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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

女の子同士

作者: 夢野ヤマ

気分転換に短編書きました。

気楽に読んでもらっていいです。

 「好きです。付き合ってください!」

 「……無理」


 ずっと好きだった人から私はフラれた。

 何が理由かは分からない。

 料理もできて裁縫もできる、女子力MAXな私がフラれるとは思わなかった。


 「そもそも女が女に告るってどうよ?」

 「いいと思います!」

 「よかねーよ。沙織モテんだから、私よりいい人いるでしょ。女じゃなくていい男を探せよ。お・と・こ!!」


 華泉青蘭。女の子にしては強気な態度でありながら、たまに脆い時もある。

 私はそのギャップに惚れ、告白した。


 「私は青蘭さんが好きなんです!」

 「だから無理ってんだろ。そもそも何で敬語なんだよ」


 私と彼女が出会ったのは中学二年の頃。そのまま追うように同じ高校に進学した。


 「だって普通、愛し合う人には敬意を払うもんなんでしょう?」

 「お前はいちいち他人行儀なんだよ」

 「だったら青ちゃんって読んでいい?」

 「……好きにしろ」


 私は何としても彼女を独り占めしたかった。そのためにある作戦だって考えた。


 「青ちゃん、消したいやついる? 私が消すよ?」

 「消したいやつ? いないな。強いて言えばお前」

 「ブォォォォォォ!!」


 思わず吹き出してしまった。


 「それ本当?」

 「嘘」


 よかった安心した。次の作戦だ。


 「青ちゃん、お金どれくらい欲しい?」

 「お金? いらねーよ。コツコツ貯金してんだから」

 「一万払うから付き合って!」

 「金で説得させようとするな。しまえよんなもん」

 「ダメ?」

 「ダメに決まってんだろ」

 「だったら、2万いや3万で!」

 「オークションじゃねーんだよ」


 くっ、これも失敗か。

 こうなったら誘惑作戦だ。


 「ねぇ、青ちゃん」

 「何だ? いきなり胸元開いて」

 「知りたくない? 女の子のひ・み・つ」

 「興味ねーな。つーか、私も女だし」


 硬い、硬すぎる。なんて鋼のメンタルなの!?


 「そもそも何で私なんかに告ってんだよ」

 「そ、それは、青ちゃんの体を独り占めしたくて!」

 「いや、最低だな」

 「ち、違うの! 体ではなく青ちゃんを独り占めしたいなーと……」


 私は何を言ってるんだ。もっと他の言い方があっただろうに。


 「私を独り占めしてどうすんだよ」

 「そりゃもちろん、ね?」


 私はもう一度、胸元を広げ誘った。


 「やっぱ最低だな」

 「違うの! 本当は手を繋げるだけでも幸せだなーて」

 「本当にか?」

 「うん」

 「ほい」

 「……ふぇ?」


 彼女は私の手に向かって握手をした。


 「これで満足か?」

 「……うん」


 満足。これで満足したはず。でも、これで満足できるかー!


 「やっぱ満足できない!」

 「どうすりゃいんだよ」

 「……それ以上のことを」

 「はぁ、ほい。これで満足か?」

 「……ふぇぇぇぇぇぇ!?」


 彼女の手が私の頭に近づき、優しく撫でられた。

 私は思わず赤面してしまった。

 でも、それ以上されたら私の気持ちが持たない。もういっそ。


 「ちょっ、やめろよ!」

 「もう私ダメかも」


 私は彼女を強引に押さえつけてしまった。


 「お、落ち着けって!」

 「ふふふ。ここが弱いんでしょ?」

 「きゃっ! そ、そこは……」


 彼女の胸元を触った。


 「ふふふ。もっとしてあげる」


 私は調子に乗り、続けてしまった。

 彼女は抵抗しながらも携帯を取り出した。


 「もしもし裕二?」

 「……え?」


 電話主の名前を聞いた時、絶望した。

 まさか彼氏?


 「……誰なの、そいつ」

 「彼氏」

 「……嘘よね?」

 「本当」


 終わった……。彼氏がいたんじゃどうしようもない。こうなったら彼氏を倒すしか方法はない!


 「何物騒なこと考えてんだ?」

 「……ほぇ?」

 「顔に殺気が出てたぞ」


 そんな怖い顔だったしてたのか。

 彼女が超能力者にでもなったのかと思った。


 「……彼氏がいたなんて。お、お幸せに」

 「あれ嘘だから」

 「……え?」

 「お前が強引に押さえつけるから、ちょっと悪戯しただけ」

 「うわーん!」

 「お、おい。 泣くな、抱きつくな」


 私は思わず飛び込んでしまった。


 「まぁ、悪戯したのは悪かったな。ごめん」

 「ゴメンデジュマジャレマジェーン!」

 「なんて?」

 「ワダジドジュキアッテグダザイ!」

 「??? まぁ、よく分からんが友達としてはダメなのか?」

 「ヴレジィデジュヴー!」

 「お前さっきから何言ってるか分からんぞ」


 これが四季宮沙織が初めて告白をした日のことであった。




◯◯◯


 私たちはあれからデートをすることになった。


 「あくまで友達としてな」

 「分かってるってば! ねぇ、どこ行きたい?」

 「帰りたい」

 「道端でイチャつく?」

 「んなこと一言も言ってねーよ」

 「まだ心の準備が……」

 「準備しなくていいから」


 彼女とこんな会話をしているうちに偶然、道端でイチャついているカップルを見つけた。


 「いいなー」

 「よかねーよ。にしてもよくあんな場所でできるよな」

 「羨ましい?」

 「羨ましかねーよ。私はちゃんと家とかでイチャつきたいな」


 彼女が切なそうな表情で言った。


 「今から私の家に行く?」

 「いかね。お前とはイチャつかねーよ」

 「私たちはカップルでしょ?」

 「ちげーよ」


 呆れながら一瞬で否定されてしまった。


 「帰りたいとかそんな冷たいこと言わずにどっか行きたいところないの?」

 「だったら腹減った。飯食いたい」

 「私が奢るよ!」

 「いい、自分で払う」


 昼過ぎになり近くのレストランへと向かった。




◯◯◯


 「何頼むー?」

 「ハンバーグ」

 「私もハンバーグ!」

 「お前は真似せず好きなもん食えよ」

 「真似してないよ?」

 「ならいいが」


 注文が決まればすぐに店員を呼んだ。


 「ご注文は何になさいますか?」

 「ハンバーグセット二つで!」

 「かしこまりましたー!」


 店員はとても印象がよく、清々しい笑顔で聞いてくれた。


 「お前、私のどこが好きなんだよ」

 「何急に?」

 「あの時告られんのなんて初めてだったからな。ましてや女に」

 「……全部だよ」

 「え?」

 「青ちゃんの全てが好きなんだ! だから付き合っブォォォォォォ!」

 「ば、馬鹿! 声でけーよ」


 店内に響き渡るような大声を出したら、彼女に口を塞がれてしまった。

 周りのお客さんに変な目で見られたのが恥ずかしい。


 「もう分かったから」

 「ヴァガッデグレデヴゥレジィヨダガラズギアッデ!」

 「手に唾がつくから喋んな」


 彼女に口を押さえつけられたままでも強引に話した。

 そのまま手を離されなんとか息を吸った。


 「はぁはぁ!」

 「ちょっとやりすぎたかも。ごめんな」

 「ぜ、全然大丈夫だから!」

 「そうか。ほれ、来たぞ」


 そうしている間にもハンバーグが来た。


 「お待たせしましたー、ハンバーグセットです!」

 「ありがとうございます!」


 私は盛り付けられたハンバーグを見て、思わずよだれが垂れてしまった。


 「うわー、美味しいそー!」

 「うまそうだな」


 中までジューシーなハンバーグに加えライスまでも頬張る。

 うまいわけである。


 「うまーい!」

 「うまいな」

 「もぐもぐもぐむしゃむしゃむしゃ」

 「にしても凄い食いっぷりだな」

 「箸が進んじゃって!」

 「私のも食うか?」

 「え、いいの!?」

 「あぁ、お前と違ってあんま食うほうじゃないからな。もう腹いっぱいになった」

 「じゃあ遠慮なくもら……」


 彼女の食べかけのご飯をもらうのは嬉しいがこれって間接キスになってしまうのではないのか?


 「どうした?」

 「……か、か、か、間接キスになっちゃうよ」

 「別に女同士なんだからいいだろ」

 「その残りは家に持ち帰って、冷凍保存してもいい?」

 「やめろ」

 「だよねー」

 「食わねーのか?」

 「食べます!」


 私は残りのハンバーグを少し取り口に運んだ。

 その味は今までの人生の中で一番と言えるほど美味しかった。


 「美味しい!」

 「全部あげるよ」

 「ありがとうございます!」

 「お、おう」


 こうして完食し、二人はレストランを出た。




◯◯◯


 「俺と付き合ってください!」

 「私好きな人いるから無理」


 私は偶然、彼女が男子に告白されているところを見てしまった。

 それもただの男子ではない。学校一のイケメンにだ。

 それを彼女は好きな人がいるからという理由で断っていた。

 男子は「……そうですか」とだけ言い去っていった。




◯◯◯


 「お前見てただろ」

 「なんのことでしょう」

 「屋上で告白されてんの見てただろって聞いてんだよ」

 「……見てました」


 こっそり見ていたことがまさかバレていたなんて思いもよらなかった。


 「やっぱりな」

 「本当に偶然で悪気はなかったんです。すみません!」

 「別に気にしてねーよ」


 彼女は目を逸らしながら言った。


 「青ちゃんって好きな人いたんだね」

 「あれ嘘だから」

 「……え?」

 「私が男と付き合うなんて性に合わないからな」

 「こんなに可愛くて素敵な青ちゃんでも?」

 「か、可愛い!? 私がか?」


 彼女は褒められたのが恥ずかしかったのか顔を赤くしていた。


 「可愛いよ、愛しの青ちゃん!」

 「その言い方やめろ」

 「だったら私たち付き合っちゃおっか?」

 「そんな自然な感じで頼まれても無理だ」

 と冷めたように言われた。


 「ケチ!」

 「なんだよ、恋愛のケチって」

 「どうしたら付き合ってくれるの?」

 「諦めろ」


 それでも私は彼女のことを諦めきれなかった。


 「私のこと好きじゃないの?」

 「友達としては好き」

 「私のこと魅力あるって思わないの?」

 「友達としてはな」

 「私の頭撫でてくれたじゃん!」

 「友達を慰めたかったからな」

 「大体、友達友達友達って青ちゃんにとって友達って一体なんなのよ!」

 「お前」


 そんな冷静に言われてもな。

 やっぱり友達以上の関係は無理なのかな。

 恋人になるにはまだ程遠かった。




◯◯◯


 「青ちゃん遊ぼー!」

 「わざわざ私の家まで押しかけてなんの用だよ。今何時だと思ってんだ?」

 「朝の七時」

 「早すぎるだろ。せっかくの休日なんだからゆっくり寝させろよ」

 「ふふふ。青ちゃん家に来るの初めてだからね!」

 「あれ、そうだっけ? 私の家の場所なんてよく分かったな」

 「匂いを嗅ぎついてきた」

 「犬か」


 文句は言いながらも割とすんなり家に入れさせてくれた。


 「お邪魔しまーす!」

 「はいはい」

 「部屋見せて!」

 「見ても面白くねーぞ」


 眠そうに部屋を案内された。


 「ここが青ちゃんの部屋かー!」

 「別に珍しいもんでもねーだろ」

 「女の子の部屋に入るの緊張する」

 「お前も女だろ」


 一歩を踏み出し部屋へと入った。

 そこには漫画や雑誌などが綺麗に置かれていた。


 「漫画読むんだ」

 「読むよ」

 「何が好き?」

 「グルメ系」


 そのチョイスは少し意外だった。


 「今、意外って思ったろ」

 「お、思ってないよ!」

 「嘘つけ」


 まさか嘘までを見破られるとはあっぱれであった。


 「でお前は何しにきたんだよ」

 「あ、そうだった。じゃーん!」

 私がバックから取り出したのは人生ゲーム。

 「やんのかよ」

 「うん!」

 「そんなんで人生決めていいのか?」

 「青ちゃんと幸せな家庭を築くのが私の最高の人生だからね」

 「うるせーよ」

 と言いながらも一緒に遊んでくれた。


 そんな優しい一面も好きなのである。




◯◯◯


 「男の子が生まれた!」

 「まじか」


 二人との人生ゲームで私は男の子が生まれた。

 そのままの流れで彼女はルーレットを回した。


 「三か。一二三。何々、沙織に告白されたら絶対に付き合う?」

 「付き合ってください!」

 「おい」

 「その返事はいいってこと?」

 「よかねーよ。前から思ってたけど、このゲーム手作り感半端ないぞ」

 「鋭いねー」


 さすがは彼女だ。私の特製人生ゲームに気がつくとは。


 「次は私ねー。五か」


 そのまま五つ駒を進めた。


 「青ちゃんが私に抱きつく!」

 「嫌だよ」

 「ルールだよ?」


 私は首を傾げた。


 「しゃねーな、ほい」

 「ふぉぉゎゎゎゎゎ!?」

 「お前から誘ってきて何照れてんだよ」

 「いい匂い」

 「変態か」


 彼女の優しく包み込むような包容力と微かに香る甘い匂いに悶絶した。


 「次は私か」


 続くように彼女はルーレットを回した。


 「二か」


 二つ駒を進める。


 「なんだこれ。沙織に告白する」

 「えへへー」

 「嫌だ」

 「だからルールだよ?」


 また私が首を傾げる。


 「仕方ないな」

 「やっぱ青ちゃん好き!」

 「お前から告ってんじゃねーか」

 「間違えちゃった」

 「好きだよ(友達として)」


 ため息をしながらも告白をしてくれた。

 その言葉は私にとって最高に嬉しいものであった。


 「青ちゃーん!」

 「だから抱きつくなって! 次お前の番だぞ」

 飛びつかれてもなお彼女は冷静に対応した。

 「いくよー!」


 私はルーレットを回した。


 「五だ!」

 「また五かよ」

 「一二三四五!」


 そのまま駒を進める。


 「お前それ」

 「ありゃ? ゴールしちゃった」

 「今回はお前の勝ちだな」

 「もう一回やろ!」

 「まだやんのかよ」


 それでも彼女が遊んでくれたかどうかは言うまでもない。




◯◯◯


 「なー四季宮、青蘭さんの好きな人って誰なんだよ」

 「へ?」


 教室で前に彼女に告白していた、学校一のイケメンである藤嶋清磨が聞いてきた。


 「それ私!」

 「友達としてだろ?」

 「恋人として!」

 「……へ?」


 私は嘘をついた。

 その嘘に彼は引いていた。


 「あのさ、だったら青蘭さんの好きなものとかってなんなんだよ。俺あの後よく考えたらさ、青蘭さんのこと全然分かってなかったって思ったんだ」

 「好きなもの?」


 言われてみれば私も彼女の興味のあるものがよく分からなかった。

 それなのに一方的に接してしまう私は馬鹿だったのかもしれない。


 「……分からないかも」


 一体私は彼女の何を知っていたのか。




◯◯◯


 「青ちゃんは何が好き?」

 「なんだ突然」

 「私って実は青ちゃんのこと何も分かってなかったなって思って」

 「自由な時間」


 彼女の言葉に衝撃を受けた。


 「だったら私と話してるのは嫌? 現にほら、時間を奪ってるわけだし」

 「そんなことはないよ。お前と話してるのは楽しいしな」


 安心した。万一、彼女に嫌われてでもしているのかと不安になってしまったからだ。


 「だったら嫌いなものは?」

 「男」


 彼女は冷たく返した。


 「だから前に清磨くんを振ったの?」

 「またその話か」


 彼女はうんざりするかのように呆れた表情を見せた。


 「実はさっき青ちゃんの好きな人が誰なのかを聞かれてさ」

 「あいつも結構気にしてんだな。で、なんで答えたんだよ」

 「私」

 「おい」


 真顔でこっちを見られた。


 「だって私たちはもう立派な恋人じゃん!」

 「勝手に話を進めるな」

 「私のことがそんなに嫌いなの?」

 「好きだよ」

 「ほら」

 「それはあくまで友達としてって言ってるだろ。友達としてはお前は優しいし頼りになる」


 恋人であることはあっさりと否定されてしまった。

 それでも、そこまで褒めてくれることは素直に嬉しかった。


 「だったらどうしたら恋人になってくれるの?」

 「諦めろよ」


 私にとって彼女と友達以上の関係を築けないことは、あまりにきつく苦しいものであった。

 同性が好きなことは誰にも理解されないかもしれない。

 ましてや、愛する人にさえも分かってもらえないかも知れない。

 告白したあの時から私の気持ちは一ミリも揺るぐことはなかった。

 それぐらい好きであった。

 それはきっとこれから先、何年経っても変わらない感情だろう。

 同じ女の子にもかかわらず、強気で真っ直ぐな態度。時折見せる優しくて包容力のある姿。そして、今はまだ友達としてかもしれないが、私のことを好きと言ってくれたあの言葉。

 その全てに惚れ込んだ。

 これ以上ない人を好きになってしまった。


 「でもさ」

 「……え?」


 彼女が珍しくこちらを向き、優しく微笑んだ。


 「お前のその友達思いのところは悪くないよ」


 その後に私の頭を優しく撫でた。

 私は気を緩めると泣いてしまうくらいに嬉しかった。

読んでくださりありがとうございます。

評価してくださると嬉しいです。

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