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4.「何か」の力

 過去に飛ばされてから一ヶ月が経った。


 教師が日本国家の成り立ちについて語っているが、俺は頬杖をついて聞き流す。あくびをして窓の外を見た。屋上から鳥が飛び立っていく。俺もあんな風に軽々と跳べたらいいのになあ。


 あの日から昼夜問わず神社に通った。婆さんは境内を掃くばかりでうんともすんとも言わないし、進行方向を塞いでも無視される始末だ。


 屈伸ピアッティは確かに習得した。雅彦とも話したし、あいつのムーンサルトもはっきり覚えている。あれは夢なんかじゃなかった。


 鉄棒の手ごたえを思い出しながら、俺は机に突っ伏した。前の席の男子が頭にプリントを乗せてくる。予備動作ゼロで俺の腕をつかんだやつだ。手首は細く、切れ長で涼しげな目元をしている。


「日本史って何か意味あんの?」


 そいつは手で口元を隠してつぶやいた。授業中に度胸あるなこいつ、と思いながらプリントを受けとって言った。


「受験で使うんだろ」

「へえ、どこ受けんの?」

「どこも受けない」


 彼は吹き出した。教師に注意されて薄い手のひらで謝る。


「おまえはスポーツ推薦だろ、うらやましいよ」


 ぽつりと言って椅子を引いた。女みたいに細い体をしているが、こいつも何かやっているのか。


 「次、貴橋きはし読め」と言われ面倒くさそうに立ち上がった。女子たちはうっとりとした表情で「かっこいー」「王子様みたいだよね」「デートしてみたーい」とコソコソ言っている。


 背筋はすっと伸びて、うつむいた顔に髪がかかる。奥二重に長いまつげ、鼻筋は通りくちびるは薄い。男でも見惚れるような立ち姿だな。体は薄いけれど体操をすれば黄色い歓声が上がりそうだ。


 ところが着席する時に「うざ」とつぶやいた。驚いている俺を見て、そいつは小さな舌先を突き出した。




「もっかいやー!」


 向井の声が体操場に響く。俺は汗を拭って十二m四方のゆかに立った。ピットの縁にいる部員たちが「ファイッオー!」と声を上げる。


 部員でないと体操場は使えないと顧問のもやし、正しくは茂吉もよしに言われ、仕方なく入部届を出した。大会には出ないと言ったのに茂吉が飛び上がって喜んだので何だか腹が立った。


 向井は空手部と兼部になり、稽古がある時は三十分のみ、休息日は丸一日付き合ってくれる。


「よっしゃーバッチこーい!」


 コーナーで向井が手を上げる。俺は肩を上下させて呼吸を整え、対角線上を見つめた。 


 タンブリングバーンを助走しロンダートからバク転、ゆかの反動を生かして一気に上空に体を起こす。


 膝をかかえ込んで後方宙返りをしながらひねりを入れる。一回、二回、緑のゆかが眼前に迫る。


「……うおっ、とっと!」


 向井が体を抱きかかえた。腹の下に右腕、背中側に左手、完璧な補助だ。


「くそっ、高さが足りない!」


 体を跳ね起こしてまたコーナーに向かった。「おいおい待てや」と向井が追ってくる。やっと体がイメージに追いついてきた。ひねりきるまであと一息だ。


 向井が着地点で構える前に駆け出した。ロンダート、バク転、後方二回宙返りをしながらひねりを――


 まずい、ひねりきれないと思ったが、額はゆかに着く直前だった。とっさに肩を引く。赤い「何か」が視界をかすめる。それはまるで炎のような体の内から湧き出る力だった。


 真下に向井が突っ込んできた。こめかみの下に手を滑り込ませる。


「おっま、え……なんちゅう危ないことするんや!」


 向井が叫んだ。仰向けになったまま胸倉をつかまれる。


「一歩間違えたら死ぬとこやったやろ!」

「あんなことで死んだりしない」

「人間、死ぬときゃ死ぬんや!」


 あまりの形相に言葉を失っていると「すまん、言い過ぎた」と後頭部にタオルを当ててきた。


「保健室でアイスノン借りてくるわ」


 俺をゆかに寝かせ、飛び出していった。死なないんだよ俺は、と思っていると部員と顧問が集まってきた。


「高見くん、大丈夫?」


 部員のひとり、沖間おきはざまが覗き込んできた。白い肌に薄茶色の髪、どこかで会った気がするのはなぜだろう。


「危なかったね。何をしようとしてたの?」

「何って」

「さっきやろうとした技、何ていうの?」

「あれは新月面……」


 のつもりだった、と言いかけて口を閉じた。失敗したのだから技じゃない。


「新月面って何?」

「そんなことも知らずによく体操やってられるな」


 俺の言葉に頬を膨らませて「そんな言い方しないでよ」と言った。前にも似たようなことを言われた気がするが思い出せない。額に手をあててため息をつく。失敗してるんだから俺も同じか。


「ムーンサルトは知ってるか」

「聞いたことは……あるかも」

「後方かかえ込み二回宙返りをしながら一回ひねるのが月面宙返り、通称ムーンサルト。今のは二回ひねりを入れる新月面宙返りだ」


 新月面宙返り、とつぶやいた白い頬に光が当たる。


「ムーンサルトじゃだめなの?」

「はあ?」


 思わず体を起こした。こめかみに鋭い痛みが走る。


「ムーンサルトも難しい技なんでしょ? 危険を冒して二回ひねりにしなくても……」

「おまえに何がわかる」


 痛みと共に苛立ちが湧いてくる。バク転もできないやつに言われる筋合いは……いや、どこかで見た気がする、なんでだ。


 ふとムーンサルトを跳ぶあいつの姿を思い出した。薄茶色の髪、白い肌、透き通るような瞳、首筋にあるほくろ。


 過去で勝たないといけない相手がなぜ目の前にいる――


 沖間の胸倉をつかんだ。記憶より背は高く、首も腕も太い。中学時代の幼さも消えている。こいつは体操初心者のはずだ、なんでこんなに似てるんだ。


「おまえ、シャオ・ルイチをやった選手か!」

「えっ? しゃおなんとかって何?」

「本当はムーンサルトも余裕でできるんじゃないのか!」


 憤りが全身をかけ巡り、我を忘れて沖間を押し倒した。教師や部員が群がって引きはがそうとする。


「ちょ、ちょっと待ってよ! 人違いじゃないの?」

「この目で見たんだ、おまえのシャオ・ルイチを!」


 叫んだと同時に後ろから襟首をつかまれ、俺はひっくり返った。 


「怪我人が何をやっとるんや、大人しく寝とけ」


 向井は呆れたように言って俺をゆかに寝かせた。何度も体を起こそうとしたが、その度に肩を押されて逆戻りする。


「保健室の先生、外出中らしくてこいつら連れてきたわ。応急処置に詳しいらしいから」


 顔を見せたのは陸上競技用のショートパンツ姿の貴橋と、グレーのプリーツスカートをはいた小柄な女子だった。


「あっ、お百度参りの人!」


 俺を見るなり指を差した。長い髪が揺れる。貴橋が「こら」と指を手の中に収めると、黒髪の女子は「ごめーん」と謝った。


「朝の散歩で毎日すれ違うんだけど、覚えてない?」


 彼女が濡れたタオルを手に近づいてきたので、あわてて体を起こした。


「いつも白いおっきい犬を連れてるんだけど」


 俺は「あっ」と声を出した。毎朝、何匹も犬を連れているあの中学生か。なんで高校の制服を着てるんだと言いかけて口を塞いだ。彼女は「ごめん知らないよねー」と申し訳なさそうに眉を下げる。


「今朝は七匹連れてた……」

「嬉しい、覚えててくれたんだ。私、二組の松谷まつたにっていうの。よろしくね!」


 満面の笑顔で手を差し出したので、俺も腕を伸ばした。俺の手を貴橋が思いきり叩き落とす。


映実えいみに気安く触るな」


 なんでにらむんだ。こめかみに痛みが走る、早くこの場から離れたい。頭を抱えて立ち上がろうとすると貴橋が俺の腕を握った。


「頭、打ったんだろ。見せてみろ」

「大したことない」


 アイスノンをふんだくると肩をつかまれた。身長差のある貴橋が俺の髪をかき上げる。


「今すぐ救急車って程じゃないけど、けっこう腫れてるな。すぐ病院行けよ」

「言われなくても……」


 貴橋の手を振りほどこうとすると、向井が巨体を割り込ませてきた。


 手を離そうとしない貴橋と俺の間に立ち「うんっ、おれも同感や! 早よ病院行こか!」と早口でまくしたてる。


 沖間が俺を見ている。結局、真相は聞き出せなかった。次は絶対に吐かせるからな。


「で、お百度参りってなんのことや?」


 変に歪んだ笑顔の向井が言った。「あのね、毎朝ね」と映実が割り込むのを貴橋が阻止しようとする。


 体操場の外からエンジン音が鳴り響き、運転席から茂吉が「早く乗りたまえ!」と叫んだ。部員たちに取り囲まれ、俺は身動きが取れなくなった。


 怪我のせいじゃなくて頭が痛い、と思いながら、仕方なく向井の肩につかまった。



***



 日曜の昼時、ひたすら後方宙返りをする。


 高見体操スクールは倉庫を改造した施設なので梅雨の時期は蒸し暑い。Tシャツで汗を拭い、後方宙返りを続ける。助走なし、立ったまま反動をつけて空中で回転する。


 新月面宙返りに挑んだあの日、父さんが病院に飛んできて言った。


 リスクを考えない人間にチャレンジする資格はない、しばらく高校の体操部に出入りするなと。


 せっかくの手応えが遠のいてしまう。新月面をイメージすると手の内側がチリチリとする。


「おーい、三十回終わったよ」


 和真さんが顔の前で手を振った。


「すみません」

「そんなにやりたいの、新月面」


 怪我をした経緯は話してある。俺はこっくりとうなずく。


「だったらここでやりなよ。学校の施設、ここより合ってるの?」

「……いえ」


 ゆか演技で使用するタンブリングバーンには跳躍に欠かせない様々な素材が埋め込まれている。ここは最新式のスプリング、高校の体操場は綿のままだ。跳躍にはかなりの差が出る。


「たっかみー! おれが来たったでー!」


 出入り口を開け放ったのは向井だった。十数名いる練習生が一斉に視線を注ぐ。


「あの、すんません……お気になさらず」


 普通に入ればいいのに、と力が抜ける。俺を見つけるなり体を縮めたまま猛ダッシュしてきた。


「この時間は誰もおらんて言うてたやろ!」

「いつもじゃないけど」

「なにおー!」


 小さな声で叫んで詰めよった。和真さんが呆れた顔をする。


「きみが例の補助くん?」


 背は和真さんより高いのに、向井は顔面蒼白になって頭を下げた。


「素人が手ぇ出してスンマセン! 怪我する前に止めるべきやったのに」


 俺を見て「ほんまスマンかった」と言った。なぜか胸の隅がチクリと痛む。


「向井くんだっけ、いい体してるね。何かスポーツやってるの?」

「えと……空手は十年ちょっとやってマス」


 ぎこちない標準語で頭を下げた。空手を十年、初耳だ。


「ふうん、なるほど。じゃあ今から補助をやろうか」

「……ハイ?」


 和真さんの言葉に向井は目を丸くした。俺の心拍数も上がる。


「正しい補助を教えてあげるよ。こっちに来て」


 向井の背中を押し、戸惑う俺に「準備してね」と言ったので余計に混乱した。練習生がゆかから下り、対角線上に向井と和真さんが立つ。


 コーナーラインの手前、新月面の着地点だ。頭から落ちたあの感覚が蘇り全身の毛がざわつく。


 向井が腰を落として構えた。「そのまま待ってて」と和真さんは数歩前に出る。


「俊、新月面をやってみな」


 俺は生唾を飲み込んだ。まずい、自分ではない「何か」の力が湧いてくる。これは異物だ、自分の力で跳ばなきゃ意味がない。


 和真さんが手を振っている。「何か」がじりじりとあふれ出して汗が落ちる。手の内にある赤いもやは消えない。


 向井は着地点で構えたままだ。俺が跳ぶのを待っている。


 どうにでもなれ、と息を飲んでタンブリングバーンを駆け出した。ロンダート、バク転、着地から跳躍し体を引き上げる。


 その時、足元から不思議な力が働いた。イメージしたよりも高く宙に上がり、着地点がはっきり見える。上昇しながら後方宙返り一回ひねり、下降しながら後方宙返り一回ひねり。


 コーナーライン上に着地した。よろけた体を向井が受け止める。


「すごっ……ドンピシャやんか!」


 歓喜に満ちた瞳のまま俺を担ぎ上げた。歓声を上げる練習生たちに「10点満点やー!」と叫ぶ。「今は上限ないんだよ、下ろせ!」ともがいたが「そうなんか?」ととぼける。


「見事だね、新月面大成功!」


 拍手する和真さんを見て、違うと思った。跳び上がった時に力が加わっていたはずだ。


「まあ僕が少し押したけどね」


 笑みを崩さず、俺の体に手を添えた。


「落下を防ぐだけが補助じゃないんだ。選手に気づかれないくらい素早く力を加えることもある。怪我をしないことが肝心だからね」


 手のひらをすくい上げる動作をした。バク転の着地から跳び上がる時、いや、バク転の時点で腰に手が触れていた気もする。


「いい補助を見つけたじゃないか。安心して跳べるのはいいことだ」


 和真さんが笑いかけると「ホンマに?」と向井が照れた。赤いもやは消えている、おかしな力は使わずにすんだのか。


「高校で練習するのもいいけど、その前に向井くんを連れてくるんだ。技にあった補助を教えてあげるよ」

「おれにできるんかなあ」

「きみは動体視力が優れているし、体の反応もいい。跳躍に合わせて足の位置を調整していたよね」

「ホンマですかー!」


 向井が小躍りし始めたのをよそに着地点を見つめた。技に危険を感じる時、体の内からこぼれるおかしな力。いつもは技を決めてもしばらく消えないのにどこにいったのだろう。


「俊は基礎からやり直そう。才能だけじゃ前に進めないよ」


 背中を押され、筋力トレーニングを再開した。あれは才能と言っていいのか、俺の力ではないのに。


「どないした?」

「あ……いや」

「やっぱ止めとくか? おれは素人やし、また怪我させてまうかも」

「そうじゃない」


 屈伸姿勢から体を起こした。責めてるんじゃない、おまえの補助で新月面をやってみたいんだ。


 眼前にあいつのムーンサルトが迫る。手に汗がにじみ出る。


「……やり直さなきゃいけないんだ」


 ごまかさず言ってしまいたい、たとえ嘘だと思われても。俺は声を振り絞った。


「半年前の七月二十四日、あの日の演技をやり直したい」




 夕暮れの街を走りながら向井とのやり取りを思い返す。


 過去の試合をやり直したいと言った俺に「わかった」と向井は言った。そのまま帰ったけれど、どう受け止めたのだろう。


 それにあの「何か」わからない力、和真さんが補助をした後はいつも消えてしまう気がする。


 どうしてだろう、と考えながら神社の敷地に入ると「高見くーん」と声が聞こえた。振り返ると犬を引き連れた映実がいた。結わえた黒髪が風に流れ、生い茂る葉がざわめく。


 階段下で呼吸を整えると、スポーツドリンクを差し出された。思わずごくりと喉を鳴らす。


「はい飲んでね」

「いや、いいって」


 断っているのに持たされた。「おいしいよ」と笑顔で言われて犬もこういう気持ちなのかなと思う。


 渋々受け取って茜色の空を見上げる。夏の到来を感じさせる分厚い雲が山の峰から立ち登っている。


 六匹の犬は映実を見つめて目を輝かせていた。映実はリュックからプラスチックの皿を出し、それぞれに水を注ぐ。


「朝より一匹少ないな」

「ちょっとね、具合が悪くなった子がいて」


 声をすぼめ、眉を下げて笑った。結んだ口元がわずかに震える。


「散歩してる犬、みんな飼ってるのか?」

「ううん、飼ってるのはこの子だけ。他は元患畜なんだ」


 白い秋田犬の首元をなでると気持ち良さそうに目を細めた。


「カンチク?」

「お父さんが獣医なの。治療のあと連絡が取れなくなって飼い主が引き取りに来なかった子たちなんだ」


 映実はチワワを抱き上げた。


「この子たちは迎えに来るのをずっと待ってるんだけどね」


 チワワは彼女の膝にペタリと座った。前足がいびつな形をしている。他の犬もみんな、怪我や病気をしていたのか。


「家の敷地に保護ハウスを建てて保護活動をやってるんだ。やれることをひとつずつ、と思ってね」

「だからいろんな犬と散歩を……」

「元のおうちに戻れるのが一番なのはわかってるんだけど」


 映実は鼻水をすすり上げて目をこすった。秋田犬が優しい眼差しで見つめる。濡れた目元になぜか心が痛む。


「高見くんの走る姿にいつも励まされてたよ」


 急にパッと顔を明るくして言った。抱かれたチワワがうるんだ大きな瞳で俺を見つめる。


「階段を昇り降りしてるからお百度参りの人かな、なんて最初は思ったけど、雨でも雪でもずっと走ってた。保護活動なんてやめようと思ったこともあったけど、高見くんがいつも走ってるから」


 夕陽が映実の横顔を照らす。瞳は水面みなものように輝き、不思議と胸の内が熱くなる。


「あと一日がんばろう。そう思って今日までやってこれたよ」


 ありがとね、そう言って俺の手を握った。水荒れした指先から温かな感情が流れ込んでくる。


 俺はただ、雅彦が忘れられなくて走っていただけなのに。


「モチコちゃんも高見くんが好きだよ」


 秋田犬は一吠えした。彼女といると動物の言葉が翻訳されるんだろうか。いつも見てたよ、黒いつぶらな瞳がそう言っている気がして、胸の内が震える。


 モチコと呼ばれた白い犬は嬉しそうに俺たちの周りを走った。リードがからまって映実との距離が縮まる。髪から甘い香りがする。まずい離れないと、と思ったその時。


「小僧、時間だよ」


 背後から婆さんの声がした。急に辺りが輝き始め、心臓が飛び跳ねる。映実は俺の体に視界を遮られたまま「何ー見えないー!」と声を上げ、犬たちが婆さんに吠えたてる。


「なんで今なんだ、タイミング悪すぎるだろ!」

「時が満ちるのを待っていたのさ。今こそ時逆の頃合い」


 またしても顔の見えない宮司が姿を現した。からまったリードがほどけず必死になってもがく。ひふみ何とかという文言が始まり、俺たちは宙に浮かび上がった。


「くそっ、ほどけろ!」


 堅くなった結び目を解くと同時に御弊が振り下ろされた。


 視界は一瞬にして闇に溶けた。

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