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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

真珠にかけて

作者: 甘盛かふぇいん

私はアンドロイドの技師でクライアントから故障したアンドロイドの修理を生業としている30代男性。

アンドロイドは珍しく男性モデルで、クライアントの趣味か胸にかかる程度のブロンドヘアをなびかせた美少年。15歳ぐらいに見える。

故障の原因が体外か体内かによっては処置が異なるためまずは彼を起動した状態で体の隅々を検査した。腕、脚、胸、肘、頭部・・・目立った外傷はなく、動きも滑らかで人間と違うのはシステムだけだと感じさせる素晴らしい出来だった。

クライアントからの修繕内容に目を通したが点検ではなくシステムの初期化した後、データローミング機能と性格の改善とのこと。彼をじっと観察する。

窓から蝶が入り込み、それを指さして笑った。私はときめく心を必死に抑え彼の行動を観察する。

会話の起伏を観察するために喋りかけた。

「アンドロイド'5724ES'、元の家はどんなところだったかい。」

「すごく大きくて優雅な場所。僕は毎日女の子の服を着せられて紅茶を飲む振りをさせられてたよ。」

男性モデルで女装させて紅茶を飲む振りを・・・ドール趣味か?間違えて男性モデルを買えるほどアンドロイドは安くない。

「僕の髪変じゃない?」

「美しく、とても君に似合っている。」

「あはは・・・嗅いでも同じことが言えるかな。」

彼が頭を私の方へ傾けた。攻撃されるかもしれないのでプロテクターを構えながら嗅いだ。

これは人工物ではない。リアルファーがあるように人間の髪から作られていると確信した。よく見ると部分によって違う髪が充てられている。

「僕を作るために何人もの人が髪を抜かれたらしいの。だからこの髪が大っ嫌い。」

彼は髪に手を伸ばし、プログラミングの制御により触れないので指を震わせた。きっと性格の改善というのはデータを消して従順な性格に書き換えることを意味しているのだろう。

しかし金持ちの趣味はわからないな。人毛でヘッドを作るために抜いてまで根元のリアリティを追求したのだろうか。なら何故アンドロイドを買ったのだろう。

「僕の髪、どうなるの?」

「データの書き換えの際はヘッドを取り外して内部データにアクセスしなければならない。髪は当然内部に侵入する危険があるので取り除く。」

アンドロイドの目はキラキラと喜びで揺れた。

裸の彼に白いカーテンをケープの代わりに縛った。私の横顔が彼の髪を縛る際、近づいた瞬間ちゅとキスされた。イタズラな笑顔、こんな無邪気な笑顔の出来るデータを消すのは惜しかったが、彼の憎しみの一部がクライアントの依頼によって解き放たれるのは心が少し晴れるはず。

「僕もお兄さんみたいな頭になるのかな。」

頭をかいた。私の髪型はM字の生え際に沿って天パが生え揃う坊主で面白味がない。アンドロイドは私より短い髪型、剃るのだが私ぐらいの長さにすると言う方が恐怖心は薄れるのだろうか。

鋏で大雑把にを切っていく。落ちる髪は光に反射して瞬いて、とても罪深い行為をしているかのような感覚に陥る。アンドロイドは動くと危ないのでスリープ状態に移行した。止まった彼は死体のように冷たく、人形に近いような不気味さがあった。バリカンで長さを均一に短くし、カミソリを頭に当てて擦った。痛覚が無い分怯えなく剃れるのがアンドロイドの良いところだ。

施術は成功、彼は先程の彼ではなくデータがまっさらの状態の彼である。アンドロイドのイメージとして昔は剃髪がよく使用されていたが髪を剃ってからは確かに不気味な印象だった。金髪の髪束が掃除し損ねて床に落ちており、彼がすくい上げ照明に当てて眩しそうにしていた。

私は今も昔も金髪の美しさは人間だけの価値観ではないと知る。

私は一つだけ彼に言えてないことがある。スリープ状態の彼に何回ぶっかけたか。剃髪が好きでアンドロイド技師になった私が美しいモデルを借り物だとしても迎え入れた際、誰が私を止めるのだろうか。

剃髪に白い液体がへばりついてるさまを想像して欲しい。スイカに塩をかけるだろう。少し汚れた方が元の美しさが際立つ。

私の髪型は自分が美しくなかったことへの忘却なのだ。剃髪はアンドロイドに限る。



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