【15】おっさん、新スキルを覚える
アイテムショップ――「ロイドよろず店」を開いてから、一週間が経過した。
ありがたいことに売り上げは未だに好調で、俺はギルドや商会を通じて継続的に仕入れている素材を使い、補充する商品を作り続ける日々だった。
それでも【ドラゴンスレイヤーズ】に所属していた時ほどの忙しさではない。
今の俺としては、それなりにゆったりとした日常を送れているつもりだ。
しかし、それは俺の魔力量があってこそ、とも言えるだろう。
魔力が多ければ、それだけ一日に作成できるアイテムの数も増える。魔力回復ポーションの世話になることはほとんどないが、自然回復を待って作成するくらいには、アイテムを作り続けていた。
――で。
当然だが、クラスのレベルというやつは、高くなってからより、低い内の方が成長しやすい。
それはクラスアップした後、クラスレベルが初期化された場合も同じなのか、俺のレベルはどんどん上がっていった。
そして、つい昨日の話だ。
俺のレベルが「10」に達したのは。
「さて……このスキル、どうするべきか……」
昼食時。
時間が時間ゆえに、この時間帯は飲食店ではないウチでは客足が遠退き、しばらく暇になる。
それは今日も例外ではなく、客一人いない店内で、俺はギルドカードに記載された自らのステータスを眺めていた。
そこにはこう表示されている。
【名前】ロイド
【天職】アイテムマスター
【レベル】10
【魔力】1535/1535
【スキル】『アイテム鑑定』『リペア』『アイテム作成』『アイテム分解』『魔力補完作成』『魔力付与』『アイテム魔力作成』『スキル抽出』『スキル付与』
【商人ランク】F
レベルが上がったのと、日々の魔力消費によって、魔力はいまだ順調に伸び続けている。
それは別に良いのだが、10レベルになってから増えた二つのスキルが問題だ。
ここで話は少し変わるが、アイテムクリエイターがなぜ世間で不遇のクラスと呼ばれているのか、その理由を説明したいと思う。
といっても、アイテムクリエイターが不遇な理由など、たくさんありすぎて一概に説明することはできない。
「初級のアイテムしか作ることができない」「技術を学ぶ余地がない」「クラスレベルが上がりにくい」「専用の職人ギルドが存在しない」「他の生産職から嫌われている」――などは、すでに説明した通りだ。
だが、これらに加えて、「レベルを上げても、ほとんど成長しない」というのが大きな理由として上げられるだろう。
何もそれは、技術を学ぶ余地がないから、職人として成長の余地がない――という、それだけのことではない。
他の生産職に限らず、普通、レベルが上がればどんどんとスキルを覚えるものだ。
しかし、アイテムクリエイターは最大レベルである50まで至っても、新しいスキルは二つしか習得できなかった。
クラスを得た時に、最初から覚えているスキルは三つある。
『アイテム鑑定』『リペア』『アイテム作成』の三つだ。
しかし、10レベルで『アイテム分解』、20レベルで『魔力補完作成』を覚えて以降、クラスアップするまで、他にスキルを習得することはなかった。
レベルを上げてもたった二つしかスキルを覚えられないのだ。
たださえ、レベルが上がりにくいというのに。
自らの成長を実感できないという点において、これはかなり辛いものがある。
純粋にアイテムクリエイターの道を志そうと思っても、これでは心折れてしまうのも仕方ない。
だが、アイテムマスターの10レベルになって、急に二つもスキルが増えたのだ。
もしかしたら、このクラスはレベルが上がれば色々とスキルを覚えられるのかもしれない。その予想は期待よりも、俺にとっては戸惑いの方が大きかったのだが。
そして――今回覚えた二つのスキルの効果だが、それは以下のようになっている(ちなみにスキルの効果も、ギルドカードで確認することができる)。
『スキル抽出』――「アイテムに付いているスキルを抽出し、スキル結晶化することができる」
『スキル付与』――「結晶化したスキルを、他のアイテムに付与することができる。ただし付与できるスキルの上限数は、アイテムに使われている素材に依存する。消耗品や魔道具、『魔力作成』したアイテムには付与できない」
アイテムに付いているスキル――とは、たとえばレベルが高く腕の良い鍛冶師などが武器を打った場合、その武器に『斬撃強化』などの「特殊能力」が発生することがある。あるいは迷宮で発見される装備品などにも、多くの「特殊能力」が付いていることがある。この「特殊能力」をクラススキルとは別の「スキル」という。
『アイテム鑑定』でスキル付きの武器を見てみれば分かるが、ステータスと同じように【スキル】という欄に能力が表示されているのだ。
おそらく、これを「スキル結晶」とやらにして抽出することができ、そして別のアイテムに付与することができるのだろう。
アイテムマスターの存在が世間に知られていないのだから当然だが、こんなスキルは見たことも聞いたこともない。
少し考えてみただけでも、かなり有用なスキルであると思われる。
そんなスキルを習得できたことは――今更感が大いにありつつも――素直に嬉しい。
だが……、
「まさか、スキル付きのアイテムが、一つもないなんてなぁ……」
冒険者となってから、自分で作成したり、あるいは買ったり集めたりしたアイテムの数々。
アイテム袋の中をひっくり返して調べてみたが、俺はスキル付きのアイテムを一つも持っていなかった。
まあ、これは当然だ。
スキル付きの武具なんて、買おうと思えば凄まじく高価だし、迷宮で発見しようと思えば、俺では死を十回くらい覚悟しなければならないほど、深い階層を探索しなければならないのだから。
うだつの上がらないD級冒険者に過ぎなかった俺では、高嶺の花すぎるというわけだ。
しかし、これではスキルを試すこともできないな……。
後で武器屋を回ってみるか……。
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