第二話
僕は今日もいつもより二割増しのテンションで学校に行く。神木さんはとっても優しい人だった。僕には珍しいことだけれど、休み時間に話しかけても全く嫌な顔一つせず話してくれる。最初だってあっちから話しかけてくれたし、、、。もしかしたらこれは脈ありなのかもしれない。
「よお、ジャスティス!」
といつものように信ちゃんは僕に話しかける。
僕もいつも通り挨拶をする。
「最近の熱々ぶりはいかがなもんかね?」
と調子のいいことを彼は聞いてくる。僕はそういうことを言われると余計にその気になってしまうたちなので困る。
「どうなんやろ?悪くはないと思うけど、、、。」
「ちょっとずつやな。応援してるで。」
こんな感じで最近は僕と神木さんの関係についての話しかしていない。信ちゃんも面白いのだろうか、よくからかってくる。
そうしていると、僕たちは下駄箱についた。僕の下駄箱を開けると、何か紙が入っていた。信ちゃんから隠れて誰からか確かめる。そこにはこう書かれていた。
「山田正義くんへ
今日の放課後、体育館裏の木の下で待っています。
神木霊花」
きたこれ。間違いなく告白される。人生初のイベントだ!そう思って、にやける顔を抑えながら教室に入ってカバンの中に手紙を大切にしまった。
僕は信ちゃんにはとりあえずばれないように一日をやり過ごした。もし本当に付き合ったら自慢してやろうと思った。しかし、となりにいる神木さんには全く話しかけることができず、話しかけられてもまともにろれつが回らなかった。
僕は放課後、緊張した面持ちで体育館裏まで行った。しかも、そこの木の下で告白すると成功率が高いらしい。まあ、成功は確定しているのだけれど、、、。早く神木さんが来ないかなあと思っていると、
「おまたせ。」
と言って、いつもの冷静な調子で来た。神木さんはこんな緊張するときでも冷静なんだと感心した。
すると、
「あの、言わなければならないことがあるのだけれど、、、。」
と言ってきた。僕は唾をごくりと飲み込み、次の言葉を待った。
「実は私、霊能力者なの!」
僕は唖然とした。告白の言葉を待っていたのに、、、。霊能力?この人は何を言っているんだ?
「えっと、それってどういうことなの?」
「つまり、私にはみんなが霊に取りつかれているかとか、どんな霊に取りつかれているかがわかるの。」
と珍しく、顔を赤らめて言う。こんな時に照れているなんておかしな人だ。
「そんなこと信じられないよ。それなら証拠でも見してくれ。」
と僕が言うと、
「霊能力 共有眼」
と彼女が言うと、世界がモノクロに映った。そして僕は慌てて、体育館でバスケットをしている人を見る。すると、一人一人の頭上に何かしらの白く手足の無い人間がついていた。つまり、ゴーストだった。
「なんだこれ~~~!?」
と僕が言うと。
「そうでしょうね。これを普通の人間に見せたら失神すると思うわ。」
「失神すると思うわじゃないよ!僕が失神したらどうすんの?」
「そんときはそのときよ。」
「もう少し、僕に慈悲を与えてくれよ!」
と話していると、彼女は笑い出した。そして、彼女が本当に霊が見えているのは本当のことらしかった。僕は少し状況が理解できて来たと同時に、落ち込んできた。告白してもいないし、されてもいないのだけれど、振られた気分だった。
「やっぱり、あなたといると面白いわ。」
そう言って、僕との距離を詰めてきた。もしかしたら本題は今からなのか?告白されるかもしれない、、、。そう淡い期待を胸に次の言葉を待った。
「これから私の手伝いをしてもらいます。」
やはり、僕の春はまだまだ遠かったらしい。