機械兵団復活
脱がすつもりでした
あんなことやこんなことをさせるつもりでした
考え抜いた結果やめました()
豚太に抱えられ、私はアジトへと連れられる。シリウスにスキル鑑定をしてもらった所、エキストラスキル『臭う者』らしい。効果としては、味方に対しては能力上昇を伴う芳醇でいい香り、敵に対しては戦意を削ぐレベルの悪臭になるというものである。
もっとも嗅覚無効にしたら効果がないのだが。
自分の現在地を確認するためにマップを見ると帝国領とユリース王国領を跨ぐ洞窟内をアジトとしているみたいだった。王国に終われた時は帝国領側に逃げ込めば王国からの追撃は逃れられるし、逆の場合もしかり。
『紫苑様、現在アルベルトとシャーロットの2人が雪華様を連れ、王都へ向かっています』
なぜ?
『紫苑様が攫われたため、後を付けたらたまたまアジトを見つけたという体で国に報告し、正規軍の出陣を要請するようです』
なぜ雪華がついて行く必要が?
『氷結の魔女マリンスノーの友人となると無視できないことになると予想したためです』
これを立案したのは?
『私です』
やっぱり。とにかく、私は正規軍が来るまでの間自分の身を守らなければならない。まぁ、奪われるものもないし、脱がされたところで何も無いから問題ない。
シリウスと脳内会議をしてる間にアジトの最深部に着いたようだった。ここまでの道筋は雪華達に随時送っている。その気になれば念話も可能らしいが、盗聴される危険があるため、2進数で暗号化された状態で位置情報を送信し続けることにした。
アジトの中はかなり綺麗に保たれている。色んな小説や漫画にありがちな薄汚いことはない。床にはフローリングがあり、その上には赤いカーペットが敷いてある。また、少しふかふかなソファがおいてあった。
「そこに立て」
私は部屋にいたゴリラ顔のやつに部屋の真ん中あたりに立たされる。
「こんなことはしたくないが…」
ゴリラ顔の男によって服を''丁寧に''脱がされる。発信機や盗聴器、武器の類を隠し持ってないかの確認をするらしい。
完全に脱がされたが、ゴリラ顔は私の体をまんじり見て顔を顰めた。
「むっ…ない…ぞ?」
私は機械人形だから生殖器はない。つまり乳首も股の部分にある穴もない。
「ぶひっ…ないわけが…ないぶひっ!?」
ないと言われて、今までそっぽを向いていた盗賊団団長の豚太は私の体を初めて見た。
「人どころか生物ですらない…そしてこの容姿となると…」
ゴリラ顔はどこか納得した顔をして、突然土下座をした。
「機械神アテネ様、この度の御無礼を深く謝罪致します。早く私達が気づいておればと申せばば言い訳ですが…申し訳ございません」
突然の態度の変化に私はあっけに取られた。ゴリラの声を聞いた周りの団員達も含め団長までも跪いた。
「ぶひっ…よくぞお戻りになられました、我が主よ…ぶひっ」
「あ、主??」
ゴリラから事の顛末を聞くと、ここにいるのは元々機械兵団と呼ばれた集団のメンバーたちだったらしい。機械兵と言うのは文字通り、機械人形を主力とした軍隊である。彼らはその機械人形だった者らしい。
所属は帝国だったが上が廃棄すると言い出し、結果的に皆に嫌われるような姿形に呪いで変えられ、この地に放たれたらしい。
その機械兵団で最強で最恐だったのが「アテネ」と呼ばれる少女型の機械人形だったらしい。高いパワーに高い機動力を持って敵を翻弄し轢き殺す。王国からは「白銀の死神」や「戦場の戦姫」と呼ばれていたそうだ。
シリウス、これは?
『あっています。廃棄の件があったのは約100年前、1年という短期間ではありましたが王国と帝国で停戦が結ばれた時期です。また「アテネ」の記述は呪いをかけられ投棄される前に行方不明になってます。また、停戦はクーデターが起きた為破棄されました。紫苑様が何故か呪いによる記憶ロック解除のトリガーになったようでロックされていた記憶が復元されたようです』
なるほど、停戦のため軍縮をしようとしたのか。それと、アテネの行方不明は気になるな…
『行方不明になった原因は魔神が関与してる模様。また、呪いに関してはタッチドレインと私が隔離消滅を行えば彼らを戻すことが可能です』
できるのか?
『朝飯前です』
つまり、彼らを元に戻してやって私の元に付けさせば完璧な戦力がゲット出来るということか。
「まぁ、いい。私は脱がされても恥ずかしくもなんともない」
私は裸のままだが仁王立ちをする。''実際はすごく恥ずかしいが''ここまでの経緯を嘘も交えつつ言っていく。
「私には以前君たちと共に戦った記憶は残っていない。それでも私についてきてくれるか?」
団員の返事がアジト内に大きく響く。そして、口々に私に続くという言葉が並べられていく。
「では、君たちにかかった呪いを解いてあげよう」
私はワイヤーアンカーを射出し、壁に刺す。
「皆、このワイヤーに触れてくれ。私が一人一人手を握るには人数が多過ぎる」
団員達は少し困惑しながらも、私が射出したワイヤーを握っていく。
私は小さく息を吸う。
「呪いを奪え、接触奪取!」
『隔離消滅開始します』
アジトの中が光に包まれ、豚太とゴリラは大きく形が変わり、ハゼや猿猴は背丈はそのままで女性の形へと変わっていく。
光が収まるとそこには高さ2mを優に超えるであろう機械人形と1.5m程度の女性形の機械人形、最後に双子の少女型の機械人形が立っていた。
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アルベルトたちに連れられ王都に入るための4つの門のうちの南側からユリース王国の王都へと入り、王城へと向かう。周りの建物は明治から大正あたりの雰囲気を持つ建物が多く建っている。
ユリース王国は初代国王ユリ・ユリースがユリース王国周辺の豪族たちをまとめあげてユリース王国の建国を宣言。ちょうどその頃はエバン王国から分裂した侵略略奪を良しとする派閥がエバン王国から独立し、帝国の建国宣言をした頃である。エバン王国は圧倒的な帝国の軍事力により…もっとも帝国側にエバン王国の軍事力が流れたことが大きな原因でエバン王国は最盛期の半分以下の領土を保持するのがやっとの状態になっている。帝国だけならここまで領土を失うことはなかったが、大陸南東にイースト共和国連邦と呼ばれる国が突然発生し、これまた帝国とエバン王国のいぞこざのどさくさに紛れエバン王国の領土を侵略。
結果エバン王国は領土を分断され、現在は東エバン王国、南エバン王国として統治しているような状況である。
一方、帝国はエバン湖を経由して飛び地を行き来している。エバン湖の制湖権はエバン王国から帝国へと変わってしまっているため、中立国を含めた全ての国が交通としては使えなくなっている。
魔動車に揺られながら王城を見ると赤レンガで昔の東京駅のような形をしていた。
「マリンスノーと呼べばいいのか…?」
アルベルトが雪華に話しかける。
「え、えぇ、別にどっちでも…」
雪華としては呼ばれ慣れている「雪華」と呼ばれたいところが、ユリース王国の協力を得るためにはマリンスノーで行った方が無難な気がしている。
「おにいちゃん、今回は交渉だからその間はマリンスノーって呼んだ方がいいかも」
アルベルトはシャーロットの意見に賛成し、魔動車から降りて王城の中へと入る。王城の中は赤い絨毯が隙間なくひかれてあり、一定間隔で衛兵が立っている。
しばらく行くと2人の銃剣のようなものを持つ衛兵が扉を護るように立っているところについた。
「アルベルト・ミラーとその妹のシャーロット・ミラー、迷宮探査から帰還、また国王へお会いさせたい人物を連れて参った」
アルベルトが衛兵に告げるとゆっくりとドアが開く。玉座には初老の紳士の言葉が似合いそうな男が座っていた。
「無事の帰還、待っていたぞ。それとその女は?」
国王はアルベルト達から視線を雪華へと向ける。
「この者はマリンスノーです」
シャーロットが言った一言で王の間が一気にざわついた。
「静まれ、シャーロットが言うからには本当のことだろう」
王は目を細めて雪華を注視する。しばらくして、小さくため息をつく。
「マリンスノー、貴様は姿かたちはお前だが、中身が違うようだな」
1発で見抜かれてしまった。雪華は素直に話すべきと考え、そのまま話すことにした。
「確かに転生しました。容姿はマリンスノーに酷似していますが、人格は貴方たちが知るマリンスノーではありません。しかし、使用出来る魔法その他全ては…マリンスノーそのものです」
雪華は王の間に雪を降らし始める。
「神は何かをさせようとしてるようだ…ふふふ、これこそ神のみぞ知る…だ」
国王は何処か納得した様子だった。
「ウルヴァング国王、話の途中ですがマリンスノーの…」
シャーロットが話の本題を始めようとする。
「マリンスノーではなく本名でいい」
「はっ、沢山雪華の友人、アテネもとい明智紫苑が盗賊団に誘拐されました」
王の間が少しザワついた。この国で盗賊と言えば''あの盗賊団''しかないからである。
「また厄介な者にさらわれよったな…」
国王は腕を組みうんうんと考える。国王は何やら王の間のドアが激しくノックされ伝令が入ってくる。
「エバン湖から帝国の軍艦の接近を確認!同時に宣戦布告を受けました!」
5代目国王ウルヴァング・ユリースの設定
自身の魔力や戦闘力はないが優れた統率能力と知力を持っている
そんなに登場させる訳では無いのに名前までつけちゃってます((((