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友達が最近おかしくなった理由  作者: ***
一章 中等部三年時代〜高等部前
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行列店と指輪 /前編

久しぶりの投稿です。

本年もよろしくお願いします。

 手早く貴族街に着いたので侍女と共に馬車を降りた。


 貴族街の町人は平民や名の知れた商人達が住んでいる。しかし、店の並びは貴族向き、街も荒れずに景気が良いため、貴族街といつしか呼ばれるようになったのだ。


「今日はいい風ですわね、少し寒いからひとまずカフェに入っていましょう」


 はい、お嬢様というように綺麗に辞儀をして私の身を侍女は守るように隣へ並んだ。


「もう…そんなに気にしないで?ここには警備員もいらっしゃりますわ」


 ただでさえ一日中働かさせている身なので、この時間は気を休めて欲しいと思っているのだ。

 私付きの侍女は三人程いる。リーダーはナタリー 一人だけだ。今、付いてくれてるのもナタリー。その分、気心が知れているため言葉が砕けてしまうこともあるのだが、ナタリーは私に滅多に心を開いてはくれない。


 主従関係に彼女は自分にも徹底している。


「お嬢様、街の角にケーキが美味しいカフェがあると馬車の従者に伺っております。どうなされますか」


 少しばかり顔を和らげているナタリーが私へ向かって尋ねた。

 私へは同意はしてくれるが否定はしない、彼女はそんな優秀な侍女だ。


 せっかくなのだ、ここは好きにさせてあげたい。


「ねぇ、ナタリーはそのカフェに行きたいの?」


「私はお嬢様のご意見を尊重しますので、どうかお気になされませんよう」


 ナタリーは顔を俯きながら一礼する。


「私はナタリーの意見が聞きたい。だから、尊重するならカフェに行くか言って欲しいわ、あら?冷たい」


「っ!!わ、私は…」


 優しくナタリーの手を取ると少しひんやりとしていて気持ちが良かった。


 ナタリーは赤いくせ毛を耳にかけると、ポツンと、意識していないと聞こえないぐらい小さな声で

「行きたいです」と呟いた。


 言葉はもぎ取った。後はカフェに行くだけだ。

 小走りでそそくさと街中を走る。


 すると長蛇の列が並んでいる店が見えてきた。

[最後尾]と書かれた看板を掲げる店員を呼びかける。


「ねぇ、こちらのお店はどんなお店なのかしら?」


 ナタリーの行きたいカフェを想像しながら、客で見えない店を背伸びして覗く。


「はい!当店は素敵なプレゼントを毎月貰える、会員限定の店です。よろしければ、用紙とペンを出しますが」


 ニコリと定員は商売話をぶつけてくる。


「素敵なプレゼント?それは何なのかしら?」


 探るような目線を送っても、定員はニコリとしているだけだ。


「会員登録時に他者に言わない契約がなされますので、皆さまには言えません」


 眉を下げていかにも困っている、という体を定員は見せた。


 しょうがないわ……会員になって怪しいなら父に報告しましょうか。


「わかりましたわ、会員になって是非とも素敵なプレゼントを貰いたいものです。ねぇ?ナタリーもそう思いますよね?」


「はい、私目もどんなものか存じあげたいです」


 ニコニコと定員の笑顔が深まって、紙とペンを用意される。紙は普通の紙だが、ペンは魔力を混ぜた高級インクが使われてる様だ。

 なぜ魔力が込められているかというと、商談の場合は莫大な金が動く場合もあるので、誓約を破ると商談相手に報告されたり、破った相手は魔力から来る苦しみを罰として受けるのだ。ちなみに魔力が無い異端な子と言われる人達は魔力が含まれるインクは使えない。

 自分の魔力も少量だが吸い取られて絡ませていくからだ。このインクは冷たいので水属性を含んでいると思われる。


 これほどの高級インクを使うなら、儲けも大きいのかしら?


 誓約書を手早く書き、怪しい店を後にして本来の目的であるカフェを探し歩く。


 そんなことは気付かずに、ナタリーを連れて目当てらしきカフェの店へと着いた。

こちらのカフェも行列が出来ている。


「ナタリー、ここは満員ですわ」


 困ったようなため息をつく。


「すみません、調べ不足でした…お嬢様のお手を煩わせる訳には行けません。この指輪を持ってどうぞお買い物へ行ってらっしゃいませ。私はここで並んでおります」


 ナタリーは指輪をどこから出したのか、私の手に乗せた。


「指輪なんてナタリーも持っていたのね、お父様の魔力がするわ」


 指輪をはめ込むと、少し抜けそうな程の大きさだった。


 貴族の娘に相応しく、色が白くシミひとつない自分の手にはめられた指輪を見つめる。指輪から見て感じる暖かな金色の光は、この国にあまりいない光属性の光だ。


 それは、父がこの指輪に何かを施した、ということに繋がる。


 元々、光属性はこの国の王族に連なる上位貴族しか持っておらず、光の更に上位属性の聖属性が、聖女の血を受け継ぐ者たちの一人だけが使えるとされている。

 聖女の役目は魔法を使う時にどうしても発生してしまう魔障という目には見えない負のエネルギーを浄化させる、というものだ。魔障の浄化魔法を聖女が使わないと、母なる自然が弱り、空気中の魔力のエネルギーが消滅されていく。(浄化魔法は魔障をあまり産み出さないらしい)

 魔力は今では人体構造の一部とされる程、影響が出やすい。魔力が枯渇しても、膨張しても人は死に落ちると言う。


 もちろん今でも聖女は厳かな神殿で役目を全うしている。御歳 百二十歳以上、見た目は聖属性を使える時から体の衰えや成長ごと止まるため、今の聖女は若い娘に見えるそうだ。

 しかし、聖女にも魔力の衰えが必ず起こり始めることなので、未だに見つからない聖属性の者を早めに見つけて行かねばならないのがこの国のひとつの課題だ。


 そして、父は光属性だ。光属性が主に使える魔法は聖女程では無いが、治癒魔法、浄化魔法、加護魔法だ。加護魔法は、聖女が大昔に居たとされる''勇者''という者にその者に危険が迫る時の為に加護を与えた名残だとされる。


 それで、だ。この指輪には加護魔法の内に入る上位魔法だ。技術だけでも並の魔術師では作り出せない魔法とみた。宝石に記された術式を読み取ると、なにか大きな衝撃が身につけている者に起こる時にその者に壁を作る効果が記されていた。


 父のことはまた後ほど。


 話を戻して、ナタリーはあのまま並んでしまった。

 これでは来た意味がないのだけど??少し失敗した。カフェなど辞めて、買い物をした方が良かったと反省する。


 しかし、侍女を彼女しか付かせてないので(影の者はいるだろうが)少し体が強張るのを感じながらの町巡りだ。


 ドカッ!


「ッ!い、たた…お嬢さんごめんなぁ怪我はしてないかい?」


 どうやら町人のおじさんにぶつかってしまったようだ。こちらも謝らないと。


 尻餅をついた私に優しく手を差し出してくれたおじさんは、柔らかな笑顔で私を見つめていた。


「おじさん、こちらこそごめんなさい。怪我はありませんわ、お気になさらずに」


 おじさんの手を取り立ち上がる。おじさんは「ならよかった」と言って去っていく。


私も行こうとすると、自分の手にはめた指輪が無かった。


「?!お父様の指輪がない?!」


私の悲鳴じみた声は人混みの中に薄れていった。



読んで頂きありがとうございます!

実はクリス王子の属性も光属性なんですよ。


さて、後編へ続きます。

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