に付けねばなるまい。では早速もう一度マッチングを…」
「だーめ!」
中条たちがゲームを始めようとすると、結梨がそれを止める。
「なぜだ結梨?」
「今日はもう目が限界でしょ?しかもおじいちゃんたちの目標は半年後の世界大会なんだからさ!ここで無理してたくさんやるより、メガネ作ってからたくさん練習した方がいいと思います!」
結梨の言葉に老人たちは黙り込む。結梨の言葉は正論だった。
「…わかった。今日のところはこれまでとする。明日は朝9時からここに集合だ」
「了解」
「では、奴のところに向かうか!」
中条が威勢よく号令をかける。老人たちもその声に対して、おう!と答えていた。
老人たちはそのまま歩き出す。状況のわからない結梨はそれについていく形になりながら尋ねた。
「ねぇおじいちゃんどこ行くの?奴って誰?」
「古馴染みだ、結梨もついてこい!」
30分後
「…来たか、ヒノマル・セブンの中条」
「あぁ、久しぶりだな、リッパー」
白い蛍光灯が僅かに照らすだけの薄暗い部屋。中条は鉄製の網で仕切られたカウンターを挟んで、隻眼の老人、リッパーと顔も合わせず挨拶を交わした。
「用事はなんだ、中条…まさか、冷やかしじゃあ、あるまいな?」
リッパーはそう言いながら懐から拳銃を取り出し、中条に向ける。網の隙間から銃口が出ているのを見て、結梨は思わず叫んだ。
「おじいちゃん!!」
「この40年、俺が一度でもそんなことをしたか?え?」
中条は一切怯まず言葉を返した。リッパーはその言葉に対して拳銃の引き金を引き切って答えた。
「!!」
結梨は思わず目を伏せる。しかし次の瞬間には、日下のご機嫌な声が彼女の耳に入った。
「ん~、やはりジッポーで吸うのは格別の味だ」
結梨が見ると、日下がタバコを咥えて声を上げていた。そしてリッパーが構えていた拳銃の銃口からは、オレンジ色の火が揺れていた。
「…え?」
「お客様に火をお出しするのは当然の礼儀だ…しかし中条、吸わなくなったのか」
「あぁ、カミさんに泣かれてな」
「いいことだ…」
リッパーは感心して呟くと、拳銃をしまう。結梨はあっけに取られたが、それを気にせず、リッパーはカウンターの上にそこに立てかけてあったアサルトライフルを置いた。照準器の部分にふたつスコープが付いている特殊なものだった。
「いつも通りだ…」
リッパーが言うと中条がまずそのライフルを手に取る。中条がライフルを構えている間に、リッパーは手元のモニターの電源を入れた。
中条はライフルを構えると右目で、左右に並んだスコープの左側の方を覗き込む。そしてスコープの上のダイヤルを何やらいじってから、なんの躊躇いもなく引き金を引いた。結梨は咄嗟に耳を塞いだが、何も起きなかった。
「よし…始めるぞ」
「どんとこい」
リッパーは手元のキーボードを叩く。中条は銃を構えたまま声を発した。
「右」
「次」
「下」
「次」
「うーん…」
「迷った時点でアウト…この視力検査の鉄則だ…次」
「これは右だろう」
「上だ。目を変えろ」
中条は少し悔しがりながら右手に持っているアサルトライフルを左手に持ち替える。今度は左目でスコープを覗きながらスコープの上についているダイヤルを操作し、納得がいくと引き金を引いた。
「日下さん、あれ…視力検査なんですか?」
「そうです」
「なんでこんな」
「かっこいいだろう…」
リッパーが純粋な笑顔で疑問に答える。そう言われてしまっては結梨としても返す言葉がなかった。
30分後
老人たちは視力検査を終え、リッパーも何かのメモを終えるとカウンターを挟んで向き合った。
「運が良かったな…ちょうど全員分におあつらえ向きのレンズの在庫があった…明日の朝にはできあがる…」
「助かるよリッパー。受け取りは、ここでか?」
「そうだ…朝の8:30に来てくれ…」
「わかった」
「目は大切にしろよ…」
「ありがとう。お暇するよ」
「また来い…」
中条はリッパーに挨拶すると、踵を返す。老人たちは背中を向けながらリッパーに手を振ってその場を後にした。
翌朝 9:00
「眼鏡をもらってきたぞ!」
倉庫でゲームの準備をする結梨の背中から、中条の大きな声が聞こえてくる。結梨が振り向くと、新品の老眼鏡を掛けた老人4人がそこにいた。全員見るからに上機嫌である。
「おぉ、似合ってるよ、おじいちゃんたち」
「うぇっへっへっへ!若い子口説けるかな!」
「それは無理」
おだてられて調子に乗った佐々木を、調子から蹴落とすように結梨が冷たく言い放つ。悲しそうな表情の佐々木をよそに、中条、日下、船橋はモニターの前に座った。
「結梨、準備ありがとうな」
「いえいえ、どういたしまして」
準備してくれたことに礼を言う中条に、結梨はにんまりとしながら首を横に振る。その間に佐々木も席に着いた。
老人たちはモニターの電源を入れる。
「おぉ…!」
今までぼんやりとしか見えていなかったタイトル画面が、鮮やかな色合いと共に老人たちの前に現れた。目を凝らしてやっと文字列と認識できた「press any bottun」の英語も、今は少し目を凝らすだけでしっかりと文字を認識できる。
「読める…!読めるぞ…!」
中条が思わず声を漏らす。そんな様子を結梨は少し遠くから見てにんまりと笑っていた。
タイトル画面から進み、モード選択画面が現れた。
「よし…みんな!聞いてくれ!」
全員が同じ画面になったところで、中条が他のメンバーに声をかける。老人たちは一斉に振り向いた。
「俺たちは新しく眼鏡を作り、このゲームについても少しは学んだ!だがまだまだ初心者としか言いようがないだろう!」
結梨はこのタイミングで士気を下げかねない中条の演説に首を傾げる。だが次の瞬間に疑問は解消された。
「ここからが本当の初陣だ!どんなことにも初めてはある!俺たちはその初めてを、いくつも掻い潜ってきた!今回も、ゲームだろうとそれは変わらない!全力でぶつかって行こう!」
「おう!」
「行くぞ!」
中条の号令に、老人たちは一気に目が鋭くなる。空気がひと息に張り詰めたのが結梨にもわかった。
「『ヒノマル・セブン』!出撃だ!」
中条の声が倉庫に響く。その声に合わせて老人たちは丸ボタンを押し、インターネット対戦の海に潜り込んだ。
最後までご高覧いただきましてありがとうございます
いよいよ次回はゲームを学び、メガネを手に入れた中条たちの、初めての本格的な実戦です。どうなってしまうのでしょうか
今後もこの作品をよろしくお願いします