第2話 まずは連絡先…
こんばんわ、『一色 凛』です。私は今ベッドの上で、『どうやって連絡先を聞こうかな』と考えを巡らせています…
なぜって…個室の患者さんで容態が安定したら、だいたい7日後には4人部屋に移動となってしまうからです。
4人部屋の仕切りはカーテンだけなので、部屋での会話は皆さんに筒抜けです。そんな状況の中で『倉橋修一』さんに電話番号や勤め先の事を聞けば、
「凛ちゃん、何仕事しないで『いちゃいちゃ』してるんだい…」
と加藤のおばあちゃんや井原のおじいちゃんに、絶対にからかわれることは目に見えているからです…
勝負は4人部屋に移動となるまでの7日間…その間に『修一』さんから連絡先を聞き、できれば『キス』まで、持っていきたい!
男性が草食時代の現在、女性が『肉食』にならなければ!
『あっ…いけない、今週の金曜日は内科と外科に所属している看護師全員と事務職の方向けに「黄色ブドウ球菌の耐性について」発表しなかればいけないんだった…』と思い出し『サクサク』っとPowerPointで資料を作成しながら、『連絡先獲得計画』を考えました…
~~~ 翌日、倉橋の病室では ~~~
「しゅういーちさん!、お体の調子はいかがですか?」
「あっ…一色さん、大分良くなってきました…」
「何かあったら、ナースコールを押してくださいね…すぐ来ますから…」
「はい…ありがとうございます…」
「ところで倉橋さんは、どのようなお仕事をなされているんですか?」
「私は都内の女子大学で『江戸時代の人々の生活』についての講義を行っています…」
「倉橋さんは頭がいいんですね…大学で講義を行うなんて…」
「いいえ…とんでもない…私は常勤ではなくて非常勤の講師なので…」
「そうなんですか…」
「あの…もし、もし良かったらLINEかメール…電話番号でもいいんで教えていただけないかなぁ…だめですか?」
「…別に構いませんよ…ただ私はLINEを使っていないので、メールアドレストと電話番号になりますけど…あとスマホは『iPhone』なので赤外線通信ができないので…紙にかきますね…」
『ヨッシャー!順調に連絡先まで聞けました…あとは既成事実の「キス」を…』と考えていると、後輩の看護師が来て
「一色リーダー、すいません…鈴木さん逆血があるので末梢静脈留置針をやり直しているんですけど…うまくいかなくて…そのぉ、一色リーダーお願いします…」
「うん、わかったわ…遠藤さん!ナースステーションに行って新しい留置針と延長チューブ、あとテープと三方活栓を持ってきて遠藤さんの病室に向かって…すぐ行くから…」
「…ありがとうございます…」
「では、倉橋さん微熱があるので後でクーリング用の氷枕お持ちしますね…」
「あっ…一色さん、ありがとうございます…」
『恋に障害はつきもの、でも連絡先は聞けたし一つ前進!…それにしてもリーダーって日本語に訳すと「主任」でしょ…なのに主任は私の上長として別にいる?リーダーって何?』と思いながら私こと『一色凛』は遠藤さんの病室に向かうのでした…